2004年度 学術交流支援資金報告書

電子教材作成支援

3−8  ネットワーク社会論

                           環境情報学部

                             國領 二郎

1.            概要

 

昨年度より継続して、電子教材のデータベース構築を進めている。専門職養成教育を行う上で有効性が証明されている事例(一事象あたり30ページ程度のもの)討論を行うための教材を開発した。2004年度の授業でもこれらの教材を使用し、授業内討論の材料としている。

 

同時にこのような事例を集めたデータベースを開発し、教材を有効に利用できるシステムを構築した。現在クリエイティブコモンズライセンスによる電子教材の配布を開始している。サイトアドレスは以下である。

   http://case.sfc.keio.ac.jp/

 

2.ネットワーク情報産業論においての取り組み

 

ネットワーク情報産業論においては次の3つの事例を開発した。この事例を授業教材として「ネットワーク情報産業論」において実際に使用し、討論の材料とした。同時に、電子版として保存し、國領研究室ケースとしてデータベース化し、公開している。

 

(1)    「過疎地にブロードバンドを」

 「デジタル・デバイド」と呼ばれる都市部と過疎地域との間の情報格差が問題視されるなか、宮城県木城町では2004年4月、町役場と通信事業者の連携により、光ファイバーによる木城町インターネットサービスが開始された。しかし、維持するためには乗り越えなければならない困難も多い。守るべきユニバーサルサービスとは何か、どのようにして守るのかを考えるケース。

 

(2)    「鹿児島建築市場」

地域社会に存在する信頼関係をベースに体質の古い住宅建設業界において情報開示−取引の透明性−を実現し、地域の活性化と経営の強化をおこなった事例の紹介である。

 

(3)     (株)いろどり

 徳島県勝浦郡上勝町は、野山の花や枝葉を、料亭で料理に添えて季節感を演出する「ツマモノ」として商品化する、「いろどり事業」で有名である。 収入と社会に参加する喜びを取り戻した高齢者は、頭と情報を使いこなすようになり地域全体にも活気を与えている。地域活性化の方法について考えるケース。

 

3. 電子教材のデータベース化およびクリエイティブコモンズライセンス よる電子教材の配布

 

ケース教材を電子版として保存し事例データベースを作成した。 教材用事例の電子版データベース作成のメリットは以下である。

 

(1)    経済性

小規模出版となるため通常の紙媒体による配布では印刷コストが大きくなるものを電子化することによって、安価に配布できる。

(2)    機動性

最新の事象を速やかに教室での討論用に供すことができる。技術の持つ、社会的、経済的意味などについて討論を行う上では、実社会の動きに密接に関係する教材を継続的かつ機動的に提供する必要があり、データベースによる配布がふさわしい。

(3)    遠隔教育などでの活用可能性

遠隔教育システムによって他大学や外部関係者まで討論型授業に参加していただくことには大きなメリットがあるが、そのじような授業を実施するにあたっての教材配布手段として極めて有効である。

 

このプロジェクトでは、著作権を執筆者から買い上げているが、非営利育目的の使用に対しては無償で電子的に公開することとした。営利的な教育機関に対しては有償での教材販売を行いうるような体裁で公開している。公開にあたっては、可能な限り自由な利用、流通を目的とし、教材に添付されたクリエイティブコモンズライセンスの下に公開されている。システム的にはCNSネットワーク上に國領研究室責任のサイトを構築公開している。

 このライセンス下で公開されたケース教材は、営利企業内での教育研修や、非営利組織での有料研修など、お金が発生するアクション以外においては、非営利利用でのルールを守る限り、自由に本作品を複製、頒布、展示、実演することができる。また営利的利用の場合も、利用にあたっては、教材のダウンロードから印刷、利用方法等全て利用団体に任される。利用方法、及び利用部数を自発的に申告してもらうことで、物理的交換に束縛されることなく、自由な流通、利用を促進することが可能となる。

 この取り組みは電子教材の配布のあり方の社会実験でもあり、どのような利用がなされるかデータを取り、報告を行っていく計画である。