2006年度学術交流支援資金報告書
電子教材作成支援:体育U・V(フェンシング)
環境情報学部 教授 佐々木 三男
総合政策学部 講師(非常勤) 伊藤 裕一
本電子教材の狙いは、2006年度より新規開設された体育科目であるフェンシングにおいて、授業の理解促進を助けるホームページを作成することである。
フェンシングという種目は日本においてまだまだマイナー種目である。そのため種目を開設するにあたり、担当者としては、授業を履修する学生のほぼ全員が、用具や動作のみならず、それらを指示する用語、名前などについての基礎知識がまったくない、ということを想定する必要があった。さらに競技特性として、フェンシングにおいて用いられる用語は原則全てフランス語であるが、日本においてはそのフランス語がカタカナ語として変容し、場合によっては英語カタカナ語とミックスした、非常に分かりにくい用語体系となってしまっている。
本電子教材は、主な利用対象を履修予定者、ならびに既履修者とし、用語と動作、ならびに授業風景などが閲覧できるようなホームページ作成を目指した。
また、他の種目と違い、フェンシングについての書籍やDVDも日本ではなかなか触れる機会がない。そこで、本ホームページの重要なコンテンツの一つとして、海外書籍やDVDのレビューを行い、興味を持つきっかけ作りを行うとした。
本プロジェクトを実施するにあたり、新たにCNS共有作業領域を申請し、"fencing"というドメインを取得した。従って、本プロジェクトのページはhttp://fencing.sfc.keio.ac.jp/index.htmにトップページがある。
また、下記にある授業映像のストリーミングは、共有作業領域がストリーミングサーバーではないため、授業担当者(伊藤)のERNSのファイル領域にファイルを置くことで対応している。
作成したホームページは、トップページ以下に以下のページがリンクされている。
授業紹介 |
授業履修について、時間、持ち物の案内など。サブページに授業風景の写真や映像が閲覧できるようになっている。 |
このHPについて |
学術交流支援資金によって開設されている旨を記述。関与しているスタッフについても記述する。 |
協力者募集 |
この電子教材作成のプロジェクトに協力してくれる人の募集。 |
フェンシング用語集 |
50音順、種別順に検索できる用語集。 |
フェンシングリンク集 |
インターネット上のフェンシング関連情報のリンク集。 |
書籍・DVDレビュー |
関連書籍(主に海外)のレビュー。 |
また、このドメインとは別領域になるが、主要コンテンツとして授業内容を毎週記録した「コーチ日記」というブログを作成した。
以下では、上記のコンテンツの中で、特に重要な3つのページについて詳述する。
・授業紹介
このページでは、フェンシングを履修したい学生にとって必要な情報が掲載してある。体育予約システムへのリンク、履修時に持参すべき持ち物、聴講などの場合の連絡先、などである。
このページで最も重要なコンテンツは、授業風景がストリーミングで見れるようになっている点である。これによって、フェンシングの授業を履修する上で不安のある学生が、事前に授業の様子、難易度などをチェックすることができるようになっている。特にフェンシングという、経験者の少ない種目においては、非常に重要なコンテンツであると考えている。
・フェンシング用語集
このページは、フェンシングを始めるにあたって初心者が最も苦労すると思われる、用語の解説を載せてある。現在リストアップした用語は、日本フェンシング協会が出版しているルールブックより抜粋したものである。
現在は五十音順での検索が可能になっているが、攻撃や防御、フットワークといったそれぞれの技などの属性による分類も考えている。
・書籍・DVDレビュー
本学術交流支援資金の予算を大きく費やしたのが、この書籍部分である。日本においてはフェンシングに関する書籍は既に絶版になっており入手はほとんど不可能な状態である。また仮にそれら書籍を入手したとしても、ルール改正が数年に一度行われている現状では、2、3前のルールに対応した本でしかない。そこで、本予算を用いて、海外(主にイギリス、アメリカの英語文献)の購入を行った。
現在は、授業で興味を持った学生がさらに興味を持った場合に貸し出しができるよう、構内に整理しておいてある、という状態を整えてある。
・ブログ「コーチ日記」
「コーチ日記」は、毎週の授業が終了後に、その授業でやったこと、担当者から見た授業の感想などについて書き込んだものである。またそれにコメントをする形で、SAや履修者がフィードバックを行うことができる。
映像による「授業紹介」とならんで、フェンシングという種目がより身近に感じられるようになることが一番の目的であるが、実際に数名の履修者が書き込みを行ってくれた。アクセスカウンターからすると、ROM(リードオンリーメンバー)も定期的にいたようである。
1年間の電子教材作成は、新規授業の運営と同時進行であったため、試行錯誤により当初の研究計画書の中で達成できなかった課題が生じた。また、実際に運営していく上で、履修者から自分たちも参加できるようなコンテンツ作りについて要望がでる、といったこともあった。これらは来年度以降の課題として充実させていきたいと考えている。
- ストリーミングビデオの充実
- 用語集の利用しやすさの改善
- DVDの収集と公開への工夫
- コンテンツの多様化
1.ストリーミングビデオの充実について
電子教材においては、このストリーミングビデオが非常に重要な要素を占めることは間違いない。今学期は授業中の様子を撮影し、公開することとなった。
今後は、授業のより様々な局面(ウォームアップ風景や試合風景など)を撮影し、公開していきたい。
さらに、「教材」としての充実度を図るために、授業中の風景ではなくSAなどより上級者のレッスンを撮影し、それらをレッスンプランとして公開していきたい。
2.用語集の利用しやすさの改善
現在用語集が50音順に公開することができるようになったが、これは単語の羅列であって、まだ初心者にとって使いやすい状態とは言いにくい。
今後改善する案としては、上記映像ストリーミングと連動させて、視覚的にも分かるようにすることである。そうすることで、授業で行った技の反復演習などが可能になることが期待される。
3.DVDの収集と公開への工夫
予算の多くが書籍購入に費やされたが、フェンシングに関するコンテンツは、ビデオやDVDの形態でも入手できる。大手の販売ルート(例えばAmazon等)に乗っていないものが多いが、海外のフェンシング用具サプライヤーに問い合わせて入手することが可能である。今後これらを収集することを目標としたい。
またこれら書籍やDVDを収集し、学内での貸し出し用としてリストとレビューを作成することは可能だが、より内容に踏み込んでホームページ上で公開できるかどうか、は著作権法上非常に難しい問題を抱えている。しかし書籍などは日本語ではないので、学生が簡単に飛びつけるものでもない。今後は書籍の翻訳、ならびにDVDの部分的公開などを課題としていきたい。
4.コンテンツの多様化
本ホームページが定期的にアクセスをしてもらうためには、よりコンテンツの多様化が求められる。
現在企画しつつ今年度中に実現しなかたものとして、ブログからさらに発展した形で「コラム集」というようなものを考えている。内容は、フェンシングに必要な基礎トレーニングのあり方や、関連スポーツとの比較(例えば剣道とフェンシング)、などが考えられる。
また、wiki形式のページを作成し、履修者も作成に参加できるようなページも今後大きな可能性を秘めているように考えている。履修者からも要望が大きかったのは、授業中に行った試合の結果を自分で入力することで、通算の勝ち数や勝率といったものが分かる、という機能である。これは個人スポーツであるフェンシングだからこそ可能になるものであり、継続的に履修するインセンティブ作りとしても非常に有効であるように思う。
以上
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