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湘南音楽音響・ラボ (Shonan IRCAM)
Shonan Institute for the Computational Research of Acoustics and Music

本ラボは終了致しました。

2010年3月3日開設
代表者:環境情報学部教授 武藤佳恭
連絡先: 慶應義塾大学環境情報学部 武藤研究室
E-mail: takefuji[at]sfc.keio.ac.jp
印刷用ページ(2013年5月現在)

概要

1990年代中葉から急速に進んだネットワーク情報化は21世紀に入って二つの方向で異なる展開を見せる。ネットワーク回線の広帯域化(ブロードバンド化)と使用環境のユビキタス化である。
これらはおのおの独立して進展したが、ある時期以降これら双方に立脚する新たなシナジーが見られるようになった。2009年以降のtwitterの展開は典型的だろう。モバイル環境にあるデジタル・エージェントがテキスト情報のみならず静止画、音声動画まで、多様な情報をP2Pで送受信する新しい標準の時代を迎えようとしている。
だが他方、このような変化が、ユーザにどのような情報環境を提供しているのか、その総体を再検討する研究は、国内外を通してほとんど行われていない。
本ラボラトリでは、もっともデリケートで精妙な配慮を求められる音楽のハイエンドでの演奏環境を、シュレーダー=安藤=伊東の脳認知建築設計理論(SAI)にもとづいて解析し、実空間にアコースティックと電子音響の双方が混在する複合環境(Augmented Environment)における、新たな実効性ある時空間デザインモデルを提出、基礎理論としてのSAIの「実学化」を企図する。
また音楽音響に関するシュトックハウゼン=安藤=伊東モデル(SAI2)に基づいて具体的な作品演奏の実装実現と、再度のメディア情報発信を目的とするものである。またこの過程で得られる工学的新手法については、知財化など積極的なビジネス・アウトソースをも目指してゆきたい。

主な研究領域

  1. 歴史的、ならびに現行建築物の環境測定(音響・調光・空調)

    内外のコンサートホールやオペラハウス、キリスト教会、ユダヤ教会(シナゴーグ)、イスラーム教会(モスク)、仏教寺院など、歴史的ならびに現行建築物の音響特性を、安藤=伊東モデルに基づくインパルス応答測定で解析し、環境の非線形ダイナミクスを明らかにする。

    (主要なフィールド)
    国内:カトリック教会(とりわけ長崎地区:浦上天主堂、大浦天主堂、出津教会、紐差教会、黒崎教会、滑石教会ほか)
    仏教寺院(浄土宗:芝・増上寺、浄土真宗:東本願寺名古屋別院、ほか)
    その他:神戸モスク、新国立劇場、ほか
    海外:ベルリン・フィルハーモニーホール、ウィーン楽友協会、ミラノ・スカラ座、バイロイト祝祭劇場、アーヘン大聖堂、ノートルダム大聖堂、ライプチヒ・トマス教会、マンハイム宮廷劇場、ほか

  2. 歴史的、ならびに現行建築物での音声・音楽音響解析

    上記の各場所の低位置で、歴史的に唱えられ、歌われ、あるいは演奏されてきた音声・音楽音響のシュレーダー=安藤=伊東モデルによるバイノーラル非線形音響解析。

  3. それらに基づく環境認知の脳科学解析とモデル化、時空間デザイン

    「より明確に言語が聞き取れる音響コンフィギュレーション」「より強い没入感をもたらす仮想現実感環境」など、目的に応じたAugmented Temporal and Spatial Design
    またこれらの成果から「高齢者・難聴者により明確に音声言語が聞き取られやすい環境設計」など、狭義の音楽音響生成を超えたイノベーションのシーズ研究も並行して推進する。

  4. モデルに基づく実空間での音楽演奏・音響生成と評価

    複合環境での演奏等の実践を、モデルに基づいて行う。浄土真宗東本願寺名古屋東別院の環境測定に基づく「石山本願寺・蓮如能舞台復元法要」プロジェクトをはじめとする純和風の環境から、ベルリンから来日する音楽家たちによる、日本とドイツの双方で、異なる音響環境で同一の演奏を行った際の空間ダイナミクス応答の異同評価まで、異なるいくつかの系列でこれを行う。

  5. モデルに基づく新たな作品の創作、演奏、収録、ネットワーク再発信

    4は既存の楽曲や宗教行事を新しい環境で再現、評価したが、こうした時空間ダイナミクスを前提にまったく新たに価値ある作品を作り出し、演奏、収録、メディア発信などを系統だって行いたい。
     具体的には、作曲家・湯浅譲二氏に委嘱する、世阿弥「風姿花伝」などのテキストによる能楽+器楽+コンピュータのための新作(2010-)のワーク・イン・プログレスとしての創作を中心に、ラボラトリーメンバーである岩竹 徹、伊東 乾らの書き下ろしを含め、新たな情報環境と生体認知環境下での音楽の可能性を、ハイエンドの音楽作りとそのコンテンツ化、配信まで含めて包括的に推進する。この実施に当たっては寺院や音楽の専門大学など外部機関との有機的な連携も併せて進めて行きたい。

構成メンバーと役割

メンバー 所  属
武藤 佳恭 環境情報学部教授
- 研究統括。環境デザインとして音楽音響の基礎研究を進め、それらのイノベーション転用・実学化を推進する。
  岩竹 徹 環境情報学部教授
- コンピュータ音楽芸術監督。単に要素技術的な開発に留まらず、音楽的に求められる高い精度水準でプロジェクトを実装し、評価する。
  平高 史也 総合政策学部教授
- 西欧における音楽音声解析、とりわけドイツ教会・歌劇場等における音楽音声の動的解析とその評価。
  諏訪 正樹 環境情報学部教授
- 音楽音響の感性環境分析と巧緻性の解析とそれに基づく新たな多元的実環境デザインの評価。
  奥田 敦 総合政策学部教授
- 非西欧における音響音声解析、とりわけイスラーム寺院、モスクにおける音響音声とイスラーム法との動的関連の解析、評価。
  花田 光世 総合政策学部教授
- 動的な環境測定(音響・調光・空調)の解析とその社会環境評価、とりわけユビキタス情報環境下でのメディア被曝の実態把握とシステム化、リスク回避等の検討。
  大澤 具洋 SFC 研究所所員(訪問)、事務局長、東京大学伊東研究室研究員
- シュレーダー=安藤の建築環境評価理論に基づく 1)空間環境の物理測定と特性評価、2)発音・発声の物理測定とその評価、3)1,2の結果に基づく動学的脳認知評価と動学的な時空間設計モデルの開発。
  福田 貴成 環境情報学部講師(非常勤)
- シュレーダー=安藤の建築環境評価理論に基づく 1)空間環境の物理測定と特性評価、2)発音・発声の物理測定とその評価、3)1,2の結果に基づく動学的脳認知評価とその結果に対する自然言語処理技術を利用したオーディトリー・カルチャー評価。