2008229(金)

 

2007年度学術交流支援基金

研究成果報告書

 

研究課題名:グローバルガバナンス研究(グローバルガバナンスの視点)

研究代表者:渡邊 頼純(総合政策学部教授)

研究報告:

本年度春学期において、「グローバルガバナンス研究(グローバルガバナンスの視点)」の講義の中で、慶應SFC、中国の復旦大学、韓国の延世大学との遠隔授業を通じて、日中韓3カ国間のFTA(自由貿易協定)の実現可能性について中韓の学生と活発に議論を交わした。

まずは、各大学教員の講義形式による授業で、日中韓それぞれのFTA政策について知見を深めた。その後、日本のEPA(経済連携協定)にも含まれる5つの分野〔1.貿易、2.投資、3.知的財産権、4.環境、5.多文化交流(人の移動)〕についてのワーキンググループを設け、各大学の履修学生を各ワーキンググループに割り振り、各分野での3カ国間の相互協力、相互理解について議論を交わした。

07512日(土)に復旦大学に於いて開催されたピルグリムワークショップに参加するために、同月1013日の日程で上海へ渡航した。同ワークショップでは、各ワーキンググループがメールなどでの事前協議を踏まえ、各分野における3カ国間の既存の協力や今後の更なる協力の展望について意見交換を行った。同ワークショップの最後に、最終プレゼンテーションに向けた中間プレゼンテーションを行った。

貿易班は3カ国間のFTAの可能性と実現によって生じる影響について、投資班は3カ国間の投資の現状と将来の3カ国間投資協定の実現可能性について、知的財産権班は東アジアに存在する知的財産権に関係する問題解決に向けた3カ国間協力について、環境班は東シナ海ガス油田問題や黄砂問題に対する環境・エネルギー分野の3カ国協力について、多文化交流班はEPAで考えうる3カ国間の人の移動について、それぞれ議論・研究を行った。これら研究結果について、6月半ばに最終プレゼンテーションを行った。最終プレゼンテーション後は、『解説FTAEPA交渉』(渡邊頼純 監修、日本経済評論社、2007年)を用いて、日本のEPAについての知見も更に深めた。

本研究は、3カ国による共同研究を中心にグローバル・ガバナンスの知識はもちろん、履修者各人が実習を通じてその基本となる視点を体感することを目的としていた。本年度は、日中韓3ヶ国の学生が同時に出会えるという好機を活かし、face to faceのグループワークを行うことでグローバル・ガバナンス、更に東アジアのリージョナル・ガバナンスの諸問題について、率直に意見交換を行い、問題解決に向けての取り組みについて議論することができた。

結果、本研究を通じて、履修学生がグローバル・ガバナンスやグローバルな問題の解決に欠かすことの出来ない国際的視点も養えた。同時に、東アジア共同体の基礎となるであろう日中韓3カ国によるFTAの実現可能性や、将来の東アジア共同体の実現についても、履修学生それぞれに新たな問題意識が芽生えたことは、本研究の成果と言える。これらは履修学生の今後の大学院での研究生活の一助となり得るであろう。

以上