2004年度 学術交流支援資金申請書 電子教材作成支援

3−5 インテンシブ中国語 報告書

 

 

研究課題:インテンシブ中国語 語法項目導入用DVD教材作成

研究経費:80万円

研究組織:研究代表 重松 淳(総合政策学部教授)

     研究協力者 飯田敦子(中国語非常勤講師)

           蘇  明(中国語非常勤講師)

           日比野友彦(環境情報学部3年)*

                            *申請時の原田均と交代

 

【教材作成の目的】

 

2003年度、SFC中国語ではDVD教材作成プロジェクトを立ち上げ、教室での利用ばかりでなく、学生がキャンパスでも家でも手軽に自習できるようにDVD教材開発を開始した。この教材のメインは、SFCインテンシブ中国語独自の教授法を支える、基礎文法項目100の導入用スキットを映像化したものである。それぞれのスキットには単語帳や練習問題がついており、教室用にも自習用にも用いることができる。近い将来、学生が自分のPCで手軽にDVDを再生するようになることを見越して、紙媒体を使わずPCのみで利用するマルチメディア教材を提供しようという趣旨である。

 

【概要】

 

 2003年度の1年間で、すでに

1.100の文法項目の選定

2.それぞれのスキット原稿の作成

3.それぞれの練習問題の作成

4.プログラムのプロトタイプ

5.豆知識項目の選定

が終了しており、2004年度は、スキット映像の撮影、単語帳・練習問題用音声の録音、プログラムの修正と完成が主な作業となった。

2003年当初、日常教室で利用しているSFCオリジナル映像教材をデジタル化することを考えたが、VHSの劣化がひどく、そのままデジタル化することができなかった。そこで2004年度の映像撮影は、質の高さを保つべくプロの映像撮影業者に依頼し、新たな撮影クルーを組んで1からの撮り直しとなった。出演者はSFCの留学生の他に、オーディションによって外部からの出演者も募り、合宿による撮影という本格的なものになった。

また、練習問題等に使用する音声は、やはりプロの録音技術者に依頼し、SFCメディアセンターの音響スタジオで録音した。ここでは、やはりSFCの留学生と教員が吹き込みを行なった。プログラミングもSFCの学生が担当している。

当教材は、2005年5月には東方書店から一般向けとしても出版する予定である。

 

【教材のコンテンツ】

 

1、教材の構成

基礎文法項目導入用スキット100

 想定した学習者のレベルは、広く初級から中級の入り口程度までで、1から100に至る順序において始めから大体3分の1程度のところまでは、易から難へという順序を踏み、新出単語に関しては累加式になっている。しかし、それを過ぎてからは、文法事項提出はレベルの差を考慮しない(易しいものが先に出てくるとは限らない)順序とした。従って残り3分の2のスキットについては、学習者にとっての新出単語が出た場合、単語辞書で検索するようにしてある。

この教材は、基本文法項目を導入するために、その項目が使われる状況をスキットで表現し、理解を助けようとするものである。100項目にわたるスキットはそれぞれ独立しており、どこから始めても問題はないが、登場人物、場面などに関連性をもたせ、興味を惹き付けるようにある程度の結束性を持たせた順序になっている。

スキットの撮影

これらのスキットは、まず「見る」ということに意味があり、場面理解と会話内容の理解が学習者の課題となる。それが理解できれば、まず初期の目的は達せられる。1スキット1文法事項が基本であり、多くて4往復程度のダイアローグが寸劇の形で表現される。

極力自然な映像となるように、ほとんどをロケ(SFC校内)で撮影し、音声もそのまま採録して吹き替えは行わなかった。所謂ティーチャートークになるのを避け、ごく自然な発話に近づけるように配慮したわけである。この撮影には、リハーサルや準備期間も含め、ほぼ半月の時間を要した。

 

練習問題

100のスキットには、それぞれ3種類の練習問題をつけた。

1、        スキットチェック:スキットの内容理解を確認するための練習問題で、スキット映像からのカットを静止画として用い、理解を確かめるための選択肢式の問題がついている。問題はすべて音声による出題であるが、文字による確認も可能である。

2、        文法チェック:導入された文法項目の理解を確認するための練習問題で、簡単なイラストを見ながら、当該文法項目を理解していれば答えられる選択式の問題に答える形になっている。ここでもメインは音声による出題で、文字による確認が可能である。

3、        ステップアップ:当該文法項目を用いた、2〜4往復程度の会話が流れ、それについての問題を聞いて選択肢で答える方式になっている。新しい単語も多く出てくるので、ヒアリング問題としても利用できる。

 

単語検索機能

上記のスキットおよび1〜3の練習問題に出る重要単語のリストを作成して、どこからでも検索できるシステムを作成した。100のスキットおよび練習問題所出の単語は、多くの課(導入1項目を1課とする)や練習問題セクションで重複しているが、100項目の初めの3分の1を除いて、難易レベルを度外視して単語を提出しているので、検索は課ごとにできるようにした。

単語は、音声、簡体字、ピンイン、所出箇所での意味が検索できる。但し、容量を軽くするために音声の質は並に抑え、単語数もかなり絞っている。しかし、教室用のテキストではあまり出てこないが中国の一般の生活において頻出する単語は極力含めた。

 

中国豆知識の検索機能

特に中級に属するステップアップ問題には、中国独特の場面や言い回しが多く含まれており、一般的な中国語テキストには見られないほど中国文化に密着した内容が多い。しかしそれでもまだ十分とは言えない中国文化知識を学べるように、中国では一般常識となっている事柄や年中行事などを短くまとめて、豆知識検索機能をつけた。この豆知識は文字のみのデータが検索できるが、初級者にも配慮して訳文も載せてある。

 

2.今後の展望

プログラムの見直し

 2003年度に作成したプロトタイプは非常に有用なものであったが、その後の映像・音声収録、練習問題作成を経て、見直しが必要になった。またコンテンツの量がかなり膨れ上がったため、現在これを1枚のDVDに収めるか、また分割するかを検討中である。

 

今後の展望

 本教材は、早ければ4月中旬の出版を目指している。この出版によって、学生が個別に使用する場合は問題なくなるが、教室での使用では、SFCにはまだDVD再生機標準装備の教室が少ないため、教員自身がPCを教室に持っていくことになる。またディスプレイはほとんどの教室で30インチ程度のTVモニターしかないことから、VHSに比べて映像が格段に鮮明になったにもかかわらず、見にくさは変わらない。従って教室での使用にはまだ不便さが残る。今後はこのDVDの活用を学生に求めると同時に、教室作業の利便性を追求していくことが課題になる。

以上