2007年度 学術交流支援資金 報告書

 

研究課題:東アジア大都市の都市再生および歴史的資産保全に関する国際共同研究

研究組織:研究代表   三宅 理一(政策メディア研究科兼環境情報学部教授)

      研究協力者 日端 康雄(政策メディア研究科兼環境情報学部・教授

              石川 幹子(政策メディア研究科・教授

              小林 博人(政策メディア研究科兼環境情報学部・准教授)

              松原 弘典(総合政策学部・准教授)

              古谷 知之(総合政策学部・准教授)

研究の概要:

 本研究では,成熟期にある主要な東アジア大都市を対象に主要な都市再生戦略の現状を比較調査し,将来の方向性などについて国際共同提案を取りまとめることを目的としています.本年度の主要な課題は、1)都市情報化とユビキタス社会基盤を見据えた観光・防災などを主眼とする国際的な情報基盤インフラ整備のあり方の検討,2)都市景観・緑地・交通を包含する新たな統合的社会基盤評価フレームの構築と東アジア型オープンスペース開発戦略の検討,3)歴史的資産のデータベース化と保全戦略、世界遺産等に関してです。2008313日から15日にかけてフィリピン大学(College of Architecture, University of the Philippines)にて開催される東アジア9大学との国際共同セミナー(第13回アジアメガシティ)において、その成果発表を行います。

 

研究の背景:

 東アジア大都市比較研究は,東京・ソウルなどを筆頭とする雁行形態発展論から,一定の豊かさを互いに享受しあう成熟社会のあり方を模索する段階に来ています.このような認識のもと,本研究では,1)都市情報化とユビキタス社会基盤を見据えた観光・防災などを主眼とする国際的な情報基盤インフラ整備のあり方の検討,2)都市景観・緑地・交通を包含する新たな統合的社会基盤評価フレームの構築と東アジア型オープンスペース開発戦略の検討,3)歴史的資産のデータベース化と保全戦略,世界遺産等に関する国際共同研究を継続的に行ってきました.国際共同研究の参加大学は,これまで東アジア・メガシティの学術交流を構築してきた,清華大学・同済大学・香港中文大学(以上,中国),国立ソウル大学(韓国),チュラロンコン大学(タイ),フィリピン大学(フィリピン),ハバロフスク工科大学(ロシア),台湾大学(台湾),及び慶応義塾大学の9大学です.これら9大学は,毎年、国際共同セミナーを交代で開催してきており,今年がその13回目にあたります。慶応義塾大学からは本研究組織メンバーに加え、修士課程・博士課程の学生16名が参加します。

 

研究の意義:

 中国・韓国・タイ・フィリピン・ロシア・日本それぞれの各大学で今年度に研究されてきたテーマは、研究の対象を国内としたものだけにとどまらず、世界各所の研究となっています。慶応義塾大学で研究が進められてきたテーマを例にあげれば、国内では銀座や横浜、多摩川流域など、国外ではウランバートルやヨクジャカルタ、エチオピア、アンデス地方など、世界中にその研究対象地が広がっています。このように国内外の建築、都市、ランドスケープ、景観等に着目し、その様々な問題点を提起し、議論できる国際共同研究の場は非常に有意義であると考えられます。

 東アジアの地域では特に都市部の乱開発によって、人口集中や就労問題、かつてはその都市を特徴づけていた歴史的文脈の喪失などが顕著に見られ、そうした特徴を失った都市の出現や、残すべきランドスケープの消滅に対して、これからの建築、都市開発はどうあるべきかなどを今後も継続的に議論していく必要があるわけです。

 分析の手法は、災害被害地の実態調査、都市ファサードや集落などの悉皆調査やアンケート、より現代的な技術に裏付けられたリモートセンサー(遠隔探査)やGISを使用した分析など実に様々となっています。国際共同研究を通して、様々な調査協力体制を構築できるほか、分析手法の新しい技術や情報をシェアすることができるわけです。

 

今年度研究テーマの具体的内容:

銀座の街を特徴づけている建物ファサードと街路に関する研究—「銀ぶら」を誘発する要素に関する研究

横浜、山の手におけるランドスケープの変遷に関する研究—外国人がかつて整備した遊歩道からみた景観に関する研究

横浜市における持続可能なコミュニティケアを形成するための仕組みに関する研究

リモートセンサーやGISを活用した、ウランバートル(モンゴル)の風景や人口変動に関する分析および研究

発展途上国における大規模災害後のコミュニティ再建に関する研究—インドネシアのヨクジャカルタでの震災をケーススタディとして

グリッド型都市の評価に関する研究

アートをより身近にとらえるための方法論に関する研究

エチオピアの歴史的都市(GondarおよびHarar)の趨勢に関する研究

インカの歴史的遺産の保存に関する研究

以上、慶応義塾大学からの発表分(抜粋)

 

今後の展望:

 今後も継続して国際共同研究および国際共同セミナーを開催していきたいと考えています。研究を単なる研究で終わらせないためにも、各国の大学や研究者との連携を深めていきたいと考えています。

 

なお国際共同セミナー(第13回アジアメガシティ)のプログラムは下記をご参照下さい。

http://www.geocities.com/iusam13/