2007年度 学術交流支援資金報告書

電子教材作成支援

 

3−14 地域情報化論

 

                           環境情報学部

                            飯盛 義徳

概要

 

昨年度より継続して、電子教材のデータベース構築を進めている。専門職養成教育を行う上で有効性が証明されている事例(一事象あたり30ページ程度のもの)討論を行うための教材を開発した。2007年度の授業でもこれらの教材を使用、また2008年度授業でも使用する予定であり、授業内討論の材料としている。

 

同時にこのような事例を集めたデータベースを開発し、教材を有効に利用できるシステムを構築した。現在クリエイティブコモンズライセンスによる電子教材の配布を開始している。サイトアドレスは以下である。

   http://case.sfc.keio.ac.jp/

 

 

2. 地域情報化論においての取り組み

 

開発した事例は以下の4事例である。この事例を授業教材として、春学期の「地域情報化論」秋学期の「ベンチャー経営論」において実際に使用し、討論の材料とした。また、来年度の授業でも使用予定である。同時に、電子版として保存、データベース化し、公開している。

 

「コープさっぽろ」

 

コープさっぽろ(本部北海道札幌市)は、「宝箱システム」によって取引先に販売時点情報管理(POS)データをオープンにしたことで、品揃えや販売方法に関するカイゼンの知恵が組織の内外から集めることに成功した。バイヤーの勘に頼らず、あくまでPOSデータをもとにした分析によって、デフレの潮流に逆らって価格を上げて売り上げや利益もあげるといった様々な施策が具現化した。宝箱システムの発案者であり、経営破綻しかかったコープさっぽろをV字回復させ、1999年から8年間連続既存店成長という驚異的な実績をたたき出した大見英明氏の立場で、今後の宝箱サービス展開における課題と対策を検討する。

 

「住民ディレクター活動」

 

住民ディレクター活動は、一言でいえば、住民がデジタルビデオカメラを持ち、生活者の視線で番組制作を行う活動である。活動の目的は番組制作プロセスを通じて地域づくりに求められる企画力を育てることであり、番組づくりは目的ではなく、「副産物」と表現されることが多いのが特徴的だ。地域の人々が地元を再発見することが、地域の活性化にどのようにつなげていくかを考えるケース。

 

JA広島総合病院」

 

JA広島総合病院は診療カルテの電子化を実現、地域の開業医と共に地域医療連携サービスを開始した。この電子カルテ開発を一つの成功モデルとした場合、今後、電子カルテ開発事業者に求められるものは何か、事業を積極的に全国へ展開するとした場合の戦略はどうすべきかを考えるケース。

 

「株式会社 中海テレビ放送」

 

インターネットの出現により、公共の電波を使い免許産業であった放送産業のビジネスモデルは崩壊しつつある。その中、鳥取県米子市の株式会社中海テレビ放送では、ケーブルテレビジョンの特性を活かし、地域に密着した情報を提供することで、地域の住民から地元民放やNHKよりも高い支持、視聴率を得ている。有線から無線への移行など、新しい環境の中で進化する、地域メディアの今後を考えるケース。

       

 

3. 電子教材のデータベース化およびクリエイティブコモンズライセンス よる電子教材の配布

 

ケース教材を電子版として保存し事例データベースを作成した。 教材用事例の電子版データベース作成のメリットは以下である。

 

1.        経済性

小規模出版となるため通常の紙媒体による配布では印刷コストが大きくなるものを電子化することによって、安価に配布できる。

 

2.        機動性

最新の事象を速やかに教室での討論用に供すことができる。技術の持つ、社会的、経済的意味などについて討論を行う上では、実社会の動きに密接に関係する教材を継続的かつ機動的に提供する必要があり、データベースによる配布がふさわしい。

 

3.        遠隔教育などでの活用可能性

遠隔教育システムによって他大学や外部関係者まで討論型授業に参加していただくことには大きなメリットがあるが、そのような授業を実施するにあたっての教材配布手段として極めて有効である。「地域情報化論」「ベンチャー経営論」は、GCにて配信されe科目にもなっているので、教材がデータベースとして公開されていることは、授業を進めるにあたって極めて有効であった。

 

このプロジェクトでは、著作権を執筆者から買い上げているが、非営利育目的の使用に対しては無償で電子的に公開することとした。営利的な教育機関に対しては有償での教材販売を行いうるような体裁で公開している。公開にあたっては、可能な限り自由な利用、流通を目的とし、教材に添付されたクリエイティブコモンズライセンスの下に公開されている。システム的にはCNSネットワーク上に國領研究室責任のサイトを構築公開している。

 このライセンス下で公開されたケース教材は、営利企業内での教育研修や、非営利組織での有料研修など、お金が発生するアクション以外においては、非営利利用でのルールを守る限り、自由に本作品を複製、頒布、展示、実演することができる。また営利的利用の場合も、利用にあたっては、教材のダウンロードから印刷、利用方法等全て利用団体に任される。利用方法、及び利用部数を自発的に申告してもらうことで、物理的交換に束縛されることなく、自由な流通、利用を促進することが可能となる。

 この取り組みは電子教材の、配布のあり方の社会実験でもある。学外からも使用需要が現れているので、どのような利用がなされるかデータを取り、報告を行っていく準備中である。