目次

  1. 研究概要
    1. 概要
    2. メンバー
    3. 目的
  2. 研究背景
    1. 背景:時間とインタラクションデザイン
    2. 共通コンセプト:時間とインタラクションデザイン
  3. 研究内容
    1. CastOven
    2. Dancingo
    3. Happy Printer
    4. suGATALOG
    5. みんなのズーミング年表
    6. PhotoLoop
    7. 時算機
    8. 豊穣記
    9. モクリタス
    10. AutoEnikki
    11. CooClock
    12. ブクマストリーム
    13. OneDayReviewer
    14. Kaleido Calender
    15. 時缶
    16. アシアト地図
    17. 金計り
  4. トークセッション
    1. 都会時間と田舎時間、OLからみたリッチな時間の過ごし方
    2. いつからせっかちになったのか。日本人の時間
    3. アニメーションと時間
  5. 展示会の開催
    1. 概要
  6. アンケート
  7. まとめ
  8. 対外発表、記事
  9. 謝辞

研究概要

概要

安村研究室ではインタラクションデザインを実世界に適用するとアプローチで、これまで、家展、電車展、カフェ展、おしゃれ展を開催してきた。  今回我々は、時間に着目し、時間展を開催すると同時に、時間に関するインタフェースデザインの研究を行なった。

メンバー

教員

大学院生

学部生

目的

今回我々が注目したのは、「時間の使いやすさ」である。いくら魅力的なサービスやシステムでもそれを使う時間がないことが問題である。 時間展では「インタフェースデザイン +時間」から新しいソフトウェアやシステムを提案する。我々は「製品としてよい」ということだけではなく、 「その製品はユーザーの生活時間をどう使うか」という視点から、「新しい使いやすさ」を目指した約 20 の展示を行なうこととした。

研究背景

背景: 空間から時間へ

これまで、ユビキタスコンピューティングというパラダイムで、空間に関するインタラクションデザインが活発に研究開発されてきた。しかしながら、現実の我々の生活は時間に追いまくられ、忙しい日々を送り、あたかも情報機器に使われているような錯覚さえ覚える。落ち着いて、情報機器を扱えるような、新しい時間に着目したインタラクションデザインが望まれる。

共通コンセプト: 時間のインタラクションデザイン

ユビキタスコンピューティングは、コンピュータの遍在という、空間的な普及の観点が強く、技術の進展には有利であった。しかし、「ユーザにとって」の視点を見落としやすくなる。たとえば、パソコンは人間がその前で使うことや、両手を使うことを強要する。その画面の中で動く多くのソフトウェアやサービスは、それだけをユーザに集中的に使ってもらうことを前提にしている。しかし、人々の生活時間は限られている。したがって、ユーザの時間を強要するようなデザインは、製品個別には使いやすくても、ユーザの生活の一部として考えると使いにくい、あるいは使えないものになってしまう。この解決には、ユーザの生活を中心に発想し、たとえば、活動の「すきま」や活動最中の「ながら」の時間を考慮しシステムのデザインをしていく必要がある。

我々は、この視点こそがユビキタス社会の次のステップと考える。つまり「ユーザの生活をどう構築するか」という、時間的な視点からの情報システムの普及を目指し、情報システムと人間が共生する社会の実現である。

研究内容

 我々は、以下に述べる17個の作品を具体的に試作し、展示を行ない、我々の考え方を具体的なものを通じて、展示会参加者に見て、コメントをもらった。  

  1. CastOven
  2. Dancingo
  3. Happy Printer
  4. suGATALOG
  5. みんなのズーミング年表
  6. PhotoLoop
  7. 時算機
  8. 豊穣記
  9. モクリタス
  10. AutoEnikki
  11. CooClock
  12. ブクマストリーム
  13. OneDayReviewer
  14. Kaleido Calender
  15. 時缶
  16. アシアト地図
  17. 金計り    

以下では、それぞれの作品について、やや詳しく説明する。

1. CastOven 〜筋書きのある、あたため。 

castoven img Presented by 渡邊 恵太, 松田 聖大

あたため時間を利用して、YouTube のコンテンツが見られる楽しい電子レンジです。日常生活の待ち時間を利用して、インターネット上にある膨大なコンテンツを消費する。



2. Dancingo 〜待ちたくなる、赤信号。 

dancingo img

Presented by 山本 侑未, 古山 亜人, 村井 洋子

赤信号の待ち時間が楽しくなるような、むしろ待ちたくなるような、楽しい信号。歩行者用の信号が赤のときに踊り出す。

3. Happy Printer 〜写真を奏でるプリンター。 

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Presented by 渡邊 恵太

写真の印刷は楽しいものだ。とくに印刷がでてくる瞬間はどきどきする。その印刷する時間をレッドカーペット、BGM、照明でより盛り上げ、楽しいひとときにするのが Happy Printer である。



4. suGATALOG 〜日常生活のログを今に活かす。 

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Presented by 佐藤 彩夏, 渡邊 恵太

服は実際に着用してみないことには、イメージがつかみにくく、さらに服を試着した状態で他の服と比較することができない。suGATALOGは、過去に自分が服を着た写真を合成することで、ディスプレイ上でトップスとボトムスの試着シミュレーションを行うシステムである。複数のコーディネートを並べて比較することも可能であるため、出かける前の限られた時間の中で試着することなく容易に気に入ったコーディネートを選ぶことができる。



5. みんなのズーミング年表 〜自由自在に探検。 

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Presented by 安村 通晃, 澤田 翔

Google Maps のようなズーミング可能なインタフェースを用いて、数十億年前の宇宙の誕生からつい数日前に起きた出来事までにわたる膨大な年表のなかから、気になる部分をズーミングして見ることができるデジタル年表である。ベースとなる年表に加え、国ごと、専門分野、また郷土史や自分史などのチャンネルを組み合わせることで「自分が生まれたときに何が起こったのか」などを見比べたり、CO2 や人口などの統計グラフを重ねることで史実と統計の因果関係を視覚的に把握することができる。



6. PhotoLoop 〜楽しむ時間がナレーション。 

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Presented by 渡邊 恵太

スライドショーを友人と一緒に、楽しむということは多いだろう。ときに笑い、つっこんだり、スライドショー鑑賞時は意外と私たちはクリエイティブで、語らいがある。PhotoLoop はそのスライドショー鑑賞時の語らいを記録し、それを自動的にスライドショーナレーションにするシステムである。



7. 時算機(じさんき) 〜時間を操る、見えてくる。 

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Presented by 秋山 博紀

アナログ時計やカレンダーを使って視覚的に時間の計算ができる電卓である。



8. 豊穣記(ほうじょうき) 〜時代が見える、気づく。

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Presented by 秋山 博紀

あなたの生年月日を入力することにより、あなたの人生の素晴らしさを環境音で教えてくれる。



9. モクリタス 〜皆と一緒にもくもく作業。

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Presented by 松村 飛志

スケジュールを適当に入力しておくと同じイベント等に参加する人と出会えるかも! シンプルな Web スケジュラー・サービスである。



10. AutoEnikki 〜1フレームに共存する時間。 

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Presented by 山本 伶

定点カメラでつくる絵日記的なものである。1枚の画像に長い時間が同居しているような映像をつくる。1フレームに同じ人が何人もいるような写真が自動生成される。



11. CooClock 〜計りながら記録する。 

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Presented by 佐川 雅美

料理が得意でない人のためのキッチンタイマーである。料理中に複数の作業をしていると、何をいつ始めたのか、残りの時間は何分か、わからなくなってしまう・・・。ちょっと野菜を切っているうちにお鍋があふれていた、なんてことはないだろうか。複数の時間軸を管理できるタイマー、CooClock?はあなたの調理時間の整理整頓をし、料理をより楽しいものにするお手伝いをする。



12. ブクマストリーム 〜皆のブクマをまとめてチェック。 

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Presented by 上野 大樹

近年のインターネットでは、日々多量の新しい Web ページが追加されて、それらの Web ページをチェックするのには、大きな負荷がかかってしまう。この問題を解決するために、本作品では一定期間においてはやった Web ページを一定期間まとめてチェックすることができる。さらに、同様のことが分野ごとでも可能となる。



13. OneDayReviewer 〜1日を思い出すアルバム。 

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Presented by 平井 貴絵

眺めているだけでその日がどんな1日だったのかが視覚的にわかるように作った 写真ビューワーです。 今日がどんな一日だったか思い返すとき、写真の力を借りることがよくあります。 でも、アルバムに貼られている写真を見るだけでは、いつ写真を撮影したのか、 どういった流れで撮影したのかがわからないことがあります。 このアプリケーションはそうした状態を防ぐため、写真を時系列順に表示すると 同時に、それが1日のうちの何時頃の写真かも同時に表示させます。



14. Kaleido Calender 〜ふぞろいな日付たち。 

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Presented by 菅原 圭

日付の大きさと配置を任意に変更させることで、よりパーソナライズに活用できるカレンダーを提案する。



15. 時缶(じかん) 〜あなたの時間、詰まってます。 

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Presented by 元良龍太郎

あなたの時間が詰まった缶詰である。



16. アシアト地図 〜「地図X時間」の発見を。 

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Presented by 元良 龍太郎

昔好きだった曲を聞くことをきっかけにして、頭の中に当時の思い出が鮮明に浮かぶことがしばしばあります。 時缶は音楽の持つを人の記憶を引き出す力に着目した音楽プレーヤーです。
自分の年代のカードを時缶に押し込んで開くと、その人が中高時代に流行した曲が再生されます。



17. 世の中、金計り 〜 kane-bakari 〜 

kanebakari img

Presented by 本宮 昂祐

『時は金なり』 (Time is money.)時間は貴重・有効なものだから、 むだに費やしてはいけない。(広辞苑) 時間はいくらなんだろう。 そんな疑問に答えるために 身の回りのさまざまなものを時間とお金に換えてみました。 普段、時の流れとお金の消費を感じることはありませんが、 今でも少しずつ流れています。 是非それを肌で感じていただきたいと思います。



トークセッション   

「都会時間と田舎時間、OLからみたリッチな時間の過ごし方」

ゲスト: 貴山 敬 (NPO 田舎時間代表) ,山本 貴代 (博報堂生活総合研究所)
ホスト: 安村 通晃 (慶應義塾大学 SFC インタラクションデザインラボ)
日時: 9月11日 (木) 14:00 ~ 15:30

「いつからせっかちになったのか。日本人の時間」

ゲスト: 織田 一朗 (時の研究家)
ホスト: 安村 通晃 (慶應義塾大学 SFC インタラクションデザインラボ)
日時: 9月12日 (金) 14:00 ~ 15:30  

「アニメーションと時間」

ゲスト: 佐藤 雅彦 (東京芸大教授 & 慶應大客員教授)
ホスト: 安村 通晃 (慶應義塾大学 SFC インタラクションデザインラボ)
日時: 9月13日 (土) 14:00 ~ 15:30

展示会の開催

概要

時間展は、2008年9月11日 (木) 〜 13日 (土)の3日間、東京自由が丘のGallery Casa Tana で開催し、3日間で200名を超える参加者が訪れた。

時間展Webサイト http://jikan-ten.jp/ (2009年5月31日まで掲載)

webイメージ

アンケート

アンケート概要

実施期間:時間展開催期間 2008年9月11日 (木) 〜 13日 (土)

実施方法:質問紙による手書き回答(選択式、自由回答式)

回答数:171

「時間展」を何で知りましたか

時間展を何で知りましたか グラフ

 

あなたは,日常の時間をどう感じていますか?

 日常の時間をどう感じていますか? グラフ     

 

時間の過ごし方をどう変えたいですか?

 時間の過ごし方をどう変えたいですか? グラフ

面白かった・興味を持った展示作品がありましたら,選択してください(複数回答)

また中でも特によかったものがあれば,ご記入ください

実際に利用してみたい展示作品がありましたら,選択してください(複数回答可)

4.1 面白かった・興味を持った展示作品
4.2 中でも特によかった展示作品
5 実際に利用してみたい展示作品

面白かった・興味を持った展示作品 グラフ

時間展全般に関してお伺いします.

    企画の面白さ

     時間展を何で知りましたか グラフ

     

    会場の立地(アクセス)の良さ

     時間展を何で知りましたか グラフ

     

    スタッフの説明や案内などの対応

     時間展を何で知りましたか グラフ

トークセッションに参加された方はお答えください.トークセッションは面白い,興味深いものでしたでしょうか?(自由回答:抜粋)

9月11日 (木)「都会時間と田舎時間、OLからみたリッチな時間の過ごし方」

9月11日 (木) 「いつからせっかちになったのか。日本人の時間」

9月13日 (土) 「アニメーションと時間」

まとめ

我々は、従来の時間の扱い方とは異なる視点で、時間のインタラクションデザインを考え、その考えに基づき、20件近い作品を試作、展示した。さらに、ゲストスピーカーを合計4名呼び、3回トークセッションを行なった。200名を超える来場者からは、面白い、楽しいなどの、積極的に評価する意見が多数寄せられた。なお、WISS2008で行なったCastOvenに関するインタラクティブ発表では、最優秀賞を受賞した。

 

対外発表、記事

謝辞

本研究は2008年度学術交流支援基金の支援の下に行なわれた。

連絡先

慶應義塾大学環境情報学部 安村研究室
http://ylab.sfc.keio.ac.jp/