2004年度 学術交流支援資金による研究助成 報告書

環境情報学部 助教授 中村 修

高画質映像転送システムを用いた放送再配信実験

本研究では,インターネットを媒体とした放送コンテンツ再配信システムの構築, 及び実験を行った.来るべきインターネットを媒体とした一般への映像放送サービス の実現のための基盤技術の確立に向けて研究開発を行った.

 

ストリーミング再配信実験

既存のテレビ放送と同等の品質を扱うことのできる映像転送システムを実現 するにあたって,すでに開発が進められているDVTSを応用する. 通常テレビ放送では,受信機(テレビ)を用いて放送波を受信し,画面に 表示する.DVTSを用いた際配信においては,デジタル地上網で放送された コンテンツを再エンコーディングしネットワーク側に配信する必要がある.

コンテンツの再配信には3つのデザインがある.

図[1-3]にそれぞれの配信について図解する.

放送局から直にコンテントをネットワーク経由で配信
放送局から直にコンテントをネットワーク経由で配信

放送局からコンテンツを線迂回線経由で受信
放送局からコンテンツを線迂回線経由で受信

放送を受信機で受信し,それを再演コーティングし配信
放送を受信機で受信し,それを再エンコーティングし配信

図[1-3]に示されるような配信システムを実現にあたって,DVTSの改良 を行う必要がある.

 

計算機資源に応じた映像配信機構に関する研究

計算機資源に基づくALM(Application Layer Multicast) 映像配信機構の設計を行い, 映像配信におけるエンドユーザの取得機会の拡大と配信の効率化を実現するシステムを構築した.

本研究により, 配信元はネットワーク構成に依存する配信の効率化技術を利用せずに, 広域へのコンテンツ配信を行うことが可能になった. また, 配信元が要求するユーザ環境に満たないエンドユーザによるコンテンツの閲覧が可能になった.

 

DVTSの改良ならびにインターオペラビリティの確保

DVTSの改良を行い,特に接続信頼性を上げるための実証実験 として,インターオペラビリティワークショップを行い,接続性の 確認を行った.

DVTSインターオペラビリティ合宿が,去る7/21-23,慶應義塾大学湘南藤沢キャ ンパス セミナーゲストハウスにて開催された.第一回目となる本合宿では会 員42名の参加者があった.
近年,DVTSはあらゆるOS,ハードウェア上でデ ジタル映像の送受信を実現し,今後のさらなる広がりが予想される.本合宿で は相互接続性の確保,標準化のための指標を導きだすことを目的とし,開催さ れた.

会場の様子
図:インターオペラビリティテストの様子

 

高画質映像転送システムを用いた映画製作支援システムの開発

より高解像度な映像配信システムの開発,及び配信実験として, 高画質映像転送システムを用いた映画製作支援システムの開発を行った. インターネットを媒体とし、映画の製作現場を支える諸技術の研 究、および実験を行った。

ネットワークの帯域にあわせた再配信システムの構築と実験

ネットワークを用いたリアルタイム映像ストリーミングシステムに 特化した パケット伝送最適化機構の構築に取り組んだ.リアルタイム映像・音声配信シ ステムを対象としており,受信側の計 算機資源に応じた信頼性の高い高品質 映像・音声配信システムの構築を目的とする.送信側は受信側のフィードバッ ク情報を基にパケットのフロータイプを変化させる. End to End モデルを前 提としたネットワーク状況に対して効率的なパケット転送スケ ジューリング の構築を行った.

ネットワークの帯域変化がパケット到達ジッタに現れることに着目した.送 信側は受信側と協調し,受信側のパケット到達ジッタ,バッファリング状況に 応じてパケットの送出間隔を変化させる.フロータイプを変化させることで, 受信側のパケット到達ジッタをできるだけ抑え,バッファリング量を制御す る.受信側の計算 機資源の差異に関係することなく,リアルタイム映像配信 の信頼性を向上させることが可能となる.

定点映像配信実験

定点映像配信実験を行う上で,必要となる1394 TRADE ASSOCIATION 1394-based Digital Camera Specification Version1.20 に準拠IEEE1394に準 拠するIEEE1394カメラの対応を行った.

 

実証実験報告

本研究によって改良されたDVTSを用いた実証実験・発表・デモ・セッション を行った.

活動報告

2004年度の活動を以下に示す.

 

まとめと今後

インターネットを媒体とした放送コンテンツの再配信環境を構築する上で, 1)ネットワークインフラストラクチャのもつ問題点の解決,2)アプリケーション 環境の充実,3)標準化の3つが鍵となる.本研究では,特にネットワークを 利用した時により安定した映像・音声の配信をめざし開発研究を行ってきた. 多くの実証実験・デモを隔てて,より広域かつスケーラブルな映像配信 アプリケーションの開発を目指す.