学術交流支援資金(電子教材作成支援)報告書

政策争点分析(先端研究、政策分析ワークショップ)

研究代表者
曽根 泰教(政策・メディア研究科教授)
研究メンバー
鈴木 直人(政策・メディア研究科博士課程)
園田 紫乃(政策・メディア研究科修士課程)

 

1.プロジェクトの趣旨

 あらゆる議論には、その出発点の共有が必要である。政策争点分析プロジェクトでは、政策をデザインしたり議論したりする際の出発点となるビデオ教材の作成を進めている。具体的には、「年金」「医療」「教育」など、公共政策の重要な争点を取り上げ、それぞれの争点について、問題の背景を整理した上で、政策の選択肢を3つ程度に集約して、わかりやすく示すことを目指す。このビデオ教材は、ウェブで公開し、学生だけでなく、一般市民にも活用してもらうことを想定して開発を進めている。

 政策の議論を行うためには、まず、多種多様な政策争点のうち、何が重要な争点なのか、何が主要な選択肢なのか、といったことを知る必要がある。当プロジェクトが、そうした情報を整理してビデオ教材として提供することで、政策の議論の活性化や質の向上に貢献することができる。また、学生は教材づくりに取り組むことで、政策をデザインするために必要な情報の収集や分析の能力を身につけることが期待され、教育プログラムとしても位置づけられている。

2.今年度の活動内容

(1)作業
  今年度は、年金をテーマにビデオ教材の作成を行った。曽根研究会の学生を中心としたチームを作り、まず、著書、論文、新聞記事といった二次資料の収集を行い、年金政策に関する膨大な情報を整理するところから作業を始めた。その中から、主要な選択肢となりうる考え方を3つに集約し(別添のパワーポイント資料参照)、それぞれの主張や根拠をまとめた。ついで、ビデオの中で使用する専門家のコメントをとった。当初は、自民党や民主党の年金を担当する国会議員からもコメントをとる予定だったが、先方の都合がつかなかったため、社会保障を専門とする研究者のコメントをとるにとどまった。
  以上で収集・整理した情報をもとに、ビデオ教材の作成に取り組む。ナレーションとともに、ポイントを整理するスライドや図表、専門家のコメント映像などを組み込み、第一次版が完成した。

(2)発表
  本年度は、まず、11月22日~23日に六本木アカデミーヒルズ40で開催された慶應義塾大学Open Research Forum 2007(ORF)に、ビデオ教材を出展した。開発途中のものではあったが、関心を示す訪問者が多く、特にメディア関係者からは今後共同でプロジェクトを進められないかという打診も受けた。ORFでは様々分野の研究発表が行われたが、政策を映像で表現するという新しい試みが評価されたようである。
  次に、1月13日に慶應義塾大学三田キャンパスで開催されたグローバルセキュリティ研究所(G-SEC)の研究発表会においても、当プロジェクトの趣旨説明を行い、ビデオ教材の一部を上映した。出席者からは、重要なプロジェクトだと感じた、今後の進展に期待したいといった意見が聞かれた。
  なお、作成したビデオ教材については、改善を施し、コメントを得た専門家の許可を受けた上で、曽根研究室のウェブサイトで公開する予定である。

3.今後の課題

 今後の課題として、量の問題と質の問題の両方がある。
  量と問題としては、当初の研究計画では、3つ以上の政策テーマについてビデオ教材を作成する予定だったが、実際に作業を始めてみると、資料の収集や整理、専門家とのコンタクトに予想以上に時間をとられ、結果的に年金をテーマとしたものに絞らざるを得なくなった。プロジェクトに参加する学生の人数やコミットメントにも不足があった。今後、継続してビデオ教材を作成していくためには、今年度の経験を生かして、作業の効率化や、メンバーの増員など体制の強化が必要である。
  また、質の問題として、ビデオ教材の内容についても、よりわかりやすく、ポイントを突いたものにしていかなければならない。この点でも、初めての試みであるため、試行錯誤の段階にあるが、第一次版ができたことにより、課題も見えてきた。専門家からのチェック、一般市民からのチェックを受け、よりよい教材づくりの方法を抽出していきたい。

4.添付資料とビデオ教材の一部

タイトル
ビデオ1


ビデオ2

専門家のコメント
ビデオ3