2008年度学術交流支援資金研究報告(国際交流)

 

【課題名】ワイヤレスセンサを使った運動計測・解析手法に関する日豪共同研究III

【申請者】 政策・メディア研究科准教授 仰木裕嗣

【研究助成金額】600千円

 

 

【研究概要】

人間が運動時にセンサを持ち歩くようになると,その運動を計測する需要が高まると考えられることから,センサネットワークはより高速サンプリングの時代を迎えると考えられる.申請者の仰木は,加速度センサや角速度センサなどの慣性センサを用いた運動解析方法の開発を行ってきたが,これまでの一連の研究で利用してきた慣性センサデバイスは,全てデータロガー式(メモリ記録式で,事後データを取り出す)であったことから,我々のデータ取得はリアルタイム性に乏しかった. これに対してオーストラリア・グリフィス大学工学部のCenter for Wireless Monitoring and Applicationでは,Bluetoothや他の無線を運動計測に活用する研究が進められており,研究代表者でもあるDr. Daniel James氏は歩行やスポーツ運動の解析において無線活用の提案を早くから行ってきた.

2006年度の学術交流支援資金によってグリフィス大学との交流事業は双方の大学院生・研究者間の交流として結実し、2007年度はお互いの大学間でもちあう技術をさらに融合し、国際会議において慣性センサを用いたヒトの運動計測についてのワークショップを開催し、世界各国から参加した学会参加者に対して慣性センサの使用法、時系列データの分析法などを教えた。

そして2008年度は、無線計測をヒトの運動計測に活用するため、さらに研究を推進するべく本研究助成に応募した。2008年度は、我々研究グループの活動が評価され、豪日交流基金(Australia Japan Foundation)によって研究交流事業に対する助成をうけることができたため、学術交流支援資金ならびに豪日交流基金の両方の支援をうけて研究交流を推進した。

 

 

【研究目的】

本研究は,スポーツ運動をはじめとする人間の運動解析において無線計測技術の応用事例と具体的データ解析手法を提案することを,日豪の共同研究によって進めるものである.2008年度の目的は、無線計測をヒトの運動計測に応用するため、新たに開発を始めた無線センサデバイスのコア技術開発と、その応用事例の展開であった。

 

 

【豪日交流基金】

(1)  申請責任者:Dr. Daniel JAMES氏(Griffith大学工学部無線計測応用研究所、上席研究員)

(2)  テーマ:Emerging technology exchange for the development of monitoring systems for sporting applications.

(3)  研究経過報告URL: http://sportsbioengineering.com/australiajapan.html

(4)  助成金額:AUD 19,800

 

 

【研究成果】

(1)  国際会議発表・参加

(ア)           期間:20081016日から18

(イ)           開催場所:オーストラリア・ハミルトン島

(ウ)           学会名称:ASICS Conference of Science and Medicine in Sports

(エ)           慶應義塾大学側参加者:

@   仰木裕嗣(政策・メディア研究科兼環境情報学部)

A   小柳玲乃(政策・メディア研究科博士課程)

(オ)           グリフィス大学側参加者:

@   Dr. Daniel JAMES, Ph.D(グリフィス大学工学部 無線計測応用研究所 上席研究員。専門無線工学,ワークショップ共同主催者)

A   Mr. Neil Davey (グリフィス大学工学部博士課程)

B   Mr. Amin Ahmadi(グリフィス大学工学部博士課程)

(カ)           概要:仰木・Dr. JAMES, Mr. Davey, Mr. Ahamadi4名についてはポスター発表において現在進めている研究についてを発表した。なお、Mr. Ahamdiは、ベストポスター賞を受賞。

@   James, D., Ohgi, Y., The development and application of inertia sensors for sports performance assessment : successes, failures and emerging technologies.

A   Ahamadi, A., et al., Deriving upper arm rotation from Vicon to enhance the first serve in tennis.

B   Davey, N., et al., Swimming intra stroke metric identification using wrist mounted inertial sensors.

 

(2)慶應義塾大学SFCにおける研究ミーティング

共同研究者であり、我々の研究グループとの交流責任者でもある、Dr. Daniel JAMES氏、および組み込みシステムプログラミングを専門とし講師でもあるDr. Andrew Wixted氏を SFCに招き,講義・研究ミーティングを行った.なお、この招へい旅費に関しては豪日交流基金プログラムの助成により実現した。

 

期間および招待者

(ア)Dr. Daniel James氏 20081031日から1114

(イ)Dr. Andrew Wixted氏 200859日から530

(ウ)Mr. Craig Lynton氏 2009220日から228

 

CWMA上席研究員のDr. Daniel James氏には学部授業「スポーツエンジニアリング」において公開講義でグリフィス大学におけるスポーツ計測部門の研究紹介,ならびに無線計測の物理的な基礎知識の講義を行ってもらった.

Dr. Andrew Wixted氏については、大学院セミナーにおいて大学院修士課程学生、博士課程学生との研究討論に参加してもらった。また氏については、現在鋭意開発している、TI社のマイクロコントローラー、MSP430シリーズ上に搭載するRTOSの移植作業を日本国内滞在中に行ってもらった。これには仰木の研究協力企業であるアーズ株式会社の協力を仰いだ。

Mr. Craig Lynton君は、現在Griffith大学工学部4回生であるが、Honored Studentの資格をもつため日本では修士課程1年生に相当する。Dr. Andrew Wixted氏の進めた組み込みプログラミングの開発をさらに進めるため来日し、組み込みOSとして世界的に知られている、TinyOSMSP430上に移植する作業を行う。本助成の終了後はGriffith大学側の資金援助と彼自身の卒業研究の一環として日本に滞在し研究を進めるものである。

 

(3)  Griffith大学における研究ミーティング

研究責任者である仰木、ならびに無線計測技術を使ってスポーツ流体力学研究を進める大学院博士課程所属の小柳玲乃がGriffith大学に滞在し、同大学において研究交流、講義等を行った。なお、この出張については豪日交流基金の支援を受けた。

 

期間および出張者

(ア)           仰木裕嗣 20081010日から1021日(途中、国際会議発表参加期間を含む)

(イ)           小柳玲乃 2008101日から1031日(途中、国際会議に参加期間を含む)

 

期間中には、仰木がGriffith大学において慶應義塾大学側で進めている研究紹介を講義形式で行った。また同じクィーンズランド州のUniversity of the Sunshine Coast において、同様のテーマについて研究者並びに大学院学生に対しての講義を行った。

大学院博士課程学生の小柳については同大学に1か月滞在し、無線計測において必要とされる組み込みシステムのプログラミングについて、Dr. Andrew Wixted氏の指導のもと勉強を進めた。