研究課題名: スキルデータセットとマイニング技術の国際共同研究

研究代表者氏名: 古 川 康 一

所属: 政策・メディア研究科

 

研究成果の概要:

 

本研究課題では、ボッケリーニの「ロンド」を課題として、そのチェロの演奏に伴うモーションキャプチャリングデータ、筋電データを計測し、時系列データマイニングのためのデータセットを用意した。それをブランダイス大学のProfessor Jacques Cohenに手渡し、検討を依頼した。その結果、データとしては興味深いが、一般にデータマイニングのコミュニティーが利用するには、データ数が足りないことが判明した。そこで、本テーマの主旨を修正し、時系列データマイニングアルゴリズムの開発に役立てることとした。実際には、時系列データからの動作一貫性制約の抽出実験を行った。上記データを利用して、その演奏データから熟達者および非熟達者の両者の演奏時に、筋活動に関して、常に守っている体の使い方に関するルールの抽出を行った。その結果、熟達者は非熟達者が満たしている動作一貫性制約よりもより多くの制約を満たしていることが明らかとなった。このことは、熟達者が演奏のコツを動作一貫性制約の形で身に付けていることを意味している。また、それと同時に、非熟達者は当然満たすべき制約をしばしば満たすことが出来ずに、パフォーマンスの劣化を招いていることを意味している。本研究結果は、スキルルールとして、これまでは時系列データ中に頻出するパターンを抽出してきたが、それ以外に、時系列データ中に現れないパターンの重要性に着目した点が、ユニークである。この両者が揃って、はじめて、スキルルールとしての有用性を発揮するものと思われる。

 本研究課題の一環として、ボストン交響楽団の第1バイオリン奏者の水野郁子先生をスキルサイエンス国際シンポジウムに招待し、招待講演をしていただいた。この講演を通して、スキルの本質に迫る熟達のポイントが明らかになった。それは、より芸術的な表現に関わる問題であり、たとえば、アンザンブルの重要性、音楽的な表現を如何にして養うかなど、今後のスキル研究のための指針を与える内容であった。