学術交流支援資金 - 教材作成補助 報告書
研究課題「デザイン言語アトラスの作成」
脇田 玲


■ 研究課題
SFCの特色あるカリキュラムの1つであるデザイン言語科目群のアトラスを作成することを目的とする。デザイン言語、デザイン言語実践、デザイン言語ワークショップ群は、共通した知識やスキルを要求されることが多々ある。一方で、それぞれの多様な応用先やデザイン言語のもつ体系を整理し、全体像を把握しながら学習を進めらることが求められている。これらの問題を可決するために、「デザイン言語」を中心としてその科目群の知識及びその体系をアーカイブしたデザイン言語アトラスを教材として作成する。


■ 研究の背景
デザイン言語系科目群は、SFCが保持する特色ある科目群である。デザイン言語科目群は、デザイン言語(旧、デザイン言語総合講座)、デザイン言語実践、デザイン言語ワークショップ(11科目)の13科目から構成される科目群であり、新入生から4年生までの広い学生をカバーするとともに、外部から政策・メディア研究科に入学した大学院生の研究活動を補佐する役割も果たしている。一方で、多くの科目から構成されるためにその全体像を掴みにくく、各科目で共通に利用できる知識やスキルの把握や、学習計画の立案を容易するための仕組みが求められている。 また、デザイン言語という概念は、色や形を取り扱う従来の美術的側面だけでなく、社会調査や分析、フィールドワーク、プログラミング、電子工作、思想哲学などが深いレベルで融合した学問領域である。そのため、学生がその体系の全体像を理解することはもちろんのこと、各分野の個別の先端の理論や動向、関係する参考文献やサイトなどをまとめたアーカイブも求められている。


■ 研究内容
講義のビデオ配信12回のゲストによる講義内容をインターネットからアクセス可能なビデオ映像として配信した。配信は千代倉研究室が開発したワンマン録画システムによるサポートを受けた。このシステムを利用することで、授業終了直後にはWMVフォーマットによる映像エンコーディングが終了し、すぐにインターネットから配信するフローを構築することができた。映像はVGA 500kbpsの中画質、XGA 1200kbpsの高画質の2種類の映像配信を行った。

講義のpodcasting これまでに述べたビデオ配信は高度なインフラにあるユーザ(特にSFCの学生)を対象にしたものである。もう1つのユーザとして想定される学外のユーザにはよりハードルの低い環境を準備する必要があると考え、Apple社が提供するpodcastingによる配信を行うことにした。配信にはVideo版podcastingとAudio版podcastingの2つを提供することで、汎用性の高い教材の提供を試みた。





図:Video版podcasting





図:Audio版podcasting

以下にそれぞれのpodcasitngへのリンクを示す。

  Video版podcasting
  Video版podcasting

この教材を利用するにはApple社のiTuneが必須である。これによりPC環境(Windows及びMac)での教材閲覧が可能になる。さらに同社のiPodを用いることでモバイル環境での教材利用が可能になる。 以下に、iPod Touchを用いたモバイル教材の利用風景を示す。









図:iPod Touchによるモバイル環境での教材利用


■ デザイン言語サイトの作成
これまでに述べてきた電子教材をまとめたウェブサイトを構築した。以下にURLを示す。

    デザイン言語2007 ウェブサイト

このサイトには講義ビデオ(WMV, VGA 500kbsp, XGA 1200kbsp)、Video版podcasting, Audio版podcasting, 講義レジュメ(PDF)の資料が公開されており、多様なメディア様式による授業体験をサポートしている。


■ 書籍の執筆
今回の電子教材作成、及び講義の内容をまとめた書籍出版の作業を現在進めている。 2006年3月に出版した「デザイン言語2.0 - インタラクションの思考法」はレクチャシリーズをまとめた編著であるが、現在執筆中のものはより詳細な理論や実践に重きを置いたものになる予定である。


■ まとめ
これまで述べてきたように、本年度の教材作成では進化するインフラや携帯端末に合わせた教材配信を実現することで、学内及び学外の双方に向けての教材配信を実現することができた。またこれらの映像と、講義で独自に作成したレジュメ等の付加資料をウェブにまとめることで、豊富な教材を提供すること、及びユーザが形態を選択できる電子教材環境が作成できたと考えている。一方で研究課題にあげていた網羅的な知識資源の構築には着手することができなかった。これにはWikipediaに代表されるようにすでに公知の環境が存在するところが大きく、似たようなものを作成することのメリットが低かったことが理由の1つとしてあげられる。一方でこれらの集合知サイトは一般的な知識しか扱っていないという問題点も存在するため、SFCのようなデザインマインドとエンジニアマインドの双方をもった人材育成に特化したアーカイブを作成することは依然今後の課題として残される。今後はデザインエンジニアという新しい職種に特化した情報資源の作成に向けて作業を進めていきたい。

以上。