2007年度 学術交流支援資金報告書
研究課題名 電子教材作成支援3-13 スペイン語2 (ベーシック2)
代表者氏名 山本純一
所属 環境情報学部
I研究の背景
1 2007年度からの新カリキュラム導入と言語科目の履修コースの変更
今回の改定の中で、語学科目は、卒業要件の見直しの一つになっている。
従来、外国語は卒業単位の必修科目で、10単位が必要であった。今回の改訂で、環境情報学部の学生は、外国語科目は必修ではない。総合政策学部の学生は、一言語で4単位が必修となった。
2 スペイン語科目の変更点と課題
スペイン語は、従来、ベーシックコースと、インテンシブコースの複線型履修コースを準備していた。
今回の改訂では、他言語と異なり独自のコースを準備した。
2007年度からの新カリキュラム(スペイン語)
ベーシック1(2単位)→ベーシック2(2単位)→ベーシック3(2単位)→インテンシブ1(4単位)
→インテンシブ2(4単位 海外研修)→インテンシブ3(4単位)
単線化、および入学年度からインテンまで、3セメスターが必要になった。従来、入学年度の秋学期からインテンシブで4単位学習していた内容を、2単位構成の3セメスター制として見直す必要がでてきた。
この改定で重要な点は、教える内容を、4単位分から2単位分に減らすのではなく、2単位であっても従来の4単位の教育内容に近づけるよう、学習内容の充実化を目指す点である。
授業内容を見直すため、新しいシラバスを構築する必要がある。そしてそのシラバスにそった教材を開発する必要がある。
3 新教材の必要性
スペイン語では、新カリキュラムに添って、2006年度から電子教材開発を進めてきている。前年度は、主教材第14課から第26課の内容に合わせてCD語彙教材を開発した。
今年度は、
1)これに続く課、すなわち第27課から第39課の作成
2)授業補助教材として、新たに小テスト機能・自習機能を備えた教材の開発
以上の二点を搭載した新教材を目指した。
II研究の目的
1 ベーシックコースの授業を補助する教材の作成
(1)語彙学習教材 (第27課から第39課までのCD語彙教材の作成)
先学期に続く教材作成
(2)ベーシック・インテンシブ各コースに対応するスペイン語の単語学習CD教材
語彙リストだけでなく、授業で使用する小テスト機能をそなえ、さらに、自習教材として、学習した内容をテストで確認できる機 能を備えた教材の開発
(3)音声重視のSFCスペイン語カリキュラムに沿い、ネイテイブの音声を軸とした独自の単語学習教材の開発
以上の3点を新教材の独自な点として重視し、開発を進めた。
2 スペイン語コース全体の授業内容レベルをあげるための教材の作成(DELE対応教材の作成)
スペイン本国では、第二言語としてのスペイン語能力を認定するテスト(DELE)が実施されている。日本でも、受験可能であるが、今回のコース改訂では、このレベルに準じた授業を準備し、DELEの各レベルに応じた教材を各コース内で新たに準備する必要があると考えている。なお、DELEは、現在、「ヨーロッパ言語共通枠組み参照」という、EU内の外国語教育の共通枠組みの一部となっており、それを踏まえたレベルの対応表が、下に示すものである。SFCのコースも、これに準拠したシラバスの構築を目指しており、今期の電子教材は、その一部をになうものである。
DELEの各レベルは、共通枠組みでは、以下の通り規定されている。
Nivel |
Denominación |
Diplomas de Español |
SFCカリキュラム |
C2 |
Maestría |
Diploma de Español Nivel Superior |
|
C1 |
Dominio operativo eficaz |
|
インテンシブ3 スキル |
B2 |
Avanzado |
Diploma de Español Nivel Intermedio |
インテンシブ2 海外研修 |
B1 |
Umbral |
Diploma de Español Nivel Inicial |
インテンシブ1 ベーシック3 |
A2 |
Plataforma |
|
ベーシック2 |
A1 |
Acceso |
|
ベーシック1 |
共通枠組み参照 全体的尺度
熟達した使用者 |
C2 |
聞いたり、読んだりしたほぼ全てのものを容易に理解することができる。 いろいろな話し言葉や書き言葉から得た情報をまとめ、根拠も論点も一貫した方法で再構成できる。自然に、流暢かつ正確に自己表現ができ、非常に複雑な状況でも細かい意味の違い、区別を表現できる。 |
C1 |
いろいろな種類の高度な内容のかなり長いテキストを理解することができ、含意を把握できる。言葉を濁しているという印象を与えずに、流暢に、また自然に自己表現することができる。社会的・学問的・職業上の目的に応じた、柔軟な、しかも効果的な言葉遣いができる。複雑な話題について明確でしっかりとした構成の詳細なテキストを作ることができる。その際、テキストを構成する字句や接続表現、結束表現の用法をマスターしていることが伺える。 |
|
自立した使用者 |
B2 |
自分の専門分野の技術的な議論など、抽象的また具体的な話題の複雑なテキストの内容を、ほとんど理解することができる。お互いに緊張しないで、母語話者とやり取りができるぐらい流暢かつ自然である。かなり広範な話題について明確で詳細なテキストを作ることができ、様々な選択肢について長所や短所を示しながら自己の視点を説明できる。 |
B1 |
仕事・学校・娯楽で普段出会うような身近な話題について、標準的な話しかたであれば主要点を理解できる。その言葉が話されている地域を旅行しているときに起こりそうな、大抵の事態に対処することができる。身近で個人的にも関心のある話題について、単純な方法で結び付けられた。脈絡のあるテキストを作ることができる。経験・出来事・夢・希望・野心を説明し、意見や計画の理由、説明を短く述べることができる。 |
|
基礎段階の使用者 |
A2 |
ごく基本的な個人的情報や家族情報・買い物・近所・仕事など、直接的関係がある領域に関する、よく使用される文や表現を理解できる。簡単で日常的な範囲なら、身近で日常の事柄についての情報交換に応じることができる。自分の背景や身の回りの状況や、直接的な必要性のある領域の事柄を簡単な言葉で説明できる。 |
A1 |
具体的な欲求を満足させるための、よくつかわれる日常的表現や、基本的な言い回しを理解し、用いることができる。自分や他人を紹介することができ、どこに住んでいるか、誰と知り合いか、持ち物などの個人的情報について、質問したり、答えたりできる。 もし、相手がゆっくり、はっきりと話して、助け舟を出してくれたら、簡単なやりとりができる。 |
(1)DELEに対応する単語リストの整備と教材化
ベーシック・インテンシブの各コースのシラバスを、上記に示したDELEの基準に沿って作成し、語彙教材を準備していくことが第一の目的である。
(2)単にリスト作成するだけでなく、自習教材として、テストし確認する機能を搭載する。
(3)将来的に、自分で語彙を追加していけるような機能開発を視野に入れる。
III研究成果
授業を補助する副教材の充実と、DELEに準拠した電子教材の作成が今期の研究成果である。
具体的には、以下の点である。
1)2006年度が語彙学習に際し、入力することだけを想定した教材であったのに対し、2007年度ではテスト機能を設けたことが上げられる。具体的には、2種類のテスト(単語理解と聞き取り)を開発し、ユーザーが入力した解答と模範解答のテキストを比較し、一致した際に○となる仕組みを採用した。聞き取りに関しては音声ファイルをランダムに並べ替え、最初の4単語(またはフレーズ)をユーザーに聞かせている。
以上、大きな改善点は「テスト機能」であり、それを付け加えることによって得られる利点は次の2点である。
(1)テスト機能付加によるユーザーの理解力向上
(2)ランダム・テストを用いた「活きたスペイン語」の訓練
2) ベーシックの第27課から第39課に対応するCD教材の完成→これまでの成果とあわせ、ベーシックの基礎教材が完成した。
3) 単語の選定をDELE初級レベルに準拠した結果、自習かつ授業での小テストとして使用できる教材として完成した。
以上が、本年度の研究報告である。
なお、来期の課題として、インテンシブ1で対応できる機能別に、目次を再編成し、DELEの中級レベルに相当する語彙教材としてレベルアップした教材の作成である。
文責 寺田裕子 総合政策学部 訪問講師 hterada@sfc.keio.ac.jp