研究背景と研究概要
近年、社会科学分野の研究では、フィールドワークという手法の重要性が高まっている。現場に赴き多 様な情報に触れることで、現場に即した問題意識と分析・実践の手法を構築することが可能になるためであり、とくに発展途上地域の生活の変化や環境問題に関 する研究においては、欠かせない手法であるといえる。SFCにおいても、大学院においてフィールドワークの単位を認定するなど、学生が現場に赴いて問題意 識を鍛え、分析を行うことを奨励してきた。
しかし、学生たちがフィールドワークを行う際には、従来から二つの障害がある。
そこで、本研究では、フィールドワークのためのトレーニング教材を、実際のフィールドワークに基づく素材から電子教材として作成することを目的とする。 「社会と表象理論」の講義の概念的・理論的枠組みをフィールドワークの実践を通して、一連の研究の流れを「デジタル・フィールドノーツ・パッケージ」とし て作成し、このパッケージ自体がフィールドワーク・トレーニングの教材として機能することが期待される。 当研究室では、過去数年に渡って、タイ、ベトナム、韓国など東南アジア諸地域でのフィールドワークを展開しており、パッケージを作成するに必要な素材量 が確保されている。素材のメディアは、映像、画像、音声、統計、文書資料の5つに分類され、これら素材の編集作業を通してパッケージを作成する。
本年度は、研究の第一段階として、タイ、ベトナムにおける実際のフィールドワークに即したデジタル・フィールドノーツ・パッケージを作成するため、以下のような環境整備を行った。
今後は、作成中のコンテンツをネットワークに乗せることが課題となる。データベースサーバと教材作成クライアントは イントラネットによるネットワーク化を行っているが、さらにインターネットに接続し、公開することによって、学習者がインターネットを通じてパッケージに アクセスできるようにしたい。これにより、学習者自身が現場から逐次教材へのリファレンスが可能になる。このアクセシビリティによって、デジタル・フィー ルドノーツ・パッケージの効果が最大限に発揮されるためである。