これまでの活動
研究代表者は、「比較体制論」、「旧ユーゴスラビアにおける体制研究」、「中東欧諸国の体制転換研究」、「EU拡大の中東欧諸国へのインパクトに関する研究」、「超地域・超領域のガバナンス」と、体制の変革プロセス(「体制転換」プロセス)と、そこにおけるガバナンスのかたちについて、研究および教育を通じて多くを提示してきた。
なお研究代表者は、2005年度学術交流支援資金により、グルカ教授と共に「制度変革・政策移転の理論と実証に関する国際共同研究」を実施した。同研究は、ウクライナを事例にEU東方拡大に伴い新たに隣接または周辺地域となる国々における制度変革・政策移転に関して理論面と実証面から分析したものであり、2005年11月のSFC
Open Research Forumにおいて、国際シンポジウム「知の底力は時空を超えるか−地域変容の諸相を抉る−」を開催し同問題について具体的な議論を行った。
また、2006年度学術交流支援資金により、グルカ教授、ロガチ教授とともに「超地域・超領域のガバナンス研究」を実施、ウクライナを事例に、欧州および日本からの地域戦略および制度・政策・規範(価値)の普及の観点から分析を実施した。
くわえて、2005年度と2006年度には、グルカ教授、ロガチ教授、アルトマン博士らとともにサントリー文化財団「人文科学、社会科学に関する研究助成」をうけ、「平和的な地域変容の分析モデル構築に関する国際共同研究」を実施し、地域変容という概念からバルカンや中央アジア、コーカサスといった地域の平和構築・体制転換について考察するための分析モデルの構築を実施した。
本プロジェクトは、研究代表者が実施してきた、以上のような共同研究を実施してきた国内外の、旧ソ連諸国、南東欧諸国、中東欧諸国の専門家とともに、多様な地域および国家における「体制転換」と、そこにおける「ガバナンス」のかたちを提示することで「体制転換とガバナンス」研究のフロンティアとして寄与することを意図している。
活動報告
1. International Political Studies
Association 21st World Congress at Santiagoでの報告。
International Political Studies
Association (IPSA)の第21回年次総会(於、サンチャゴ、チリ)にて、パネルセッション"Water
Governance in Transition the Possibilities of Policy Transfer, and Value
and Norms"をグルカが司会、市川が討論者を務め開催した。報告者は、本プロジェクトから稲垣がThe Water Management and Governance of Tajikistanと題し中央アジアの水資源問題について体制転換論の視座から報告を行なった。そのほか、ポーランドと韓国から研究者が参加し報告を行なった(2009年7月15日)。
2. ウズベキスタン政策研究センターとの国際シンポジウム開催
本プロジェクトの代表である香川と稲垣、市川、中村が中心となって慶應義塾大学世界を対象としたニーズ対応型地域研究推進事業「中央アジアにおける環境共生と日本の役割」とウズベキスタンの政策研究センター(Center for Political Studies)が共同開催した「エネルギー安全保障と日本の役割―環境共生型のエネルギー開発とパートナーシップ―」を2009年8月31日に慶應義塾大学三田キャンパスG-Sec Lab.にて開催した。経済産業省、日本経済新聞社、国際交流基金、JOGMECなどの後援を受けた当シンポジウムは、清家慶應義塾塾長、塩川正十郎・東洋大学総長、阿川尚之・慶應義塾常任理事も参加、またウズベキスタンからもマジトフ・ウズベクネフチェガス第一副総裁、ルスタモフ・CPS副所長をはじめ8名が参加した。また、100名を超える一般参加者が参加した。同シンポジウムは、体制転換期にありながら、エネルギー安全保障上重要性を増す中央アジアへの理解を深める場となったとの評価を受けている(シンポジウムの詳細はこちらを参照)。日本との関係を理解する上で有用な場となったの評価を受けている。
2.最終講義「体制の収斂?」
2010年2月27日に慶應義塾大学三田キャンパス西校舎にて本プロジェクト代表である香川の最終講義を開催した。同講義は、「体制の収斂?」と題し、本研究プロジェクトの根幹ともいうべき収斂論について総括する計画である(2010年2月26日現在)。
今後の課題
体制転換論似ついての、邦文研究は十分といえない状況である。そのため、本研究活動によって得られた成果を冊子として配布する価値は十分にあると思われる。くわえて、本研究プロジェクトの参加メンバーは長年にわたり共同研究の実績がある。本プロジェクトが開催する公開シンポジウムは、その成果を公開する場であるとともに、その成果を活字媒体化し広く頒布することで、「体制転換とガバナンス」研究の今後の発展に寄与することが可能となる。
少なくとも本研究メンバーのうち、香川、家本、稲垣、市川の4名が執筆する『体制転換とガバナンス』と題した書籍が2010年内に出版予定である。今後は、国外メンバーも加えた型での書籍化を進める必要性がある。s
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