2002年11月22日

センサによるスポーツ技能評価

 

 
 

 


                                                                      

 

研究プロジェクト名:スポーツ情報科学・スポーツ工学 

担当研究者:仰木 裕嗣(環境情報学部専任講師)                   

 

 

 

 


テキスト ボックス: キーワード: 加速度センサ、ジャイロセンサ、スポーツ技能、遠隔コーチング

 
Systems)

 

 

概要:センサの小型化は身体装着型のデバイスの開発を可能にした。上肢の動きがパフォーマンスに強く影響を及ぼすスポーツ種目、格闘技のパンチ、 野球の投球動作、水泳のストローク動作を対象にして加速度センサ、ジャイロセンサ を身体に装着し、得られるセンサ信号からパフォーマンスを評価する手法を開発し た。また水泳トレーニング用に特化した、3軸加速度センサ内蔵デバイス、3軸加速度 センサ+3軸ジャイロセンサ内蔵デバイスを開発した。これによりトレーニング中の泳 ぎの特徴をモニタリングすることに成功した。こうしたセンサデバイスによるスポーツ評価の今後の可能性について提案する。

 

スポーツトレーニングやコーチングに役立つ物作り


Q.どのようなプロジェクトですか?
A.センサによるスポーツ技能評価や、センサ情報とITによる遠隔コーチングの実現を目指して、時計型コーチング支援デバイスを研究開発しています。スポーツ分野では他に誰もやっていないので、面白いですよ。

Q.
それはどのようなものですか?
A.加速度センサを内蔵していて、装着者の動きや向きのデータを収集することができます。そしてそのデータからパフォーマンスを予測することができます。
例えば、格闘技のパンチ1つ取っても、素人とプロではその動きは全く違いますよね。加速度センサを使用してみると、やはりそれぞれの波形も全く違います。また格闘技のスタイルによっても波形は変わってきますから、パンチの波形データを見るだけで、その人がどのような種類の格闘技を使っているのか、そのパンチにはどれほどの破壊力があるのか、などがわかってきます。他人のデータと比較すれば直接やりあうことなく力比べをすることも可能です。また、上達具合・疲労具合を計ることもできます。

Q.
他のスポーツにも応用できそうですね。
A.もちろんです。現在は、私自身も経験のある水泳分野で実証実験を行なっています。
データを見ると、格闘技のスタイルによって波形が違うことと同様に、泳ぎの型によって波形は変わってきます。パンチ力が測れたことと同様に、ストロークに関する情報、例えばストローク数やストローク中の局面の推定などがわかるのです。
他にも腕の動きが重要なスポーツといえば野球があります。投球フォームを同じように測定すると、スピードガンがなくとも球速を測ることができるようになります。
また、小中学生のデータを分析することで個人の適性を判断するなど、金の卵の発掘にも貢献することもできます。


Q.
実験はどのように行なったのでしょうか?
A.センサを腕に装着させ、腕のかき動作の加速度データを収集しました。被験者が50mを8回泳ぐごとに採血し乳酸値を調べました。加速度波形の変化で、先に述べたように熟練度や疲労度を測ることができました。

Q.
腕に装着ということですが、センサ自体はどのくらいの大きさがあるのでしょうか。
A.もともとは、ペンギンやアザラシ等の行動を調査するために作られたセンサを人間に向けて改良したもので、小さい方が2000年度に開発したもので3軸加速度を測ることができます。大きい方には3軸ジャイロスコープを組み込んであり、動きの角速度(つまり腕の動きの、回転の速度ですね)をも測定することができるようになっています。
現在は、極小マイクロコンピュータやメモリを組み込んだ腕時計型を開発中です。

Q.
人間に向けて、というと、具体的にはどのような改良をされたのでしょうか?
A.ペンギンの泳ぎ方などに比べると人間の動きは細かいですから、測定する時間単位は小さくしなければなりません。例えばペンギンの場合は数分刻みで充分ですが、人間の場合は100分の1秒以下の精度で計測するといった具合です。
また、腕を水に入れる瞬間など、瞬間的にかかる大きな力にも対応しなければなりませんでした。
さらに、カメラなどのほかの機器と連動出来るようにも改良しています。カメラのみを用いてのデータ計測は時間もかかり、非常に効率が悪いものとなります。しかしこのセンサに加えてカメラを使用することで、データと実際の動きを照らし合わせ、より分かり易くデータを得ることができるようになりました。


Q.
熟練度を測るためには、継続してデータをためる必要がありそうですね。
A.そうですね。練習メニューや、センサを使用して得た身体的データを蓄積することで、非常に詳細な練習日誌を作ることができます。さらに集めたデータをさまざまなアルゴリズムで分析していけば、予想以上に色々なことがわかってきます。ですから私は「データを蓄積すること」にも非常に興味があります。

Q.
先のパンパシフィック水泳選手権大会にもその分野で活躍されたと伺いましたが。
A.以前はレース分析結果を紙で貼り出すなどしていたのですが、データをデータベースに蓄積することにより、パソコンから閲覧できる環境を実現しました。選手自身が、必要なときに必要なデータだけをすぐに閲覧することができるようになったのです。レース結果と言っても勝敗や順位だけではなく、ペースやフォームなど泳ぐことに関するさまざまなデータを蓄積させています。
また、必要なデータが公開されたときに、登録されている携帯電話に通知するといった付加機能も充実してきています。


Q.
離れた場所からも必要な情報を簡単に閲覧できるというのはインターネットの利点ですね。
A.それを応用することによって、遠隔コーチングが可能になります。自転車競技の世界では既に、自転車に組み込んだセンサで練習データを収集し、それを元にした遠隔コーチングが開始されています。水泳などの分野でも、実現させていきたいと思っています。

このプロジェクトに興味のある学生はもちろん、スポーツをもっと面白くしたい、スポーツが楽しくなるようなものを考えたいと思っている学生が居たら、是非一緒にプロジェクトを進めていきましょう。参加方法は色々な形がありますから、まずは一度見に来て欲しいと思います。

 

<本件に関するお問い合わせ先>

仰木 裕嗣 ohgi@sfc.keio.ac.jp

Tel:0466-49-3494