2006年度学術交流支援資金採択プロジェクト報告書

マニフェスト推進日韓共同プロジェクト

研究代表者 曽根泰教(政策・メディア研究科教授)
鈴木直人(政策・メディア研究科博士課程)
河東賢(政策・メディア研究科博士課程)
李洪千(政策・メディア研究科博士課程)
金在容(政策・メディア研究科修士課程)

■研究の概要

われわれの研究目的は、日本の経験をもとに韓国へのマニフェスト導入を支援することと、そこからフィードバックを得て日韓比較や問題点の整理を行うことであり、総じて理論と実践の融合を図ることである。

前者については、日本や韓国でセミナーを開催したり、韓国のメディアに情報提供を行うことで、韓国におけるマニフェストの普及を推進した。また、後者については、韓国におけるマニフェストの普及過程を分析することで、「なぜ短期間で普及したのか」「日本との違いは何か」「それはなぜ生じたか」、といった点について知見を得ることができた。この知見をもとに、問題点の整理を行っている。

本研究は、今後日韓のマニフェストを深化させていくのに貢献できるほか、将来、新たにマニフェストを導入しようとする国があれば、貴重な基礎資料となることが予想される。本研究は今年度で完結するものではなく、来年度も引き続き継続する。一例を挙げると、今年6月に第2回目のマニフェスト国際学術大会の開催が決定しており、現在われわれがその準備を進めているところである。

■主な活動内容

2006年2月3日 韓国マニフェスト国際学術大会開催
韓国で初めて開催されたマニフェストに関する国際学術大会。韓国のメディアが注目し大きく報道したことで、韓国におけるマニフェスト普及の重要な契機となった。われわれは、大会の企画段階から参画し、当日は曽根代表が日本のマニフェストについて報告を行ったほか、河・金が通訳・コーディネーターとして活動するなど、大会の運営を主導した。当日のプログラムなど詳細は「慶應義塾大学マニフェスト研究会の活動報告」を参照。
韓国マニフェスト国際学術大会

2006年4~5月、12月 韓国フィールドワーク
2回にわたり韓国でフィールドワークを行い、韓国におけるマニフェスト推進の中心となったマニフェスト推進本部の活動に参画したり、様々な関係者への聞き取り調査を行ったりした。こうした活動を通じて、韓国におけるマニフェストの展開や関係者の反応、マニフェストというアイデアの影響力を直接感じ取ることができた。このフィールドワークによって、日本から韓国へマニフェストが移転した経路の全体像を明らかにすることができた。

2006年6月9日 531地方選挙公約FINE評価決算および当選者公約履行点検方案の討論会
韓国議会発展研究会主催のセミナーに曽根代表が参加、韓国におけるマニフェスト普及のスピードを評価した上で、マニフェスト・サイクルの概念を伝えた。当日のプログラムなど詳細は別添資料を参照。
531地方選挙公約FINE評価決算および当選者公約履行点検方案の討論会

2006年8月28日 マニフェスト推進日韓共同セミナー開催
われわれと韓国の大手新聞社「東亜日報」との共催で、マニフェストに関するセミナーを開催。マニフェストに関する日韓の専門家・ジャーナリストを招き、双方の経験を伝えあい、今後の課題を検討する貴重な機会となった。当日のプログラムや議論の内容など詳細は議事録を参照。なおこのセミナーは「東亜日報」で報じられている(別添資料参照)。
マニフェスト推進日韓共同セミナー

2006年11月9日 マニフェスト日韓交流フォーラム
神奈川県ローカルマニフェスト推進ネットワークが主催したフォーラムに、曽根代表と河研究員が参加。河研究員は韓国のマニフェスト運動における事前評価活動について報告を行った。また、韓国におけるマニフェストの第一人者である金永来亜州大学教授も招かれ、韓国マニフェスト運動の特徴をガバナンスの観点から分析した。曽根代表はパネリストとして、議論の整理や問題提起を行った。当日のプログラムなど詳細は別添資料を参照。

この他、曽根代表や研究員が種々の活動に参加しているが、それらの詳細は慶應義塾大学マニフェスト研究会のサイトを参照。

■主な成果

2006年5月に実施された韓国の統一地方選で、市道(日本の都道府県にあたる行政単位)の首長候補者のすべてがマニフェストを提示して選挙を戦ったことは、われわれの活動の一つの成果である(詳細は、河論文を参照)。なお、われわれの活動やその貢献については、韓国のメディアでも取り上げられている。

(実践報告)
「5・31地方選挙、マニフェスト運動を推進」『東亜日報』2006年2月20日
われわれの活動やその貢献を伝える韓国大手新聞社の記事。
慶應義塾大学マニフェスト研究会の活動報告(韓国編)」
2005年1月から始まるわれわれのマニフェスト運動への関わりをまとめた報告書。
「マニフェスト推進日韓共同セミナー議事録」
2006年8月28に開催したセミナーの議事録。
「マニフェスト国民大討論会報告書」
2006年9月26日に韓国で開催された討論会の報告書。

(学術研究)
「政策移転過程における韓国ローカルマニフェスト運動の論理形成」『年報自治体学』2007年(掲載決定)
「韓国のマニフェスト普及と政策移転ネットワーク形成」(投稿中のため、要旨のみ)

■今後の課題

2007年度は、日韓ともに、研究すべき課題がさらに増える。韓国では、統一地方選で提示されたマニフェストが一年を経過してどの程度実行されているかという事後評価に関する調査や、今年12月に実施される大統領選でマニフェストをどのように活用するかといった点が問題である。日本では、4月に統一地方選があり、前回2003年の統一地方選からマニフェスト・サイクルが一周したことになるため、その評価を行う必要がある。また、7月には参議院選挙があり、二院制とマニフェストの関係が改めて問われることになろう。このように、来年度はマニフェスト研究の課題が山積みであり、今年度の経験や成果を生かして、引き続きマニフェスト研究に取り組む予定である。