2007年度 学術交流支援資金報告書

電子教材作成支援

 

3−1 ネットワーク産業論

 

                           総合政策学部

                             國領 二郎

概要

 

昨年度より継続して、電子教材のデータベース構築を進めている。専門職養成教育を行う上で有効性が証明されている事例(一事象あたり30ページ程度のもの)討論を行うための教材を開発した。2007年度の授業でもこれらの教材を使用、また2008年度授業でも使用する予定であり、授業内討論の材料としている。

 

同時にこのような事例を集めたデータベースを開発し、教材を有効に利用できるシステムを構築した。現在クリエイティブコモンズライセンスによる電子教材の配布を開始している。サイトアドレスは以下である。

   http://case.sfc.keio.ac.jp/

 

 

2. ネットワーク産業論においての取り組み

 

開発した事例は以下の5事例である。この事例を授業教材として、春学期の「ネットワーク産業論」秋学期の「ネットワーク社会の構築」において実際に使用し、討論の材料とした。また、来年度の授業でも使用予定である。同時に、電子版として保存し、國領研究室ケースとしてデータベース化し、公開している。

 

「株式会社ロケーションバリュー」

 

少子高齢化が進みアルバイトの確保が困難になると、今働けていない潜在労働力の活用が課題となる。 20064月にサービスインした「おてつだいネットワークス」は、携帯電話のGPS(全地球測位システム)機能を利用して、おてつだいを頼みたい依頼者と、時間を有効活用したいワーカーをマッチングするサービスで、超短期の労働を取引する新しい市場を創りだした。運営会社である潟鴻Pーションバリューの成功要因、事業リスクは何か?また、「位置の価値」を活用する新しい事業展開は考えられないだろうか。

 

「フォートラベル株式会社2007

 

フォートラベル設立から3年経った20068月、フォートラベルのオフィスでは、ユーザ(トラベラー)たちに会いたいという声が聞かれるようになった。フォートラベルのサービスを開始して3年、クチコミや旅行記を投稿し、サイトを一緒に作り上げてきたユーザに対して、感謝の気持ちを表わしたいとも思っていた。写真、旅行記、クチコミ。それだけでは伝えられない自慢や、旅に対する思い入れを直接聞いてみるにはどうすればいいのだろうか。広報担当の高橋は、マイクロソフトの協力を取り付けてオフ会を企画した。

 

JALマイレージ・バンク

 

航空会社が行うマイレージプログラム特有の特色、基本的に発行したマイルの多くは会員により自社の航空座席の還元であるという点が、マイレージが発展した大きな要因でもある。マイレージによる、企業利益の顧客への還元システムについて考えるケース。

 

「コクヨのエコロジー」

 

コクヨは、総合カタログにおいて、環境配慮が十分ではない自社ブランド商品に対して「エコ×マーク」を表示するエコ×(バツ)マークをつけることが企業の環境配慮の意思表示となるか、リスクになってしまうのか。企業の意思決定に関するケース。

 

「マンガノベル」

 

マンガノベルは、東芝の内部ベンチャーとして発足した、インターネット上に公開する漫画のサイトである。アクセスした人が自由に翻訳をつけていき、世界に向けて日本のコンテンツを発信する。企業内ベンチャーの問題点について考えるケース。

         

 

3. 電子教材のデータベース化およびクリエイティブコモンズライセンス よる電子教材の配布

 

ケース教材を電子版として保存し事例データベースを作成した。 教材用事例の電子版データベース作成のメリットは以下である。

 

1.        経済性

小規模出版となるため通常の紙媒体による配布では印刷コストが大きくなるものを電子化することによって、安価に配布できる。

 

2.        機動性

最新の事象を速やかに教室での討論用に供すことができる。技術の持つ、社会的、経済的意味などについて討論を行う上では、実社会の動きに密接に関係する教材を継続的かつ機動的に提供する必要があり、データベースによる配布がふさわしい。

 

3.        遠隔教育などでの活用可能性

遠隔教育システムによって他大学や外部関係者まで討論型授業に参加していただくことには大きなメリットがあるが、そのような授業を実施するにあたっての教材配布手段として極めて有効である。実際に、昨年度の「ネットワーク情報産業論」「ネットワーク社会論」、また今年度の「ネットワーク産業論」は、GCにて配信されe科目にもなっているので、教材がデータベースとして公開されていることは、授業を進めるにあたって極めて有効であった。

 

このプロジェクトでは、著作権を執筆者から買い上げているが、非営利育目的の使用に対しては無償で電子的に公開することとした。営利的な教育機関に対しては有償での教材販売を行いうるような体裁で公開している。公開にあたっては、可能な限り自由な利用、流通を目的とし、教材に添付されたクリエイティブコモンズライセンスの下に公開されている。システム的にはCNSネットワーク上に國領研究室責任のサイトを構築公開している。

 このライセンス下で公開されたケース教材は、営利企業内での教育研修や、非営利組織での有料研修など、お金が発生するアクション以外においては、非営利利用でのルールを守る限り、自由に本作品を複製、頒布、展示、実演することができる。また営利的利用の場合も、利用にあたっては、教材のダウンロードから印刷、利用方法等全て利用団体に任される。利用方法、及び利用部数を自発的に申告してもらうことで、物理的交換に束縛されることなく、自由な流通、利用を促進することが可能となる。

 この取り組みは電子教材の、配布のあり方の社会実験でもある。学外からも使用需要が現れているので、どのような利用がなされるかデータを取り、報告を行っていく準備中である。