コンソーシアム名 |
都市情報化と公共空間に関する研究プロジェクト |
研究メンバー |
三宅理一(リーダー)、大内 浩 山田雅夫 |
コンソーシアム研究概要 |
|
【 研究背景】情報技術がきわめて早いスピードで進化しつつある今日、都市の住まい手・利用者ともにもその有効な活用が求められ、また情報システム化を介した都市整備の必要が大きくなりつつあります。一方、GISやGPSなど情報技術の先端分野では、地理情報、位置情報を可視化する技術が進展し、都市政策立案のツールとして期待が寄せられています。 本コンソーシアムは、日本の都市が直面している空洞化やデジタル・デバイド問題といったネガティブな側面を踏まえつつ、地域の活性化、安全で安心なまちづくり、住民・行政・企業の相互コミュニケーションの促進といった都市政策の重要課題にこたえるため、都市情報化という観点から小田原駅周辺にて研究活動を行っています。 【 研究目的】1. 市街地の位置情報を活用した都市情報システムの開発市街地における人々の移動、回遊を通した活動を位置情報技術( GPS等)により可視化し、解析します。今までは定性的にしか記述できなかった行動実態が、空間的な広がりの中で、客観的な資料として提示でき、有益な都市戦略や具体的な事業ないし各種サービスに向けた方針を得るための貴重なデータとして期待できます。さらに、行政統計やGISによるマクロデータと位置情報による流動性データを複合させた都市情報のプラットフォームを構築し、その解析方法や応用を研究していきます。2. 都市情報システムによるコンテンツ提供サービスの事業化位置情報による流動性データの解析結果をふまえて、市街地における移動者(観光客および定住者)に対し、魅力的な回遊行動、消費行動をもたらすコンテンツ提供サービスを開発し、その事業化を目指します。 【 研究の成果】■本調査の期待される成果 GPS 携帯を利用した位置情報調査では、観光行動が点の情報ではなく、線の情報として得ることができます。また従来の調査では、観光ポイント、商店、行政といったサービス供給側から得られるデータが主でしたが、今回の調査では、サービス需要側からのデータが得られます。観光客の視点にたったきめの細かい観光政策を立案するための貴重な資料となります。具体的には、認知されている観光スポット、属性別の回遊ルート、行動パターンを実数で統計的に把握することができ、観光イベント戦略、店舗の立地絞り込み、街路環境の整備、サイン計画等を立案する際の新しいツールとなります |
|
■「都市情報提供サービス」のイメージ 本コンソーシアムでは、位置情報調査の次のステップとして、コンテンツ提供サービスの事業化を目指します。観光客に対して、位置情報調査の結果を踏まえて、最適な回遊コース、不定期な行事やイベントなどのリアルタイム情報、交通手段の時刻表などのデータを、情報携帯端末を介して提供していきます。さらに、従来の旅行ガイドに載らない潜在的な観光資源や、住民しか知り得ない日常的な情報、口コミ情報を地域に入り込んで収集・データベース化し、付加価値の高い「都市情報提供サービス」を構築していきます。 【 研究の展開】位置情報を活用した都市情報システムおよびコンテンツ提供サービスの成果は、以下の方向に展開していく予定です。 1 .地方自治体に対する都市情報提供サービスモデルの認知促進2 .地域内物流システムなどへの位置情報解析技術の応用3 .定住者に対する利便性の高い情報提供サービスの開発【 現 状】11 月段階で、本調査実施の最中である。プレ調査や本調査実施に際しての技術的な問題は既にクリアし、本調査に入っている。データの解析やデータ集計結果の発表には少し時間が必要であるが、既に実施した調査から得られたデータをもとに、典型的なビジター回遊の空間的な移動軌跡についての所見を以下に述べる。パネル展示に典型的な解析画像を掲載しているので、詳しくはそちらを御覧いただきたい。 「小田原市におけるビジターの市街地回遊軌跡動態」 回遊軌跡の集合体(ある程度の包括群を確定することによる)を、市街地のなかで空間的に表示することにより、ビジター回遊空間を表出することができる。また、サンプル数の有意水準にもよるが、年齢や指向の違いによる集合体のグループ分けも技術手法により可能である。また、はじめて時間別のビジター滞留状況をつかむことができる段階に入ってきている。現時点におけるビジター回遊の空間範囲を明らかにすることで、ビジターを対象とした都市経営についての新しい所見を、定量的な回遊データ( x,y,t)をもとに、提示できる道をひらくと考えられる。本研究において、小田原市におけるビジター回遊では、コアとなる小田原城と駅前商店街、海浜、起点となる小田原駅(JR新幹線、東海道線・小田急)との関係から、回遊のプロトタイプが抽出できる。現時点でいえることは、小田原城と駅前商店街を結ぶ回遊、いくつかの歴史的なスポットを結ぶ回遊、駅と海浜をむすぶ回遊、の3つが典型的回遊として挙げられる。また時間的にはショートステーが中心であることがあげられる。また、ビジターの広域的なエリア内の活発な行動を反映した回遊軌跡も顕著である。この範囲の中の充実をいかに図るべきか、同時にこの範囲の拡大を模索するために何をすべきか、といった都市政策への基礎資料として多いに活用されるものと考えられる。 |