2006年度学術交流支援資金による研究助成成果報告書
「超地域・超領域のガバナンス・プロジェクト(Project No.1-20)」
2007年2月28日
研究代表者:香川敏幸(慶應義塾大学総合政策学部教授)

目次

I.活動目的・メンバー
I-1. 活動目的
I-2.メンバー

II.活動内容・成果
II-1.サラエヴォでのフィールドワーク
II-2.計画行政学会
II-3.海外メンバーの招聘

III .今後の展望と課題



I.活動目的・メンバー
I-1. 活動目的

 
  冷戦崩壊後の国際社会における、EUおよびその周辺諸国における社会、政策、制度の変容過程を明らかにすることを目的とし、中東欧大学間連携機構(CEEUN)との国際共同研究を実施する。また、香川研究室(超地域・超領域のガバナンス・プロジェクト)がCEEUNに参加するとともに、これまで構築してきた共同研究ネットワークをCEEUNと結びつけることも目的としている。具体的には、EUの制度・規範・政策の普及・移転過程を、教育、環境問題、安全保障など多様な課題について日本(超地域・超領域のガバナンスプロジェクトメンバー)と欧州の研究者、総勢12名が研究交流を行うものである。

I-2.メンバー

香川敏幸

慶應義塾大学総合政策学部・教授

ジョルジオ・ドミネーゼ
ウディネ大学・教授(イタリア)兼CEEUNコーディネーター
カジミエッシュ・グルカ
クラコフ経済大学・教授(ポーランド)
アレクサンドル・ロガチ
キエフ国立タラス・シェフチェンコ名称大学・教授(ウクライナ)
フランツ・ロタール=アルトマン
ドイツ国際安全保障研究所バルカン部門・部長
モニカ・グラボフスカ
ヴロツラフ経済大学・講師(ポーランド)
武井秀樹
シティ大学CABS所長(スロバキア)
市川顕
SFC研究所・上席所員(訪問)
稲垣文昭
SFC研究所・上席所員(訪問)
伊藤裕一
政策メディア研究科後期博士課程
中林啓修
政策メディア研究科後期博士課程
中村健史
政策メディア研究科後期博士課程

II.活動内容・成果


II‐1.サラエヴォでのフィールドワーク

期間:2006年6月4日〜6月12日
実施者:フランツ・ロタール=アルトマン、稲垣文昭、中村健史
1993年から1995年にかけて内戦状態に陥ったボスニア=ヘルツェゴビナにおける国際社会の関与の実態についての調査。



II-2. 日本計画行政学会第29回全国大会


日時:2006年9月15日・16日
会場:大阪大学コンベンションセンター

 当学会において、本研究構成員から4名(香川、稲垣、市川、伊藤)は、本研究プロジェクトでの途中成果報告を行った。
香川と伊藤は、「欧州における大学・研究者間連携ネットワークの現状と課題」と題し、EUにおけるエラスムス計画や本研究プロジェクトの重要なパートナーである中央等大学間連携機構の現状についての報告がなされた。特に、欧州においては、中東欧はもちろんトルコをも巻き込む形で動的な大学間の連携が形成されつつあることを明らかにした。

 稲垣と市川は、「ユーラシアにおける環境ネットワークとしてのEfEプロセスに関する一考察」と「環境安全保障政策の普及と受容−欧州からタジキスタンへの普及を事例に−」と二つの報告を行った。この二つの報告は環境政策を巡るネットワークが欧州で形成されるとともに、周辺諸国に伝播していく様態を説明するとともに、ユーラシアの中心部である中央アジア諸国においての環境政策の国際的規範の受容の可能性があるものの効果的な政策・地域協力の難しさを明らかにした。


II-3.CEEUNとの共同研究を巡っての会合

日時:2007年3月1日
会場:慶應義塾大学三田キャンパス
 
 CEEUNから代表コーディネーターであるジョルジオ・ドミネーゼ教授(イタリア・ウディネ大学)、同機構の地域センター長であるアレクサンドル・ロガチ教授(ウクライナ・キエフ国立タラス・シェフチェンコ名称大学国際関係校)を招聘し、CEEUNと超地域・超領域のガバナンス・プロジェクトおよび慶應義塾大学との連携について会合を持つこととなっている。具体的には、若手研究者の相互交流、CEEUNの雑誌であるTransition Studies Reviewへの投稿が議題となっている。


III 今後の研究の発展性と課題


 本研究プロジェクトは、国際的な共同研究体制の基盤育成が主たる目的であった。しかしながら、国際的な共同研究を行う上で本研究プロジェクトでは資金的に限界があり、十分な成果がなしえたかったのも事実である。とはいえ、欧州地域において既に実績がある研究者と日本の若手研究者が共同研究を実施することにより、日本の若手研究者が自身の研究を実施するうえで有用なネットワーク形成が目的であったともいえる。その点では、2006年6月のフィールドワークや2007年3月の会議などを通しメンバー間での一定の信頼醸成が得られたともいえ、今後の個々の研究者の具体的な研究の発展に貢献したといえる。
 今後は、本研究プロジェクトで獲得した知見やネットワークをいかに活用し、有用で国際的にも斬新な研究を日本人若手研究者が実践しえるのかが課題であると共に本研究プロジェクトの可能性であるともいえる。