2007年度学術交流支援資金研究報告(国際交流)
【課題名】ワイヤレスセンサを使った運動計測・解析手法に関する日豪共同研究II
【申請者】 政策・メディア研究科助教授 仰木裕嗣
【研究助成金額】800千円
【研究概要】
人間が運動時にセンサを持ち歩くようになると,その運動を計測する需要が高まると考えられることから,センサネットワークはより高速サンプリングの時代を迎えると考えられる.申請者の仰木は,加速度センサや角速度センサなどの慣性センサを用いた運動解析方法の開発を行ってきたが,これまでの一連の研究で利用してきた慣性センサデバイスは,全てデータロガー式(メモリ記録式で,事後データを取り出す)であったことから,我々のデータ取得はリアルタイム性に乏しかった.
これに対してオーストラリア・グリフィス大学工学部のCenter for Wireless Monitoring and
Applicationでは,Bluetoothや他の無線を運動計測に活用する研究が進められており,研究代表者でもあるDr. Dariel James氏は歩行やスポーツ運動の解析において無線活用の提案を早くから行ってきた.
2006年度の学術交流支援資金によってグリフィス大学との交流事業は双方の大学院生・研究者間の交流として結実した。
2007年度はお互いの大学間でもちあう技術をさらに融合し、慣性センサの計測技術に関して広く世に問う活動を進めることを主眼とした。
【研究目的】
本研究は,スポーツ運動をはじめとする人間の運動解析において無線計測技術の応用事例と具体的データ解析手法を提案することを,日豪の共同研究によって進めるものである.2007年度の目的は、我々の活動を広く世に知らしめるための手段として国際会議において教育ワークショップを開き、慣性センサの応用領域を紹介するものである。
【研究成果】
(1)
環太平洋スポーツテクノロジー会議におけるワークショップの開催
(ア)
期間:2007年9月21日から27日
(イ)
訪問先:シンガポール ナンヤン工科大学
(ウ)
学会名称:Asia Pacific Congress on Sports Technology 2007 (APCST2007)
(エ)
慶應義塾大学側:
@
仰木裕嗣(政策・メディア研究科兼環境情報学部、ワークショップ共同主催者)
A
小柳玲乃(政策・メディア研究科修士2
(オ)
グリフィス大学側研究参画者:
@
Dr. Daniel JAMES, Ph.D(グリフィス大学工学部 無線計測応用研究所 上席研究員。専門無線工学,ワークショップ共同主催者)
A
Mr. Neil Davey (グリフィス大学工学部博士課程)
B
Mr. Andrew Wixted (グリフィス大学工学部博士課程)
C
Mr. James Lee (サンシャインコースト大学博士課程)
D
Dr. A. Busch (グリフィス大学工学部講師)
E
Mr. Jason Harding(グリフィス大学工学部博士課程,オーストラリア国立スポーツ研究所)
(カ)
概要:共同研究推進中のグリフィス大学工学部無線工学応用研究所(CWMA)の上席研究員,Dr. Daniel James氏を中心としたヒトの運動モニタリング研究チームと共同で加速度センサデバイスを用いた運動計測に関する3時間にわたる教育ワークショップを開催した。このワークショップのために、我々は独自の加速度センサプラットフォームを新たに設計・開発した(Mr.
Davey担当)。ワークショップは、APCST2007の会議中、事前申し込み制によって集めた約20名の世界中の研究者に対して行われた。3時間のワークショップは3名の講師が指導しながら、補助として両大学の博士課程学生を中心としたサポート部隊が参加者を手厚く支援するものであった。講師によるサブテーマは以下の通り
@
Dr. Daniel James : 加速度センサによる計測の基本知識、応用
A
Mr. Neil Davey : 加速度センサプラットフォームの概要・組み込み系プログラミングの実際
B
仰木裕嗣 : Matlabクローン、Scilabを用いた時系列データ処理
以下は、APCSTにおけるワークショップの模様。
(2)慶應義塾大学SFCにおける研究ミーティング
共同研究者であり、我々の研究グループとの交流責任者でもある、Dr. Daniel JAMES氏を, SFCに招き,講義・研究ミーティングを行った.なお、この招へいに関しては学術振興会特別研究員(短期招へい)プログラムの助成により実現した。
期間および招待者(1):2007年10月25日から11月26日,Dr. Daniel James氏
CWMA上席研究員のDr.
Daniel James氏には学部研究プロジェクトにおいて公開講義でグリフィス大学におけるスポーツ計測部門の研究紹介,ならびに無線計測の物理的な基礎知識の講義を行ってもらった.また、9月に開催した国際会議における教育ワークショップの次回の展開について議論した。次回の国際会議は2009年にハワイで開催される予定であるが、本招へい期間中に2009年の国際会議における教育ワークショップの開催の段取りを進めることができた。
(3) 豪日交流基金による二国間交流の実現
Title
: Emerging technology exchange for the development of monitoring systems for sporting application
次に、計測の無線化技術に関して両国間で研究者の交流を進めるために、オーストラリア政府による、豪日交流基金研究助成プログラムに応募することを検討し、招聘期間内に申請した。この助成は、2007年12月下旬に決定通知がオーストラリア政府からもたらされ、2008年1月から12月までの期間内に、両国間において慶應義塾大学・グリフィス大学の双方で2名ずつ、1か月の短期留学ができるものである。また大学のみならず、国内においては慶應義塾との研究パートナーである(株)アーズ、オーストラリアにおいてはクィーンズランドアカデミーオブスポーツ、などの産官学の連携により研究者の育成に寄与するためにプログラムが展開されている。すでにこの豪日交流基金によるプロジェクトはスタートしており、両大学間で博士課程学生の派遣に関しての計画が進められている。