安否確認の視点から見た大都市インナーエリアにおける対人関係構築のあり方
についての研究
研究代表者:総合政策学部 教授 梶秀樹
(研究分担者:大槻知史 石橋健一)
申請研究は、大都市インナーエリアの地域防災力を向上させる上での重要な要件である、地域住民同士の安否確認活動の強化を図るための基礎的研究として、「マンション居住者」と「従前居住者」の分断を解消し、地域に居住する住民の全てが安否確認に必要な「居住・生活情報を共有しあう関係」を獲得するための方法論を検討するものであった。
そのために、大規模地震の発生が高まっている京都市調査対象地とし、定量調査・ヒアリングを行った。
具体的には、まず京都市本能元学区を調査対象地として、「居住・生活情報を共有しあう関係」の形成要因を明らかにした。回収状況は285/1200(回収率23.8%)であった。
結果、「従前居住者モデル」では、@「将来の居住予定(生涯居住する予定)」A町内会の「親睦活動」への参加、B「職業(自営業あるいは無職であること)」C「移住状況」D「配偶者と同居していること」E「小学生の子と同居していること」が「居住・生活情報を共有しあう関係」獲得を規定する要因となっていた。一方「マンション居住者モデル」では、@「町内会の親睦活動への参加」A「職業(会社員・公務員以外であること)」B「小学生の子と同居していること」が「居住・生活情報を共有しあう関係」獲得を規定する要因となっていた。
また、「マンション居住者」の会社員群、「従前居住者」の会社員・パート群の2類型について、災害時の安否確認において高リスク群であることが明らかとなった。
さらに「従前居住者」「マンション居住者」の双方を巻き込こんだ、安否確認をも可能な「居住・生活情報を共有しあう関係」を構築するためには、小学生などの子どもやその親の交流が可能な親睦活動を核とした上で、子育て支援及び、あるいはその周辺領域である防犯・防災などの生活環境維持活動を通じた世代間交流の多様な機会を提供することにより、「従前居住者」「マンション居住者」双方にとって関係構築のインセンティブを与えることが明らかとなった。
(「地域安全学会」、「次世代学術研究」に投稿済)
上記知見を踏まえて、「ファミリー世代の従前居住者(20-40代)」「ファミリーマンション居住者」を防災コミュニティ再構築の潜在的な担い手と位置づけ、彼らが参加しやすい地域活動を設計するための具体的なノウハウに繋がる知見獲得を目指した。
具体的には歴史的市街地である京都市有隣元学区において、2006年1月にファミリーマンション居住者、従前居住者を対象に、@地域活動、地域イベントへの参加状況、A地域活動、地域イベントへの参加要因・不参加要因、B地域防災・防犯に対する認識が地域活動、地域イベントへの参加行動に与える影響の3点について定量調査を実施した。
本調査の結果は、来年度4月に論文として日本地域学会、計画行政学会に投稿予定である。