2008
年度学術交流支援資金報告書

電子教材作成支援:体育23(フェンシング)

環境情報学部 教授      佐々木 三男

総合政策学部 講師(非常勤) 伊藤 裕一

 

 

はじめに

 本電子教材の狙いは、2006年度より新規開設された体育科目であるフェンシングにおいて、授業の理解促進を助けるホームページを作成することである。

 ホームページ自身は、2006年度以降の学術交流支援資金の支援を受けて、アウトラインは完成してたが、コンテンツの充実、情報のアップデートといった点で、まだまだ課題が残されていた。

 本年度では、特に映像コンテンツの充実と、現実の授業における工夫とを連動させるような課題を考え、実施するに至った。

ホームページの構成


 本プロジェクトを実施するにあたり、新たにCNS共有作業領域を申請し、"fencing"というドメインを取得した。従って、本プロジェクトのページはhttp://fencing.sfc.keio.ac.jp/index.htmにトップページがある。

 作成したホームページは、トップページ以下に以下のページがリンクされている構成になっている。これは2006年度に作成した物から変更していない。

授業紹介

授業履修について、時間、持ち物の案内など。サブページに授業風景の写真や映像が閲覧できるようになっている。

このHPについて

学術交流支援資金によって開設されている旨を記述。関与しているスタッフについても記述する。

協力者募集

この電子教材作成のプロジェクトに協力してくれる人の募集。

フェンシング用語集

50音順、種別順に検索できる用語集。

フェンシングリンク集

インターネット上のフェンシング関連情報のリンク集。

書籍・DVDレビュー

関連書籍(主に海外)のレビュー。


また、このドメインとは別領域になるが、主要コンテンツとして授業内容を毎週記録した「コーチ日記」というブログが2006年度に作成されたが、これは2008年度にも継続された。

 

本年度の進展

・映像のアップデート
 そもそも体育の授業の電子教材において、授業内容を映像コンテンツによって示すことは非常に重要なテーマである。フェンシングというスポーツは普段目にする機会も少ないため、授業に参加する前に何らかのイメージを持ってからくること自体が少ないので、映像を提供することには大きな意義がある。また、体育全般にあてはまることだが、ある一つの技は一度見ただけではなかなかできるようにはならず、何度も見返すことで具体的なイメージを頭の中で作り上げていくことができるようになるものである。
 そのような意味から、この電子教材作成においてもっとも重要視しているのが映像コンテンツの充実である。2006年度はビデオで作成したものを、デジタル化し、ストリーミングファイルとしてホームページ上にアップロードするというものであったが、この方式にはいくつかの問題があった。まず、手間の問題である。ビデオ撮影したものは、ストリーミング形式にするまでに数回のファイル形式の変換をする必要があり、そのつど非常に大きな負荷がPCにかかることになってしまっていた。また、それぞれのファイルの容量も非常に大きなものになり、複数のファイルや長時間のファイルを見せることが難しかった。この問題を解決しようとするとどうしても画質を劣化させる必要がある。しかしフェンシングのビデオの場合、もっとも重要な剣の動きが、劣化したストリーミングファイルでは見るのが難しい、という決定的な問題を抱えてしまっていた。

 今年度は、このような問題の解決のために、あくまで試作的にではあるが、外部の動画共有サイト「you tube」を利用した動画の閲覧機能を付与することとした。結果的には現段階では非常に成功し、画質の良い動画が合計で1時間分近く閲覧可能なサイトとすることができた。現在までの閲覧数は8000回を超えており、非常にマイナーな種目でありながら、学内にとどまらず、外部に対しても情報発信ができていることがわかる。
 映像の内容は、授業の際に録画したもので、フェンシングの内容を紹介したもの、フットワークや剣の動作それぞれを解説したもの、さらには実際の試合の様子などが中心である。従って、履修する以前の学生が授業の雰囲気を知る上で参考にすることもできるとともに、履修した学生が予習、復習に用いることもできるようになっている。
 このような映像コンテンツは、日本語で提供されている者としては日本では非常に珍しいものであることも分かった。フェンシングをしている映像等は多く紹介されているが、解説をしているものはほとんどない。その意味で、単に自分たちがフェンシングをしている映像ではなく教育的なコンテンツを提供することができたことは、非常に意義がある。

SNSの活用
 履修生と話をする中で、要望が大きかったものの一つが、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の活用であった。現在日本ではmixiを中心としたSNSが活発であり、特に学生間での利用は日常的になっており、授業以外での場でフェンシングのことを考えたり質問したりといった場としてSNSの持つ可能性は大きいように感じられた。
 そこで本電子教材のドメインとは別に、mixi上にコミュニティとして当フェンシング体育授業のページを作成し、学生間のコミュニケーションや質問の受付等ができるようにした。結果数名ではあるがコミュニティに参加する学生がおり、またさまざまな書き込みをしてもらった。

 

今後の課題

今年度も、授業と連動してサイトを運営していく上で、いくつかの課題が残された。

・映像コンテンツの拡張
 現在サイトで閲覧可能な映像はおよそ20程度であり、特に授業履修前に授業の様子を知るうえでは参考になると思われる。今後はより実践的なコンテンツを揃えていくことが、継続的に履修者が見る上では重要になると思われる。
 また、履修生からは一つのイメージとして世界選手権やオリンピック等の映像を繰り返しみたい、という希望があった。これまでは授業の最終日に基礎的な知識と技術を習得した有志の履修者と鑑賞会を開催していたのだが、より広い層の履修者からも、そのような高いレベルのスキルをみたいという希望が強かったことが分かった。
 このような試合の映像は著作権上の問題があるので、ウェブ上での公開は難しいが、動画サイト等でアップされているもので、そのような法的な問題をクリアした映像を、SAの方々と協力して探すことなどで、情報を提供することは可能であると思われる。
 また、そのような映像コンテンツが豊富になって来た後は、フェンシングのレベル別などで映像の検索ができるよう、整理方法を工夫することで、見やすい電子教材を作成していきたいと考えている。

SNSの活用について
 SNSについては先述の通り、現在はmixiのコミュニティとして開設しており、10名弱の利用者がいる。しかしこれは総履修者の1割程度の数であり、それほど活性化しているとはいえない。
 履修者からの要望では、試合結果を書き込むことで、自動的に集計され、ポイントランキングのようなものが発表される、といった授業での頑張りが反映されるようなものがあると励みになる、といった声が多く聞かれた。
 このような機能を持ったインタラクティブな電子教材は、映像の閲覧に比べより参加型となっており、学生から見て非常に楽しいものとなることが予想されるが、一方で技術的な困難も存在している。
 来年度以降機会があれば、技術的にも作成可能な学生スタッフと協力して参加型の電子教材の作成を課題としてみたい。

                                            以上