2008年度 学術交流支援資金報告書

電子教材作成支援

 

3-1 ネットワーク産業論

 

                           総合政策学部

                             國領 二郎

概要

 

昨年度より継続して、電子教材のデータベース構築を進めている。専門職養成教育を行う上で有効性が証明されている事例討論を行うための教材(一事象あたり30ページ程度のもの)を開発した。2008年度の授業でもこれらの教材を授業内討論の材料として使用、また2009年度以降の授業でも使用する予定である。特に、SFC-Global Campus で公開されている授業(ネットワーク社会の構築【春学期】、ネットワーク産業論、Policy Management ll【秋学期】)においては、教材の受け渡しに関する利便性の向上には計り知れない貢献をしている。 上述の授業のうち、秋学期のネットワーク産業論とPolicy Management ll e科目にもなっている。

 

同時にこのような事例を集めたデータベースを開発し、教材を有効に利用できるシステムを構築した。現在クリエイティブコモンズライセンスによる電子教材の配布を開始している。サイトアドレスは以下である。

   http://case.sfc.keio.ac.jp/

 

 

2. ネットワーク産業論においての取り組み

 

開発した事例は以下の2事例である。この事例を授業教材として、秋学期の「ネットワーク産業論」において実際に使用し、討論の材料とした。同時に、電子版として保存し、國領研究室ケースとしてデータベース化し、公開している。

春学期の「ネットワーク社会の構築」では過去に同様に開発した教材を使用し、データベース化した教材は、来年度の授業でも使用予定である。

 

「ロフト」

 

ロフトのサプライチェーン設計における意思決定を行うケース。大型店、中型店、ミニロフト、コンパクトロフトの店舗フォーマットを持つロフトは、2007年から小型店であるミニロフトとコンパクトロフトを重視する店舗展開戦略を取り始めた。本ケースでは、この店舗展開戦略がサプライチェーンに及ぼす影響について考える。また、生活雑貨というロフトの扱う商材が同社のサプライチェーン設計に与えている影響についても同時に考える。

 

emobile

 

インターネット通信ビジネスに参画したベンチャー企業、イーモバイルの沿革、現状と今後取るべき課題について考えるケース。(英語)

       

 

3. 電子教材のデータベース化およびクリエイティブコモンズライセンス よる電子教材の配布

 

ケース教材を電子版として保存し事例データベースを作成した。 教材用事例の電子版データベース作成のメリットは以下である。

 

1.        経済性

小規模出版となるため通常の紙媒体による配布では印刷コストが大きくなるものを電子化することによって、安価に配布できる。

 

2.        機動性

最新の事象を速やかに教室での討論用に供すことができる。技術の持つ、社会的、経済的意味などについて討論を行う上では、実社会の動きに密接に関係する教材を継続的かつ機動的に提供する必要があり、データベースによる配布がふさわしい。

 

3.        遠隔教育などでの活用可能性

遠隔教育システムによって他大学や外部関係者まで討論型授業に参加していただくことには大きなメリットがあるが、そのような授業を実施するにあたっての教材配布手段として極めて有効である。実際に、「ネットワーク産業論」「ネットワーク社会の構築」、「Policy Management ll」は、GCにて配信されe科目にもなっているので、教材がデータベースとして公開されていることは、授業を進めるにあたって極めて有効であった。

 

このプロジェクトでは、著作権を執筆者から買い上げ、CNSネットワーク上に國領研究室責任のサイトを構築し、非営利育目的の使用に対しては無償で電子的に公開することとした。 ただし営利的な教育機関に対しては有償での教材販売を行いうるような体裁で公開している。

これらの教材は、可能な限り自由な利用、流通を目的とし、教材に添付されたクリエイティブコモンズライセンスの下に公開されている。このライセンス下で公開されたケース教材は、営利企業内での教育研修や、非営利組織での有料研修など、お金が発生するアクション以外においては、非営利利用でのルールを守る限り、自由に本作品を複製、頒布、展示、実演することができる。また営利的利用の場合も、利用にあたっては、教材のダウンロードから印刷、利用方法等全て利用団体に任される。利用方法、及び利用部数を自発的に申告してもらうことで、物理的交換に束縛されることなく、自由な流通、利用を促進することが可能となる。

 この取り組みは電子教材の、配布のあり方の社会実験でもある。学外からも使用需要が現れているので、どのような利用がなされるかデータを取り、報告を行っていく準備中である。

 

教材の数が増えてきたため、今年度はサイトのリニューアルを行ってきた。ネットビジネス、まちづくりなど、公開ケースを分類し見やすい形で新たに公開する。年度末までにきっちりと作り込み、来年度からは新しいサイトで、より使いやすい形で公開していく。