2008年度学術交流支援資金

電子教材作成支援

31  報告書

 

研究課題:ITと学習環境―多言語LMSの構築と運用

研究経費:75万円

研究組織:研究代表 :重松  淳(政策・メディア研究科 教授)

研究協力者:安村 通晃(政策・メディア研究科 教授)

國枝 孝弘(政策・メディア研究科 准教授)

藁谷 郁美(政策・メディア研究科 准教授)

寺田 裕子(スペイン語訪問講師(招聘))

太田 達也(総合政策学部 准教授(有期))

 

 

 

報告書目次

1.本研究の背景:重松淳

2.本年度の研究概要:重松淳

21 多言語学習の意味

22 多言語モードサイトの構築

23 実現への展望

3.今年度の各部門研究成果

31 企画支援インターフェース部門 :安村通晃

32 フランス語部門:國枝孝弘

33 中国語/日本語/英語部門:重松淳

34 ドイツ語部門:藁谷郁美、太田達也

35 スペイン語部門:寺田裕子

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1.本研究の背景

トータル4年目に入った本プロジェクトは、HCプログラム科目「ITと学習環境」におけるさまざまな議論を踏まえつつ、各語種独自の教材開発と共に、「多言語化」教材提供による自律学習支援を目指して、1年間の活動を行なった。この1年間を通して、予定していた「多言語モードサイト」の作成は実装段階に入った。

この「多言語モードサイト」を構想した背景には、高速インターネットの普及が生み出した新しい学習スタイルを把握すると同時に、学習者個人の生来的な学習方法志向にも目を向け、学習という行為の周辺でITやネット環境が果たす役割を考えるべきだという現状認識がある。その現状認識の上に立つと、個別自律学習支援の重要性が浮かび上がる。これまでの教育的姿勢を転換して学習者サイドにたち、学習をさまざまな局面でサポートしナビゲートしていく学習支援態勢を作ることが、今求められている。学習者が教育パラダイムを変えつつあるということができよう。

こと成人の外国語学習となると、学習者個人内部にすでに確立されている学習スタイルが、かなり大きな影響力を持つと考えられる。たとえば声を出して暗記する方法が自らにとって有効だという信条を持つ学習者は、新しくもう一つの言語を学習しようとする時、やはりこの方法をとろうとするし、文法に拘らず目標言語で話してしまうことが最も早道だと考える学習者は、コミュニケーションを取りながら頭の中で文法構造を構築していくことを選ぶ。このような個別の志向に対応せず、一方的な教材提供を行なっても、学習者側からの接近は望めない。ある到達点へのシラバスが教育側の頭の中にあるとしても、そこに到達するための方法論的志向は、実は学習者の頭の中にあると言っても過言ではないだろう。「多言語モードサイト」がまず注目したのは、学習者中心の教材提供であった。

しかしなぜ「多言語モード」かという点については、さまざま議論があった。同種教材のシステムを統一して作成者の便宜を図るためだけであれば、「多言語」というコンセプトは不要であるし、多言語を統一的なプラットフォームで扱えるようにすることが、学習者にとって本当に必要かどうかも疑問である。やはりそれぞれの語種に最適な学習方法を研究し教材に生かし、語種別に提供していく方が効率的ではないかという議論である。多言語に触れる機会を提供して外国語学習へのモチベーションを高める、さまざまな言語との比較によって母語や学習対象言語に対する気づきを促すなど、「多言語」という把握の仕方が外国語学習にもたらすメリットは否めないが、「○○語の学習」という学習者の課題からは、その優先度は低いと言わざるを得ない。

とはいえ、日本といえども今は多言語社会である。異文化接触の機会は今後ますます増え、異文化間コミュニケーションが日常化する時代が目の前に迫っている。現実の異文化接触のすべての場面で英語が支配的であると考えるのは早計である。外国語学習に踏み込む以前に、多言語化した環境に身をおくことに慣れなければならない。今後は「多言語社会にあって○○語を学ぶ」学習者が増えていくことになる。それが「多言語モード」で外国語に接することに拘る理由である。

 

 

 

 

     多言語モードサイトのイメージ

SFC公式サイト

                                

                                     多言語モードサイトトップ

         言語セクションサイト                 (1)挨拶集

              ◆多言語ボタン               (2)自己紹介集

                                       (3)遠隔授業紹介

                                       (4)多言語対応教材

                                       (5)各言語文化情報

                                       (6)各言語カリキュラム情報

 

各語種HP

 

    教材         文化紹介

    ◆多言語ボタン    ◆多言語ボタン

       

          カリキュラム

            ◆多言語ボタン

 

 

拡大し続けるWEB利用ネット社会での外国語学習スタイルには変化が生まれている。学習支援は、学習者の接近を引き出せて初めて効力を持ちうる。学習者内部の学習方法論的志向に応える選択肢が用意されているかどうか、また学習者の嗜好にヒットする形で提供されているかどうかは、その意味で非常に重要であると考える。インターネットを利用した学習支援では、「多選択肢」と「見せ方」の工夫がポイントになる。SFCの言語学習環境では実に多種多様な教材が存在するにも関わらず、それらの活用への内なる動機が必ずしも高まらない。それはやはり教育的視点が先行するからではないか。

そこで「多言語モードサイト」では、SFCにすでにある教材群を再編成し、現役の学習者である学生、つまり学習者サイドの視点からのアイディアを最大限に活かした「見せ方」で再提供する。それによって外国語の個別自律学習を促すと共に、多様でしかもさまざまな語種に応じた教材群が、新しい学習スタイルに添って活かされることを狙っている。

 

 2.本年度の研究概要

この1年間に各部門が行なった研究・開発はそれぞれ多様であるが、それは次節に譲るとして、まずそれらを「多言語モードサイト」という切り口で別の見せ方をしていこうという合意のもとに行なった「多言語モードサイト」のトップページ制作について述べたい。

 

21 「多言語モードサイト」トップページの制作

 このサイトに載せる【ウェブコンテンツ】は、以下のようなものである。

@多言語環境PRビデオ

A多言語あいさつ集(予定)

B多言語モードで見るWEB教材集(多言語ボタンによるリンク)

C授業紹介ビデオ(遠隔授業紹介を含む)

D各言語サイトへのリンク集

Eサイトの説明

 今年度は、これらのコンテンツをどう見せるかを決めるトップページの作成と@を主に行ない、B・Cの基礎的作業にも着手し、トップページはこの3月でほぼ完成の予定である。@のPRビデオは、夏に作成を開始して完成し、2008年度秋のORFですでに発表した。内容は、SFCの多言語使用環境をイメージとして見せるためにスキット仕立てにしたもので、現在多言語字幕を作成中である。Bでは、これまでに各語種が開発してきた教材のうち、「映像・音声・テキスト」の揃っている教材(主に単語学習)を同じシステムで統一的に扱い、多言語ボタンをつけて、語種横断的な単語教材を作る。システムはドイツ語の単語教材Dpodをベースにするが、元教材はそのまま各語種のHPから辿れるようになっている。現在データの収集が進行中である。Cは、現在SFCで行われている遠隔授業のうち、中国語、ドイツ語、フランス語、日本語授業として実施されている言語学習に関わる遠隔授業を紹介するものである。今年度は、外国語セクションが行なっている遠隔授業のイメージを伝えるために、フランス語遠隔授業の紹介ビデオが作成された。今後上記4言語について、同様のイメージビデオを作り、簡単な紹介文やカリキュラム紹介などのテキストを作る予定である。

 

22 多言語ボタン

多言語ボタンのロゴが完成した。“Λ”(ラムダ)をかたどったロゴで、言語関係の研究室が多くラムダ棟にあることから、デザインされたものである。これは多言語化された教材であることを示すマークとして、今後それぞれの語種の該当教材に貼り付けてもらい、SFC言語の公式サイトと多言語モードサイトのリンクに統一感を持たせたい。SFC言語のトップページから多言語モードサイトへの入り口を示すマークにもなる。多言語モードサイトの教材ページでは、このマークをクリックすることによって、各語種の該当教材(元教材)に移動することができる。

 

23 次年度への展望

 2009年度は、一応この多言語モードサイトの完成年度としたいと考えている。少なくとも、21で述べたコンテンツを全て完成し、「多言語モードサイト」のプロトタイプが稼動するところまで進みたい。そのためには、かなりタイトなスケジュールで進めなければならないが、是非実現させたい。

 同時に、現在それぞれの研究室が独立したサーバーで動かしている教材を、ITCの一括管理下におく事を提案し、何かとトラブルの多いサーバー管理の問題を解消していきたい。

 

3.今年度の各部門研究成果

31 企画支援インターフェース部門 :安村通晃

311 はじめに

企画インタフェース部門としての安村研究室は、今年度、(1) デジタルノートの試作と評価、(2) 海外における学習環境調査、とを主におこなった。以下、その内容について報告する。

312 デジタルノートの試作と評価

紙にかわって、パソコンを授業中に持ち込み、ノートを取る機会が少なくないが、実際にノートとして使おうとすると、適切なソフトが無くて困ることが少なくない。実際、SFC19名にアンケート調査をおこなったところ、68.5%の学生が、なんらかのデジタルノートを使用した経験があることがわかった。ただ、その多くが、メモ帳、WordWiki、テキストエディタなどの既存のソフトを使って間に合わせている。

紙のノートは、図などを含めて自由に書けるという反面、問題点も少なくない。逆に、パソコン上でのノート、すなわち、デジタルノートでは、清書やアレンジが容易、検索しやすい、コピー&ペーストが容易、などの特徴をもつ。

既存のデジタルノートしては、たとえば、Google notebook[1] というものがあるが、これは主に、Webを見ているときのメモ帳として用いることを目的としたものである。また、アノトペンという、紙に書いたものがデジタル的にもコピーが残る優れものもある。紙とデジタルの融合という点では面白いが、使用する紙が特別なもので高価格であり、一般に普及しているとまでは言えない。

今回、我々は「ぷらのーと」と呼ぶデジタルノートシステムを試作し、簡単な評価をおこなった。ぷらのーとは、作成したデジタルノートの管理、蓄積・保存の他、穴埋め問題の作成支援機能をもっている。

ぷらのーとのシステムは、XOOPS[2]と呼ばれるコミュニティサイト構築ソフトウェアを用いて開発した。なお、XOOPSは、いわゆるLAMP(Linux, Apache, MySQL, PHP)上で動作する。

ぷらのーとの最も特徴的な部分は、穴埋め作成支援機能である。たとえば、図1のように、授業中にノートを作成したとする。これに対して、BRICsとは何かを問題としたとき、タグを埋め込むだけで、簡単に4つの部分が空欄となり穴埋め問題ができる。この問題に対して、最初の二つを回答して、残りの二つが無回答だとすると、図2のようにシステムが採点もおこなうような仕組みである。

   図1 ぷらのーとでのノート作成例     図2 穴埋め問題回答後の例

 

実際に19名の被験者に、このぷらのーとを評価してもらったところ、穴埋め問題の機能にもっとも高い評価が得られた。

 

313 海外調査研究

2008年度秋学期、筆者はサバティカル(特別研究期間)の際、10月中旬から約1ヶ月間、北米を訪問し、特に学習環境に関しては、以下の調査をおこなった。すなわち、(1) スタンフォード大学を訪問し、d-school[3]に関して、その代表メンバーの一人であるテリー・ウィノグラード教授に直接会い、インタビューした。また、(2)トロントで開催されたFuturePlay 2008と呼ぶゲームデザインに関する学会に参加し、ゲームデザインと学習に関して、北米の動向を調査した。

d-schoolはそのリーダーがIDEOを創設したDavid Kelley であるため、狭い意味でのデザインコースと誤解する向きもあるかもしれないが、実態はマルチディプリンで問題発見・問題解決を目指す横断的な新しい教育の仕組みであることがよくわかった。SFCの教育理念とも近いものがある。

FuturePlay 2008では、ゲームデザインを学習や教育に取り込もうとする活動が北米ではあちこちでやられていることが分かり、印象深かった。たとえば、Institute of Play というグループでは子供たちを対象に、Quest to Learn[4]という活動を続けている。また、マイクロソフトなどが、資金提供して、ニューヨーク大学にGame for Learning Institute200810月に設立したそうである[5]。このように、ゲームデザインの考え方が学習や教育にも使える、という考え方が北米では広まりつつあることが分かった。

314 まとめ

2008年度は、主にデジタルノートに関する研究と海外調査研究を実施した。なお、ぷらのーとのアイデアと実装は、安村研の豊田洋明君が担当した。秋学期のサバティカル中は小川克彦教授にご指導頂いた。ここに謝辞を捧げたい。

 

32 フランス語部門:國枝孝弘

  フランス語では、podcastのコンテンツ制作、遠隔会議の実践および紹介ビデオの制作、および動画によるフランス語学習環境の構築について活動を行なった。

321 podcastのコンテンツ制作

 フランス語セクションでは、さまざまなpodcastコンテンツを制作しているが、今回の「多言語モードサイト」に関係するコンテンツとしては、「汎用性の高さ」という観点から動画の発音教材配信を行なった。企画と制作は國枝研所属の安倍龍依君(総合2年)による。番組のタイトルは「ルビによらないフランス語発音講座」である。動画のメリットを生かして、実際にネイティブが発音している画像と、発音のコツの説明を聞きながら、練習をする教材である。podcastのメリットは、教材を短いユニット(一つの単元)ごとに区切って配信できることである。発音も集中的に勉強するのではなく、習慣として毎日練習する必要があるが、podcastの配信はまさにそのペースメーカー的役割を果たすことができる。今回も「r / l」の対立と、「b / v」の対立をそれぞれ3回ずつに区切って配信をした。それぞれの回を進むごとにだんだん発音の例文が長くなってゆく。また学生自らが番組を進行しており、親しみのわく構成になっている。こうして教材の進行をこちらでコントロールすることで、始めて間もない学習者に学習のペースを掴んでもらうことを考慮した。

 コンテンツとしては、学生の安倍君がハーフであるために、若者の日常に根ざした親しみやすい表現を中心に収集した。

 言語には、その言語に特徴的な音というのがあり、それをマスターするための教授法も、その音にあわせて考えなくてはならないことはその通りである。しかしそのための教材をどのように学習者にとどけるか、例文はどういったものがふさわしいかなど、学習環境を作り上げるための問いはやはり普遍的であろう。その意味で今回の配信スタイル、内容がひとつのプロトタイプとなることを期待している。

322 遠隔会議の実践および紹介ビデオの制作

 フランス語セクションでは、今年度もフランス、パリ第7大学と遠隔会議を行なった。今回は、フランスの学生たちがグループワークを行ない、それぞれのテーマに基づいて、リサーチ結果を発表した。その過程において、日本側の学生に、掲示板、メールなどによってリサーチをすすめ、その調査結果を、発表に含めた。課外活動としての交流であったが、今回もいくつかの発見があった。その中で改めて確認したことは、交流は、それぞれの固有名「幸治、フレデリック」のような、個人がくっきりみえてきて、ようやく交流が始まるということである。スカイプが普及したが、実際に使うのは、ごく親しい間柄の相手だけであると言われるように、いくら遠隔環境が発達したとしても、またいくら相手が自分の学習言語を母語とする同世代の若者であるとしても、交流したいという気持ちになるのは、その個人自体に魅力がないと、たんなる挨拶、自己紹介程度の表面的な交流にとどまるということである。したがって、個性が浮きだつような仕掛け作りが必要となる。今回は、自己紹介の際に、パリ側の学生が自分の好きな漢字を発表した。その理由や、こちらからの質問なので、学生の趣味や考え方などがとてもよく伝わった。「その人自身への興味」は、交流を進めるための重要な第一歩である。

323 動画によるフランス語学習環境の構築

 現在のメディア環境によって、動画の素材を加工することがかなり容易になってきた。それによって、さまざまな動画素材を教材として活用する環境も整ってきた。今回二人の学生が取り組んだのは、「料理で覚えるフランス語/日本語」(総合1年盧、政策・メディア1年村田)である。それぞれがフランスらしいデザートである「Tarte Tatin」、日本のポピュラーな料理「カレー」を選び、実際に調理の場面を録画し、それにナレーションおよびテロップをつける構成で、動画教材を作成した。また「Tarte Titin」には、学生自らが演奏するピアノのBGMを加え、ひとつの作品として完成させた。また「カレー」の日本語教材は「豚肉、にんじん、たまねぎ、じゃがいも」などの基本的な名詞や、「切る、焼く、煮る、まぜる」など具体的な動詞を学びながら、日本語の語彙の習得を目指した教材となった。

324 まとめ

 このように教材に関して言えば、現在のメディアは、俗な表現で言ってしまえば「撮って出し」が可能にしている。したがって、今後は、それらを学習者に積極的に発信してゆくことが大切になってくるであろう。発信をするということは学習者の日常生活に教材を運んでゆくということである。この日常という学習環境に関していうならば、遠隔会議も同じように、学生の「パソコン生活」の中にはいっていける環境が整いはじめている。それだからこそ、いかに学生の興味を引きつけるのか、そこが肝要となってくるであろう。

 

33 中国語/日本語/英語部門:重松淳

現在開発中の教材としては、日本語母語話者の英文多読用ソフト「Taddok」(河合聡志制作、環境情報学部4年・長谷部研/重松研所属)、日中韓3言語を同時に学習する教材「トライリンガルトライ」(崔雅制作、総合政策学部4年・重松研所属)、英語レポート執筆サポート教材「Map!」(野口諒子制作、20089月重松研卒)、外国人または年少者の国語教育としての同訓異義学習用ソフト「ややこし屋(以前のイラストでドン)」(熊坂遥子制作、環境情報学部3年・重松研所属)、子供向け平仮名練習教材「Write音」(長峯毅英制作、環境情報学部2年・重松研所属)、英単語スペリング練習教材「自分流語学」(畑田宏樹制作、環境情報学部2年・重松研所属)がある。

331 Taddok多言語バージョン

 英文多読用の教材「Taddok」は、英文を一定の速さで途切れることなく読み進むことを目的に、意味を知らない単語に出会った時にそこにカーソルをあてることによって単語和訳を表示させるというもので、辞書を引くなどの動作によって文脈から離れざるを得なくなったり、読むスピードが落ちたりすることを避け、気楽に英文を読ませて多読を促そうとする教材である。2008年度に入って、この教材は多言語化を目指してバージョンアップした。英語、中国語、ドイツ語、フランス語の4言語の文章にそれぞれ単語和訳がついたものが、まず日本語母語の学習者用に制作された。また各言語の母語話者用に各言語訳がつくものも制作されている。例えば、中国人が英語を学ぶ際には、中国語和訳を選択すると、英文に中国語で単語訳が見えるというものである。試用者からの要望には、自分の読みたい文章にこのシステムが適用できれば良いというものもあり、今後の発展可能性も感じられる。

332 トライリンガルトライ

これは日中韓3言語を同時に学習しようという教材で、今年度は「発音」に的を絞り、開発を行なった。所謂「漢字圏」に属する3言語の(音)読みに関する「カン」を養うということである。長年をかけて周辺に伝播していった漢字の(音)読みは地域特有の音に変化して普及し、更に国家によって整理統合されることを繰り返しながら現代に至っている。日中韓3言語(中国語については共通語である「普通話」を指す)には、ある法則を持って元の漢字音が変化して定着していくため、ある漢語語源の語音の元の漢字音を推測することは比較的たやすい。元の漢字音を推測することができれば、音を聞くことによって漢字を思い浮かべることができ、意味推測の速度が速まる、という理屈である。漢字圏の人々(特に日本で)は、もし漢字そのものを見ることができれば意味に直結するが、発音を聞いて意味を推測するためには、このような「カン」を養うことが早道になる。これで直ちに3言語同時学習が可能になるわけではないが、一つのモジュールとしては大いに有用であろうと思われる。

333 Map!

英語でレポート等を執筆することに不慣れな学習者に、一定のパターンを示して執筆サポートをしていこうという教材である。懇切丁寧な解説、パターンの提示、例の提示、有用なサイトの紹介など、初心者にはありがたいナビゲーションになっている。今後はこの構成を利用して、日本語学習者特に日本の大学で学ぶ留学生向けのサイトにすることができないか、検討していく予定である。

334 ややこし屋

日本語には「あげる(上げる、挙げる、揚げる)」などのように、同じ訓読みで異なる意味を表す語が多い。漢字を書き分けることで意味範囲を限定すると理解が早いが、日本語学習者または日本の年少者にとって、書き分けられた漢字の意味範囲が、どのような意義素によって統括されているのかがわかりにくい。もちろん、「(電話を)かける、(2と3を)かける」のように本来の意味での漢字を使わないものと、「掛ける、駆ける、賭ける、架ける、懸ける」等のように、意味の判別を容易にするために漢字を書き分けるものとが共存している場合もあり、状況はあまり単純ではない。しかし、この教材では漢字によって意義素がイメージしやすくなるように、漢字自体に動きを持たせて動画にしてあるので、初歩の段階では非常に取り組み易く面白い。今年度は以前の「イラストでドン」の名称を「ややこし屋」に改め、漢字自体に命を吹き込み「動かす」ことによって意義素のイメージ化をはかるというアイディアを更に強化した。それと同時に、漢字文化圏の学習者がごく自然に漢字の部品を分割して認識できるのに対し、非漢字文化圏の学習者にはそれが難しいという点に課題を見出した。例えば部品の「烈火」は、漢字圏では自然に「火」のイメージと結びつくが、そうでなければ「烈火」という部品を他から切り離して「火」と結びつけることは、恣意的にしか見えず難しい。非漢字文化圏の学習者には、まず漢字部品の知識や「烈火」と「火」の結びつきから始めなければならないかもしれない。この課題を今後追求して教材のバージョンアップに生かしていくことを考えている。

335  Write

平仮名の書き方を学ぶ子供向け(または初めて平仮名を習う外国人学習者向け)の、「音」を聞きながら「手」を動かす平仮名練習用教材である。一般のマウスでもペンタイプのものでも書くことができる。紙の練習帳と同じようにモデルの文字があってそれをなぞることから始めるが、子供が「あー」と言いながら「あ」を綴るように、書いている間中その音が聞こえている(頭子音はペンをパッドに置くごとに聞こえる)。モデル無しで書く場合は、ラインからはずれるとやり直しになり、形良く書けるまでをサポートしてくれる。細かい作業によってかなり精度が高くなっていると同時に、飽きさせない工夫もさまざま施されている。今年度の半ばの時期に、身体全体を使って書くためにWiiを利用できないか試したが、画像との位置関係から難しいことがわかり、現在は録画画像からペン先(指先)を特定して画面にラインを表示していくことを検討している。この教材は曲線の連続である平仮名に対応できるものであることから、アルファベットや直線で構成される漢字(簡体字)にも対応できることが考えられるので、大いに発展性がある。今後は身体と書写の融合が文字の認知や記憶にどう影響するかなども含めて研究していく予定である。

336 自分流語学

子供が母語を構築していく初期には、意識的に人やモノの名称を口に出す(音声化する)という段階がある。意識に上ったもの、口に出したいものを声に乗せる。その後の成長の過程にある学校教育では、母語の他に少なくとももう一つの言語を学習することが要求され、効率的に学ばせるためにすでに構築された言語体系を与えられて「学習」させられる。語学に対する苦手意識はこのような中から生まれてくる。原点に戻って「好き」で「楽」に覚えられるものから第二の言語に入っていこうというのが、この教材のコンセプトである。「自分流」とはそのようなコンセプトを指しており、「好き」な物(またはカテゴリ)を選んで、英単語スペリングを練習する教材である。学習者自身が「このように学べたら楽だ」と考えるやり方を形にしているという意味で、まさしく自分の学習スタイルの主張である。ここで重要な役割を果たすのが、自分で集めた「好きなもの(画像)データベース」で、現在は制作者の作ったデータベースであるが、今後これが「自分なりのデータベース」を作り、検索によって「自分なりの練習教材編集」が可能になり、それを「多くの学習者が共同利用」できるようになれば、それこそ「自分流」から「自律学習」教材が生み出されることになる。このような発想は、現在同時多発的にさまざまなところで見られるようになっており、今後の教材作成の主流は、これかもしれない。

337 まとめ

 以上のように学習者側からの教材開発のアイディアは尽きることがない。実現を可能にする技術には時として壁が現れるが、時を経てみるとそれもいつの間にか克服されているということもよく経験する。大事にしたいのは発想力、オリジナリティであり、結局は自ら思うところに従って突き進み、怯まず弛まず一歩一歩前進するということではないだろうか。

 

34 ドイツ語部門:藁谷郁美、太田達也

ドイツ語部門では、藁谷・太田・ラインデル合同研究会のメンバーからなる「SFCドイツ語教材開発研究プロジェクト」が、今年度は以下のような活動を行った。

341 携帯電話対応Web単語帳 Multi Record の改良・運用・評価

20083月に総合政策学部を卒業した増子宗雄と、同じく20083月に環境情報学部を卒業した中西令が開発した携帯電話対応Web単語帳Multi Recordを、今年度はさらにiPod touchiPhoneでも利用できるよう、技術面およびデザイン面での改良を行い、新たにMulti Record Version 2.0を開発した。

Multi Record Version 2.0の主な特徴は、次の通りである。

1) トピックごとに自分の単語帳を構築できる。

2) 携帯電話のみならず、iPod touchiPhoneでも利用が可能である。

3) 他の学習者の単語帳を閲覧することができる。

4) 特定の単語帳をグループ化できる「コミュニティー機能」がある。

5) 四択クイズなど豊富な練習機能つきである。

6) パソコン上で入力できるすべての言語を表示させることができ、多言語学習に対応している。

Multi Recordは現在、ドイツ語インテンシブコース、ドイツ語ベーシックコース、フランス語インテンシブコース、フランス語スキルコース、スペイン語インテンシブコース、中国語インテンシブコースの履修者に対して公開しているが、プロジェクトでは本システムの評価を行うため、2008年春学期にアンケート調査(ドイツ語インテンシブコース1, 2, 3、ドイツ語ベーシックコース、中国語インテンシブコース1、フランス語中級クラス)およびインタビュー調査(ドイツ語履修者)を実施した。その結果、Multi Recordの使用が利用者の学習スタイルに及ぼす影響(紙媒体のみの学習から、紙媒体とデジタル媒体の併用というスタイルへの移行など)や、語彙学習に対する意識の変化(これまで意識されていなかった語彙学習が意識化されるなど)が明らかになった。また、モチベーションの面でも、学習量が具体的な可視化によって達成感につながるなど、ポジティブな影響が見てとれた。一方、「コミュニティー機能」は当初期待されたほどには利用されにくいという実態も明らかとなった。

今後は、個々の学習者へのフィードバック機能や復習の自由設定機能、マルチメディア機能などを追加するとともに、より多様な言語学習者に利用者層を広げていくことを考えている。

 Multi Record 2.0トップ画面(iPod touch

342 d-Phoneの開発および運用

本プロジェクトではこれまで数多くのWeb教材および携帯電話対応、iPod対応の教材を開発してきたが、今年度はこれらのうち主要なものをiPod touchiPhoneでも利用可能とするために、技術面およびデザイン面での改良を行い、あらたに「d-Phoneシステム」を開発した。


 d-Phoneトップ画面

 

 動画教材配信画面

 


iPod touchおよびiPhoneの特徴であるタッチパネルの特性をいかし、指での直感的な操作に対応したインターフェイスとなっている。現在のところ、d-Phoneで利用できる教材は以下の通りである。

l           d-PodPodcastingによる動画教材配信)

l           d-rama(授業で履修者が作成した4コマ漫画を動画化しPodcastingで配信)

l           発音導入コース(動画つき発音練習)

l           名詞性当てクイズ(日本語を介さず単語の意味と画像を直結し、名詞の性を覚えるクイズ)

l           Multi Record Version 2.0(前項参照)

 

343 XY-Zimmerの開発・運用・評価

環境情報学部4年の柿沼緑は、仮想空間でドイツ語を学ぶウェブ教材XY-Zimmerを制作し、そのデモ版をドイツ語履修者に試用してもらい、評価をとった。XY-Zimmerでは、写真をコラージュして作られた空間にさまざまな仕掛けが隠されており、学習者がそれらを見つけていくことでストーリーが展開していきく。ストーリーはすべて音声によるもので、文字は表示されない。これは、文字以外の視覚情報を活用しつつ耳で理解し、それに応答する能力を鍛えることを主眼としているからである。対象は、ドイツ語インテンシブコース初級1 修了者およびドイツ語学習初級者を想定している。インテンシブコース初級1の指定教材である “Modelle 1 neu”(三修社)で学習した会話は、そのビデオ教材の中で完結しており、そこでの発話が学習者に向けられることはないが、XY-Zimmerでは、登場する「クレー」(カラスのキャラクター)の言葉が学習者に向けられ、学習者はそれに応答することが求められる。これにより学習者は能動的に会話に参加する疑似体験ができる仕組みとなっている。例えば、画面上の絨毯の写真をクリックすると、「何色がいいと思う?」という質問がクレーからドイツ語で出される。これに対し、学習者には5つの選択肢(「赤はどう?」   「青がきれいだと思う。」「私は黄色が好きだな。」「茶色はどう?」「緑がいいよ。」)が音声で流れる。学習者が5つの中から1番いいと思う返事を選ぶと、絨毯の色が選ばれた色に変わり、その色に対してクレーが感想を言う(「ちょっと強すぎないかい?」「あぁ、これはぼくのお気に入りの色だ」「明るくなったね」「シックだね」「ちょっと古臭くない?」)。このようにインタラクティブな会話が展開していくのがXY-Zimmerの特徴である。

 

また、XY-Zimmerでは、語彙を学ぶこともできる。例えばクレーの部屋にはたくさんの家具や食べ物、おもちゃが置いてあり、これらはすべて Modelle 1 neu”で学習する単語である。学習者が興味のあるオブジェクトをクリックすると、クレーがその名前を音声で教えてくれる。XY-Zimmerで学習者が遊んでいるうちに、授業で習った単語を目で見て耳で聞きながら復習できることが狙いである。

XY-Zimmerはあえて、教材らしくないデザインにしてある。絵本的なストーリーを盛り込み、学習者が遊び感覚で利用できるようにしてあるが、これは学習者の好奇心を誘発し、ドイツ語へのモチベーションにつなげるのが目的だからである。また、XY-Zimmerは写真をコンピューターの中で組み立てて作った仮想空間だが、2Dの写真をディスプレイに表示する手法に比べて視覚的に立体的であり、よりリアルな疑似体験ができるようになっている。

 

35 スペイン語部門:寺田裕子

掲示板システム」

スペイン語では、インテンシブ1期の履修学生を対象に作文添削のためのウエブを利用した掲示板システムを立ち上げている。2008年度は、ベーシック3の履修生も対象として増やし、本格的に教材として、コースの一部に取りくみ、成績評価の一部にみなした。

掲示板システムとは、スペインマドリッドのコンプルテンセ大学と、バルセロナのバルセロナ自治大学で、日本語を学ぶスペイン人学生と、SFCのスペイン語履修生を、グループに分け、両者がスペイン語と日本語で作文を書き、お互いに母語の作文を添削しあう、という活動である。

今期は、2009年の2月に、初めてバルセロナ自治大学で、インテンシブ2期を開講する。それを記念して、自治大学で、SFCの学生が作成したDVDを上映し、プレゼンテーションを企画している。そのために、SFCの学生が作るDVDの説明文のスペイン語を、掲示板で訂正してもらい、また、内容についても、両国の学生の間で議論を行った。つまり、スペインの大学生とSFCの学生とのグループワークである。以下では、おもに、システムに焦点をあてて報告する。

 

351 掲示板システムの要件         

活動目的にふさわしい掲示板のシステムについて検討を行い、日本語およびスペイン語で情報交換を行うためのシステムの要件として、次の2つの項目を定めた。

第一の要件は、利用者が気軽に読み書きできる画面構成・入力方法を持ったシステムであること。一口に「電子掲示板」といっても様々な形式があり、活動の規模や性質に応じて使い分ける必要がある。選択を誤ると利便性を損ね、利用者がシステムから離れてしまう恐れがある。したがって、利用者にストレスをかけないシステムを慎重に探す必要がある。この点については後に詳述する。

第二の要件は、日本語とスペイン語の両方で読み書きできることである。情報技術の国際化の流れが浸透しつつあるとはいえ、いまだに多くのシステムは特定の言語に依存した設計となっている。その場合、いわゆる「文字化け」の現象が発生する。語学教育のために導入する以上、システムがスペイン語も日本語も正しく処理できることは極めて重要である。

第一の要件を満たすシステムを見つけるための準備として、活動の内容と掲示板の形式の関係についてまとめておく。掲示板の形式は、表示する内容、表示の単位の2つの面から分析することができる。まず、表示する内容としては最初から発言の文章自体を並べて表示するもの(「伝言板型」)と、タイトルや投稿者といった見出しの一覧を最初に表示するもの(「ツリー型」)の2つに大きく分類できる。伝言板型は小規模の活動に、ツリー型は比較的大規模な活動に向いていると考えられる。

また、表示の構造としては、一つの発言を単位として時系列に並べる形式(「シングルスレッド式」)と、発言-返信という流れをひとまとまりにして表示する形式(「マルチスレッド式」)に分類できる。シングルスレッド式は雑談調の会話に、マルチスレッド式はより形式的な会話に向いていると考えられる。

この分析を踏まえて導入すべき掲示板の形式を検討した。活動を始めた時点では1グループの単位は3人と小規模であった。さらに、会話は、発言-返信(すなわち答案-訂正)という流れが重要である。したがって、表示する内容は伝言板型、構造はマルチスレッド式という形式がふさわしいと考えた。

以上の考察を元に、実際に導入するシステムを調査し、導入したのは、Joyful Note UTF版(http://download.bjkoro.net/index.php?mode=open&cate=0&no=11,  バージョン1.95, 以下「Joyful Note」と呼ぶ)という掲示板ソフトウェアである。     

このソフトウェアの特徴は以下の点である。

(1)形式は伝言板型、マルチスレッド式

(2)文字コードにUTF-8を一貫して使用しているので、多言語処理が可能

(3)オープンソース(無料かつ改変可能)

(4)メニュー(「新規投稿」、「名前」といった表示)は日本語

(5)画像の投稿が可能

Joyful Noteをスペイン語研究室の共用サーバにインストールした。実際に設置する前に、メニューの語彙の多言語化といった改変をソフトウェアに加えた。グループ数分をインストールして、学生に向けて公開した。公開にあたってはベーシック認証を用いて、外部者からのアクセス制限を加えた。

352 発生した問題

システムを運用する過程で発生した問題点を2つ報告する。

一つ目は、書き込んだはずの投稿が反映されない、という現象がしばしば起こった。その原因は、投稿がシステムによって「スパム」(迷惑投稿)だと判断され、投稿が捨てられていたことにあると分かった。Joyful Noteは特定のキーワードを含む投稿を迷惑投稿と判断する機能を持っている。そのキーワードの中に"ambien"(睡眠薬の名前)があった。一方で利用者たちは投稿の中にしばしば"tambien"(スペイン語で「〜も」を表す単語"también"の誤綴り)という語を使っていた。そのために多くの"tambien"を含む投稿が反映されないという現象が起こったのである。我々はJoyful Noteの迷惑投稿削除機能を無効にすることでこの問題を解決した。

二つ目は、そもそも文字入力ができないという問題である。スペインの学生からは「日本語が入力できない」、日本の学生からは「スペイン語が入力できない」という相談を多く受けた。この問題の原因は我々のシステムとは関係はなく、学生たちのPCの環境設定にある。このような問題に対して我々はメールで直接対応していたが、特にスペイン側に対して、文字だけだと相手のPCがどのような状況にあるのか把握するのが困難で、日本側の対応にも限界があった。そこでスペイン側の学生の中で技術に詳しい人に協力を要請することによって、この問題を解決することができた。

353 システムの評価

3531 アンケート調査より

後のアンケートで、システムに対する感想を学生から得た。その中で特徴的なのは、掲示板の形式の改善を求める意見の多さであった。以下に一例を挙げる。

「掲示板にレスがたくさんつくと、ちょっと見にくくて返答しにくくなります」

「もう少し秩序だて、より分かりやすい構造にすべき」)

「ブログのように、見出し(発言の題名)だけ別に表示されれば見やすくなるかと思います。」                                    「テーマの一覧を付けた構成に変えるべき」

このように、同じような意見やアドバイスを日本とスペインの両方から受けた。アンケート結果から分かるように、我々が導入したシステムは「利用者が気軽に読み書きできる画面構成・入力方法」という第一の要件に関しては失敗したといえる。

3532 考察

適切なシステムの導入に失敗した原因は、途中でグループの人数が変わったのに、それに合わせて掲示板の形式を変えなかったことが挙げられる。最初、3人のグループを想定して設計したシステムであったが、途中からは同じシステムを12人で使った。今回導入した伝言板型のシステムに対して12人という人数は過密であったと考えられる。具体的には、一つのトピックに対して多くの返信がつくので会話の流れを追いづらい、多くのトピックが同時に立ち上がるので現在のトピックの一覧を見渡しづらい、といった問題があったのだろう。掲示板活動の運営者は、グループの規模に応じて柔軟に掲示板の形式を変える必要がある。

今回の実践では、1グループが12人の時には伝言板型の形式は不適当であるという知見が明らかとなった。我々は、伝言板型よりもツリー型のほうが大人数での活動に適しているという仮説を立てている。そこで今後は、グループの人数を変えずに、掲示板の形式をツリー形式に変えることによってこの仮説を検証し、さらに多くの実践を重ねた後、「このような特徴のグループに対してはこのような形式のシステムがふさわしい」というより一般的な見解を導き出していきたい。

354 システム面での展望

その他システム面の展望としては、日本とスペインでの技術スタッフの協力体制、活動の定量的評価のための基盤整備といった運用技術の洗練に加えて、学生間でお互いのプロフィールを交換したり、簡単に、動画や音声などのマルチメディアを投稿できたりする機能面での強化が挙げられる。

 

(以上、加藤(2007)の一部を加筆・修正した。文責は、寺田裕子)

加藤貴之・寺田裕子他「WEBを利用した日本語作文学習と指導の実践報告「掲示板」(forum)上での遠隔(スペインと日本)コミュニケーション」2007)『ヨーロッパ日本語教育学会報告書

 

以上

 

 



[1] http:www.google.com/notebook/

[2] http://jp.xoops.org/

[3] http://www.stanford.edu/group/dschool

[4] http://www.instituteofplay.com/node/103

[5] http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20081008/316361/