2002年度 学術交流支援資金報告書

電子教材作成支援

3−4  ネットワーク社会論

 

 

                           境情報学部

                             國領 二郎

 

 

1.概要

 

電子教材のデータベース構築を進めるにあたって、専門職養成教育を行う上で有効性が証明されている事例(一事象あたり30ページ程度のもの)討論を行うための教材を開発した。2003年度の授業でこれらの教材を使用し、授業内討論の材料とした。今後の課題として、このような事例を集めたデータベースを開発し、教材を有効に利用できるシステムを構築することを進めている。

 

 

2.ネットワーク社会論においての取り組み

 

ネットワーク社会論においては次の三つの事例を開発した。この事例のうち二つを授業教材として「ネットワーク社会論」において実際に使用し、討論の材料とした。今後さらに校正を加え、電子版として保存しデータベース化を行う。

 

(1)                          石井食品株式会社

食品のトレーサビリティーがテーマとなる。ミートボールなどで知られる中堅加工食品メーカーである石井食品は、自社商品のすべての材料やその入手先、生産元についての情報を開示している。パッケージに印字されている品質保証番号によってWebから誰でも情報を入手することができるシステムを構築している。情報開示することによって企業収益も高まるようなビジネスモデル開発について考える教材である。

 

(2)                          国立京都病院と伏見医療ネットワーク

電子カルテの共有による患者の利益拡大がテーマである。国立京都病院では、個人診療所との電子カルテ共有による診療連携のシステムを構築した。これによって患者はかかりつけ医で診療してもらいながら、高度な検査などは設備の整った国立病院で受け、さらにそのデータをもとにかかりつけ医で診断、治療をしてもらうなどのサービスを受けることが可能になる。患者の待ち時間の減少、丁寧な診察などの利点があるが、実用に向けてはプライバシー保持など解決するべき問題点も大きい。ネットワークを駆使した地域医療の今後のあり方を、考える教材である。

 

(3)                          SUICA

JRが導入したSUICAは鉄道運賃の支払いを簡略化したのみでなく、システムが導入された場所すべてをネットワークで繋いだことに大きな意味がある。このシステムが今後どのように有効利用されることができるのかを考える教材である。

 

 

3.今後の課題

 

今回、教材開発を行なったが、こうした教材を電子版として保存し事例データベースを作成することを今後の課題とする。電子版事例データベース作成のメリットは以下である。

(1)                          経済性

小規模出版となるため通常の紙媒体による配布では印刷コストが大きくなるものを電子化することによって、安価に配布できる。

(2)                          機動性

最新の事象を速やかに教室での討論用に供すことができる。技術の持つ、社会的、経済的意味などについて討論を行う上では、実社会の動きに密接に関係する教材を継続的かつ機動的に提供する必要があり、データベースによる配布がふさわしい。

(3)                          遠隔教育などでの活用可能性

遠隔教育システムによって他大学や外部関係者まで討論型授業に参加していただくことには大きなメリットがあるが、そのじょうな授業を実施するにあたっての教材配布手段として極めて有効である。

 

 

このプロジェクトでは、著作権を執筆者から買い上げている。現在、学校としての公開基準の提案書を作成中であり、これが整ったあかつきに非営利教育目的の使用に対しては無償で電子的に公開することとしたい。(営利的な教育機関に対しては有償での教材販売を行いうるような体裁で公開することを検討している。)システム的にはCNSネットワーク上に國領研究室責任のサイトを構築公開する方向で進めている。将来的に慶應義塾として組織的に管理を行う場合には提供することとする。