2006年G8ユース・サミットと今後の開催に向けた学生の意見交換

−日本とロシアの学生交流の促進−

総合政策学部 渡邊頼純

 

      実施された研究活動

 

2006年4月:ロシア・サンクトペテルブルクにおいてG8ユース・サミット開催

 

2006年5月:SFCにてG8 ユース・サミット報告

-         BBLS(大学院サブプロジェクト)

-         「超地域・超領域のガバナンスプロジェクト」 慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス 学部・大学院

-         G8ユース・サミット助成団体

 

2006年6月 

-         外務省経済局において、G8ユース・サミットの成果報告

-         ロシア学生側との意見交換、研究の役割分担の開始       

2006年7月 本サミット開催

 

2006年8月〜10月 

両国の学生による本・サミットコミュニケの再検討と11月に向けた準備の開始

 

2006年11月20日〜24日

-         ORFでの学生討論会・招聘者によるパネルディスカッションの開催

-         「超地域・超領域のガバナンスプロジェクト」所属学生との交流

 

2006年12月 学生討論会でなされた議論の整理

2007年2月 

-         報告書作成

-         2007年度 Model G8 日本代表団選考・編成

-         2007年開催国であるドイツスタッフと打ち合わせ(ベルリン)

-         在ドイツ日本大使館訪問(ベルリン)

 

      資料

右アドレスにアップしております、ご参照下さい。 http://web.sfc.keio.ac.jp/~sayo/modelg8-2006

1.         G8ユース・サミット 報告資料

2.         ORF2006における発表資料

・ 学生発表資料

・ 当日配布資料(意義・プログラム・(パネリスト)香川敏幸教授・外務省経済局中村浩平氏・Dmitry S. Evstafievサンクトペテルブルク大学教授)

 

■ 研究課題

2006年G8ユース・サミットと今後の開催に向けた学生意見交換−日本とロシアの学生交流の促進−」

本研究は、4月3日〜4月9日にロシアにおけるサンクトペテルブルクで開催された「G8 ユース・サミット」のフィードバックプログラムとして実施されるものである。

 

 

■ 研究の背景

Ø         国立サンクトペテルブルク大学(St. Petersburg State University)との交流

慶應義塾大学は、総合政策学部にアンドレイ・クラフツェービッチ・ロシア科学アカデミー東洋学研究所(Institute of Oriental Studies, Academy of Sciences Russia)日本課長を訪問助教授として迎えたことにより同研究所との提携し、ロシアとの共同研究・教育の基盤をつくりあげた。しかしながら、同研究所の財政的な問題もあり、共同研究・教育は実質的なものにはならなかった。

だが慶應義塾大学は2005年7月に、プーチン・ロシア大統領の地元であるロシア国立サンクトペテルブルク大学と包括交流協定を締結した。これにより、慶應義塾大学とロシアの研究・教育機関との関係が強化された。他方で、2005年度より開始されたデジタルアジアプロジェクトを推進する上で、ロシアをはじめとする旧ソ連の研究機関との連携を模索していた総合政策学部の香川敏幸研究室では、同年9月12〜15日にサンクトペテルブルグ大学を訪問、トカチェンコ・国立サンクトペテルブルク大学副学長とエフスタフィエフ助教授と会談、同年12月、日本にエフスタフィエフ教授が来日し両大学の実質的な交流が広がった。特に、サンクトペテルブルグ大学から北東アジア研究所の設立とそれに伴う協力が提案された。これにより「国立サンクトペテルブルク大学による北東アジア研究所設立に向けたロシアと日本の学生との交流」の重要性が確認されることとなった。さらに2006月1月には、2006年7月にサンクトペテルブルグにて開催されるG8を模して「G8 ユース・サミット」(2006年4月3日〜9日)への日本代表団の派遣がエフスタフィエフ助教授を通してサンクトペテルブルグ大学からSFCに要請があった。その結果、渡辺頼純総合政策学部教授が同行する形で、政策メディア研究科修士課程の学生3名(小川裕貴子、後藤舞、樫田小夜)を中心として8名の学生が参加した。

http://www.keio.ac.jp/campusnews/060417_2.html

 

■ G8ユース・サミット概要

企画名称:「Youth Summit of the G8 」への日本代表派遣

開催日時:2006年4月3日〜4月9日

企画概要:「Youth Summit of the G8」は、2007年6月にロシア連邦・サンクトペテルブルク市で行われるG8首脳会談をモデルとして、G8各国が若者8人からなる代表団(政府首脳・外務担当・防衛担当・エネルギー担当・経済担当・内務担当・教育担当・シェルパ)を結成し、各専門分野における諸問題に関する意見交換を行い、共同宣言を採択した。

企画目的:G8参加国として各国が代表団を結成して会議に参加し、世界発展の基本的諸問題に関する若者の意見発表・交換を行う。世界に通用する若者の責任感の形成と市民としての自発的態度の促進、現存する世界の諸問題を克服するために、従来とは異なる解決法を発表できる環境で、G8首脳会議という政治的プロセスを若者の考えや意見の交換の場として利用する。本団体は、この企画への日本代表としての参加を目的としている。

Ø         G8ユース・サミットの成果

2006年4月にサンクトペテルブルクで開催された「G8 ユース・サミット」は、G8各国領事館も関わった新しい取り組みであった。本会議では、実際のサミットで議題として扱われるトピックに関し、各国の学生が国の代表として、そして一学生としての真剣な議論が展開された。国際連合をモデルとしたユース・サミットは今日までに開催されたことがあったが、G8をモデルとした会議は本年度が初めての開催である。その中で、会議の運営・議論の展開など課題も多く見受けられた。しかし、こうして8カ国の学生が活発に意見交換を行える場が設けられたこと、今回の会議におけるコミュニケも実際のサミット(2006年7月開催)に向け意見書として提出されることなど、ユース・サミットによる話し合いが実際の政策にコミットする点が多く見受けられた。学生が模擬外交を行う場で国家を意識しつつ、自己の意見を主張する大変意義深いものとなった。また、2006年4月14日付けの『産経新聞』においても、G8ユース・サミットへの慶應義塾大学の学生の参加とその意義についての報道がなされるなど、塾外からの評価も高いものであった。

 

1.        本研究の目的

本研究では、2005年7月に国立サンクトペテルブルク大学と慶應義塾大学との間に結ばれた包括交流協定を軸に、両者の学生の研究の相互理解を図る。さらに、共同の研究プログラムやフォーラムを実施することで、両者の研究環境を充実させる。また、2006年4月に開催されたユース・サミットと7月の本サミットの二つのコミュニケを、比較・検討する。それにより、ユース・サミットと本サミットの繋がりを見出し、多国間の学生の意見交換の意義・価値を向上させる。また、2年後に本サミットの開催を控えた日本が、それに伴うG8ユース・サミットの初の開催国としての役割・サミットの運営方法を学ぶ。

2.        研究意義

本研究がなされることにより、国立サンクトペテルブルク大学と慶應義塾大学の間で、両者の学生が盛んに交流するためのネットワークが構築される。これにより、相互理解と両国の学生による共同プロジェクトの実施(例:サミット、ディベート大会)が活発に行われるようになる。また、ロシアによって開催されたユース・サミットと本サミットの繋がりが見出されることで、今後開催されるユース・サミットの意義・価値が向上し、より充実した学生会議の開催に貢献する。

 

3.        研究協力機関

-          国立サンクトペテルブルク大学

-          International Diplomacy League

 

 

      研究成果

 

本研究においては、G8ユース・サミットの開催に携わった国立サンクトペテルブルク大学の学生と参加側・今後開催国となる可能性のある日本の学生が、共に今回のサミットを再考し、ユース・サミットと本サミットの繋がりや差異が見出す作業が中心に行われた。上述してあるように、G8ユース・サミットは昨年度初めて開催され、参加国、また開催国であるロシアにおいても手探りの部分が多くあった。そうした中で、G8ユース・サミットに参加した多くの学生(日本を含めた八カ国)が、実際の外交に携わっている外交官・大使館員とのコンタクトを取り、G8ユース・サミットでの活動成果を軸とした様々な意見交換を行うことができた。また今回の研究では、各国ともに「大学」が中心となり、学生の活動がサポートされた。それにより、学生による国際交流活動を促進させるアクターとしての大学の役割が再認識された。これにより、大学という場が、実際の外交の現場と学生の仲介者であると同時に、未来の国際舞台において活躍できる人材育成機関としての機能を十分に果たしていることを提示できたように思う。

上記のような成果が見出されたことで、学生による議論が行われることの意義と価値の向上に繋がった。それは、今年度(2007年)に、ドイツのベルリンにおいて第二回、G8ユース・サミットである「Model G8 Youth Summit」が開催されることに表れている。既に日本の代表団の編成も募集・選考を通して完了し、新旧の代表団においてドイツ開催に向けた準備を開始している。前回の派遣における反省も踏まえ、事前にプレゼンテーションなどを実施してゆく予定である。また、引き続き外務省・開催国での大使館との協力体制も維持していく。

本研究は、今年初めて開催されたG8 ユース・サミットの意義を促進させ、継続的に開催されていくことにも大きく貢献した。また、来年度の日本開催においては、Model G8 Japan 事務局を発足させている慶應義塾大学の協力が不可欠である。現在、来年度の開催に向けた実行委員編成、慶應150周年事業への申請も検討中である。このように慶應義塾大学が積極的に学生の意見交換の場を促進させるプログラムに関わってゆくことは、21世紀の大学が国際社会の中でいかなる機能を有し、その存在意義とは何かを示していくことに大きく寄与するであろう。