2003年度学術交流支援資金 報告書
インテンシブスペイン語T期、ベーシックスペイン語
I期・U期(2003年度秋学期開講科目)
2004年2月25日
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環境情報学部教授兼政策・メディア研究科委員 |
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山本純一 |
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総合政策学部訪問講師(招聘) |
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石川隆介 |
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環境情報学部非常勤講師 |
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寺田裕子 |
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総合研究大学院大学後期博士課程 |
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望月俊男 |
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慶應義塾大学大学院修士課程 |
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二木宏樹 |
1. 背景
スペイン語・スペイン語圏研究室では、授業と連携したデジタル教材の開発を積極的に進めてきた。その成果物として、ウェ
ブベースの文法学習教材である「宿題システム」(http://www.estudio.sfc.keio.ac.jp/tarea/)や、「超速習スペ
イン語一週間」(http://www.estudio.sfc.keio.ac.jp/sokushu/)などが挙げられる。デジタル教材を用意するこ
とで、学生の授業外でのスペイン語学習をサポートしていくことが期待される。当研究室では、継続的にこれらの教材の開発・運営を行ってきたが、2003年 度春学期に行ったウェブ調査や関係者への聞き取りから、以下のような課題が明らかとなった。
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「宿題システム」中の「文法ノート」が使いづらい
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「宿題システム」の問題の難易度や分量にばらつきがある
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授業外で何らかのフィードバックが欲しい
このように、「宿題システム」に関する意見・要望が多く、2003年度秋学期に向けて、これらの問題への解決策を考えることにした。本報告書では、これらの問題点に焦点を当てつつ、解決策とその成果について述べていく。
2. 宿題システムの改善
「宿題システム」は、全スペイン語コース(インテンシブ、ベーシック)を対象にした文法学習教材で、宿題としてカリキュ
ラムに含まれている。提出した宿題は成績に加算されるため、全履修者がシステムを利用することになる。2003年度春学期では、「宿題システム」を稼働さ
せているサーバーに障害がおき、運用に支障を来すこともあったが、翌秋学期には新サーバーを導入し、それ以後は正常に運用を続けている。
「宿題システム」の利用に関するウェブ調査を春学期に行った結果が図1と図2である。図2のドリルとは、「宿題システ
ム」の機能の一つで、苦手な問題を繰り返し練習することができる。この二つの図から、「宿題システム」は宿題提出のみならず、スペイン語学習における復習 や、テスト前対策などの用途でも利用されていることが分かる。
さらに2003年度春学期の「宿題システム」の利用状況を記録したログを解析したところ、「宿題システム」内の文法解説
書である、「文法ノート」を参照しながら学習を行っていることが分かった。ヒアリング調査等を進めた結果、「内容が不十分である」「目的の文法項目の解説 をすぐに見られない」などの不満があることが判明したため、内容の加筆訂正や目的の解説へのアクセスを容易にするための目次を用意することで、解決を図っ
た。
その一方で、「宿題システム」で出題される問題に関する意見も多数寄せられ、問題数が課によって差があるといったものや、難易度が全般的に高すぎるといったものがあった。これらの意見を元に、問題の見直しや各課の構成の変更を行い、課によるばらつきを無くすようにした。
問題や解説といった、コンテンツの改善を図る一方で、システム自体も併せて細かい改良を進めてきた。システムに関して
は、「回答欄でのオートコンプリート機能の無効化」「回答の表示方法の改善」「誤って宿題を提出してしまわないよう、確認メッセージを提出前に表示」な ど、履修者や教員からの意見を元に、より利用しやすいシステムを開発した。
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図1: 宿題システムの利用目的は? 有効回答者数:52人 (複数回答可) |
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図2: ドリルの利用頻度とは? 有効回答者数:52人 |
3. 授業外フィードバックの改善
2003年秋学期には「交換ノート」(http:
//www.estudio.sfc.keio.ac.jp/exnote/)という、授業外でのフィードバックの欠如問題を解決する、新しいシステムの
運用を「宿題システム」と併せて行った。これまで、履修者やTA/SAスタッフ(元履修者)から、授業外でも何らかのフィードバックが欲しいという意見が 多数あった。具体的には、スペイン語学習上で分からない箇所を誰かに聞いたり、他の履修者が「宿題システム」の問題でどのような間違いをしているのか知り
たい、といった学習において「他者」とのつながりが欲しいと感じる学習者が多いということである。
これまで履修者は、教員に分からないところを授業後に直接尋ねたり、メール上で質問をしていた。この方法では、履修者に
よって(教員に尋ねることに対して)抵抗や敷居を感じる者もいたり、何よりも教員側に負荷がかかってしまう。そこで、「交換ノート」では「友達」という、 新たな仕組みを導入することで、この問題を解決した。ここでいう「友達」とは、普段教室で共に授業を履修している、友達のことを指していて、教室内の人間
関係をそのままウェブ上に再現させた。履修者は自分の友達を「交換ノート」の「友達」としてお互いを登録することで、二人は「友達」となる。一方的な登録 は行えないようになっている。このような、親しい間柄の履修者を登録し、お互いの学習上の悩みや意見を交換できる環境を提供することで、学習者が感じる授
業外のフィードバックの欠如を解消させる。さらに、親しい間柄同士で疑問点やその回答を交換しあうことで、「質問しづらい」といった敷居の高さも合わせて 解消させることができる。
学習に関するやり取りを一層促進させるために、「交換ノート」では「宿題システム」と密接に連携して稼働させるようにし
た。その結果、「宿題システム」で分からない問題について、「友達」同士で相談しあったり、お互いの回答を見せ合い、間違った問題について話し合うことが できるようになっている。
「交換ノート」を実際に約2ヶ月間稼働させた結果、大多数の履修者が引き続き利用していきたい、という肯定的な意見が得
られた。同時に、事前に「交換ノート」に関する説明の不足から「(利用法などが)よく分からない」といった意見があったり、「お互いの回答や「宿題システ ム」の成績を見せ合うのに抵抗を感じる」といった意見が見られた。今後は「友達」同士でどのような情報を提示すべきかを考えたい。
4. 今後の予定
今回得られた知見を元に、今後は「交換ノート」と「宿題システム」の両システムを改善していきたい。特に「交換ノート」は短期間の稼働であったので、長期運用することで更なる知見を得たい。