2004年度 学術交流支援資金報告書

電子教材作成支援

3‐6 ネットワーク情報産業論

 

 

                            環境情報学部

                             國領 二郎

 

1.概要

 

昨年度より継続して、電子教材のデータベース構築を進めている。専門職養成教育を行う上で有効性が証明されている事例(一事象あたり30ページ程度のもの)討論を行うための教材を開発した。2004年度の授業でもこれらの教材を使用し、授業内討論の材料としている。

 

同時にこのような事例を集めたデータベースを開発し、教材を有効に利用できるシステムを構築した。現在クリエイティブコモンズライセンスによる電子教材の配布を開始している。サイトアドレスは以下である。

   http://case.sfc.keio.ac.jp/

 

2.ネットワーク情報産業論においての教材開発取り組み

 

本年度は本資金を活用して、新たに次の3つの事例をネットワーク情報産業論用に開発した。この事例を授業教材として「ネットワーク情報産業論」において実際に使用し、討論の材料とした。同時に、電子版として保存し、國領研究室ケースとしてデータベース化し、取材先の許諾が得られ次第、公開する予定である。

 

(1)    (株)キューピー」

 

情報技術を活用して、工場内物流の個別管理を徹底し、品質管理とトレーサビリティを実現しているキューピーの事例。

 

(2)    「長崎県の小分け発注方式」

自治体の情報化の分野では有名な長崎方式を紹介し、その妥当性について議論を行う教材。小分け発注、オープンソースなど、ソフトウエア産業における重要なテーマについても議論ができるようになっている。

 

(3)    「インテック」

地域における計算センターを維持するビジネスから、IP時代の技術先導企業への脱皮をはかるインテック社の事例。地域企業(富山)としてのアイデンティティについても議論できる内容となっている。

 

3. 電子教材のデータベース化およびクリエイティブコモンズライセンス よる電子教材の配布

 

ケース教材を電子版として保存し事例データベースを作成した。 教材用事例の電子版データベース作成のメリットは以下である。

 

(1)    経済性

小規模出版となるため通常の紙媒体による配布では印刷コストが大きくなるものを電子化することによって、安価に配布できる。

(2)    機動性

最新の事象を速やかに教室での討論用に供すことができる。技術の持つ、社会的、経済的意味などについて討論を行う上では、実社会の動きに密接に関係する教材を継続的かつ機動的に提供する必要があり、データベースによる配布がふさわしい。

(3)    遠隔教育などでの活用可能性

遠隔教育システムによって他大学や外部関係者まで討論型授業に参加していただくことには大きなメリットがあるが、そのじような授業を実施するにあたっての教材配布手段として極めて有効である。

 

このプロジェクトでは、著作権を執筆者から買い上げているが、非営利育目的の使用に対しては無償で電子的に公開することとした。営利的な教育機関に対しては有償での教材販売を行いうるような体裁で公開している。公開にあたっては、可能な限り自由な利用、流通を目的とし、教材に添付されたクリエイティブコモンズライセンスの下に公開されている。システム的にはCNSネットワーク上に國領研究室責任のサイトを構築公開している。

 

 このライセンス下で公開されたケース教材は、営利企業内での教育研修や、非営利組織での有料研修など、お金が発生するアクション以外においては、非営利利用でのルールを守る限り、自由に本作品を複製、頒布、展示、実演することができる。また営利的利用の場合も、利用にあたっては、教材のダウンロードから印刷、利用方法等全て利用団体に任される。利用方法、及び利用部数を自発的に申告してもらうことで、物理的交換に束縛されることなく、自由な流通、利用を促進することが可能となる。
 

 この取り組みは電子教材の配布のあり方の社会実験でもあり、どのような利用がなされるかデータを取り、報告を行っていく計画である。