ドイツ語教材開発研究プロジェクト

ドイツ語作文教材「サッと独作!」の開発・実用化・評価に関する研究

 

1.       研究組織     

 

平高史也(総合政策学部教授)

太田達也(総合政策学部専任講師)

石司えり(政策・メディア研究科2年)

加藤周作(政策・メディア研究科1年)

 

2. 研究の背景

 

ドイツ語研究室では、政策・メディア研究科の修了生である西村則久氏(安田女子大学)が在学中から開発し、その後改善を重ねておられる「サッと英作」をモデルにしたドイツ語作文演習用自動教材の開発を進めてきた。この自動学習教材を教室で使用している教科書『Modelle 1』と並行して使用し、インテンシブおよびベーシックコースのドイツ語受講者の評価をもとに改善を進め、来年度からの一般公開を目指して研究を進めている。

 

3.SFCドイツ語の授業サイクルとの関連

 

私たちが考えるWeb学習は作文の自動採点である。SFCのドイツ語インテンシブコース(4)は下のようなサイクルで、週1課ずつ進む(1期で計12課)。

[1]                                     [2]                   [3]       [4]                [5]

キーセンテンス・文法(文型練習)→ビデオ(スケッチ)→基礎練習→応用練習(ネイティブ)→10分間テスト

 

[1]その課で習うキーセンテンス、表現・文法を学習

[2]実際のドイツ語使用場面をビデオスケッチで学習

[3]キーセンテンスを用いた表現の基礎練習

[4]学生同士のパートナー学習、より高度な表現の応用練習

[5]毎週の10分間テストでその課の学習事項をチェック

 

SFCのドイツ語教育はコミュニカティブ・アプローチに基づいているため、授業中の発話を重視している。ドイツ語をどのように使い、どのように役立てればよいかという高い言語運用能力を育成することが目的とされているのである。そのため、授業もコミュニケーションを中心にした相互学習が基本となる。しかし、文法や単語については週1回「10分間テスト」で文型確認とリスニングの試験は行っているものの、普段の授業で文法的事項に関する復習に多大な時間を割くことは難しいのが現状である。コミュニカティブ・アプローチの盲点とも言われている形式面の指導も必要と考えた私たちは、IT教材でその部分を補うことができるのではないかと考え、「サッと独作!」をはじめとしたIT教材を開発している。「サッと独作!」は、SFCで使用している教材”Modelle 1”の文型(Schlüsselsätze)をもとにして、ドイツ語作文の問題を扱っている。「サッと独作!」の特徴はBUD言語と呼ばれるプログラムにある。このシステムは自動添削を可能にし、「先生」や「チューター」がいなくても、学習者は自分自身でドイツ語作文を作って採点してもらうことができる。また、質問がある場合には作成者にメールを送ることもできるので、先生やTATeaching Assistant,チューター)の範疇にありながら学習できる環境が整っている。

 

4.「サッと独作!」

 

この教材は、WEB上でドイツ語の作文練習を行うと自動的に添削される仕組みになっている。

 

学習者は自分のレベルのクラスを選んでログインする。

 

◆ログインページには、ドイツ語の特殊文字の入力方法や解答時の注意事項が記されている。

 

 

◆ログイン後、勉強したい範囲をコンテンツから選び、問題画面に進む

 

 

 
                                  

 

 

 

 

 

 

 

実 行 画 面

 

 
 

 


                                                                                                                          

線吹き出し 2 (枠付き): ここに問題文(和文)が表示される。
線吹き出し 2 (枠付き): 文を入力して「添削」ボタンをクリックすると自動的に添削される。
線吹き出し 2 (枠付き): ドイツ語特殊文字の記入方法を表示。
線吹き出し 2 (枠付き): 得点や累積点数、チャレンジした問題数が表示される。
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


5.「サッと独作!」についての評価−アンケート調査の結果から−

 

 私たちは2004年春からインテンシブドイツ語一期を受講する学生に対し、「サッと独作」の試験的利用を行った。学期始めの授業時やメールによる「サッと独作」の利用促進を図った後、学期末に受講者42名に対し「サッと独作」についてのアンケート調査を実施した(2004年7月6日)。以下はそのアンケート集計結果の一部である。

Q2: あなたは週に何日インターネットを使用しますか(有効回答数42)  

 

80%以上の人が週6日以上インターネットを使用しているという結果になった。SFC生が一般的に携帯電話や携帯メールよりも、e-mailやチャットを利用してコミュニケーションをしているという特徴が顕著に現れているとも考えられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

Q4:「サッと独作!」を1回あたりどのくらいの時間利用しますか 

 

使用時間

人数

パーセント

使用していない

6

18.2

0分〜15分未満

4

12.1

15分〜30分未満

7

21.2

30分〜45分未満

14

42.4

45分〜1時間未満

0

0

1時間以上

7

21.2

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Q6: 「サッと独作!」をどの程度利用しましたか

 

頻度

人数

パーセント

まったく利用していない

7

16.7

5回未満

18

42.9

5〜9回

10

23.9

10〜14回

3

7.1

15回

1

2.4

無回答

3

7.1

 

Q.4では回答爛に無記入の人をすべて「使用していない」というカテゴリーに入れて換算してい。「使用していない」という人が10人いたという結果は残念だが、平均して30分前後使用している人が多いという結果になった。次に設けたQ.5(表は省略)では1回あたりにどれくらいの問題数をこなすか」という質問に対して、1課分全部」と応えた人が40%と多数であったという結果から、1課をこなすのに平均30分くらい時間をかけていると推測できる

Q.6では使用回数が10回未満という答えが多数を占めた。特に5回に満たない人が多いのは、試しに使用してみた人や、飽きてしまった人、どこかで使用する必要性を感じなくなったから、などの理由が考えられる。また、次に設けたQ.7(表は省略)「何のために『サッと独作!』を利用しましたか」の回答としては、「10分間テスト対策のため」という理由が圧倒的に多数を占め。これは、「サッと独作!」の宣伝時に「授業の前に行われる10分間テストの対策に役に立つ」と銘打っていた結果であると考えられ

また、「サッと独作!」のIT教材としての側面から次の質問を盛り込んだ。

 

Q9: IT(情報関連技術)を使用した学習についてどう思いますか。   

 

. 強くそう思う     2. ややそう思う    3. どちらともいえない

. あまりそう思わない  5. 全くそう思わない

 

 

 

 

 

 

 

 

「便利だが、キーボードで打つより手で書いた方が習得が速いと思う」という意見や、「目が疲れるので出来るだけ使用しない」などといった個人の趣味や志向による差が生じるのは事実だが、以上の結果を見ると、ITを使用した学習に対して多数の学生が「楽しい・好き」という感情を抱いていることがわかる。ITを使用した教材は学習者にとって新しい選択肢の一つとなることは確実である。

 

Q27: その他「サッと独作!」について思うことがあれば、自由に書いてください。

【「サッと独作!」技術に関して】

Web教材としてではなくダウンロードして使用出来るなど、スタンドアローン時に使用出来るようにしてほしい。

【「サッと独作!」内容に関して】

     得点表や、「サッと独作!」使用者順位表などを作ってほしい。

     ヒントをもっと出してほしい。

     現在学習している課以外の復習にも使えるから便利である。

 

アンケートの結果から

以上のアンケート結果から、現在までに「サッと独作!」の以下の点を改良・補足した。

1.  表示される文字の大きさを大きくした。

2.  各課の問題数を揃えた。

3.  ウムラウト(Ä Ö Ü)、エスツェット(ß)の入力方法が常に画面上に表示されるようにした。

4.  ギブアップボタンを作った。

5.  全く使用しなかったという人も多数いたので、今後はアナウンスを十分に行う。

 

6.成果発表

 

2004年11月23日24日SFC-Open Research Forum

DMNET「自律学習とIT教材−ドイツ語教材開発研究プロジェクト」

2005年1月21日ドイツ語教育研究会第96回例

        加藤周作・石司えり

「ドイツ語自律学習教材『サッと独作!』−作成とパイロット調査について−」

       於東京ドイツ文化センター

 

7.今後の課題

 

今回のアンケートからさまざまな課題点を発見し、改善に向けて作業を進めてきた。自動添削の回数やギブアップボタン、また問題の量の調節などについてはほぼ作業は完了しているが、モチベーションを高める工夫などの課題点、その他の問題点については今後も検討していく必要性がある。

また、ITを用いた自律教材に関しては、個々の学習スタイルに合う教材を数多く提供する必要があること、またそれぞれの教材についてメタデータ(どのような教材か、どのような問題を扱っているか、どのような効果が望めるか、など)を付加し、そのメタデータを集約させたWEBページやシステムを考案していくことが求められているとも考えている。

また、2005年度春学期からの一般公開を目指して準備中である。