ヒトの運動を計測する技法を学ぶ,「身体運動解析」を設置して担当として4年目を迎えることとなった。スポーツ科学・人間工学,リハビリテーション,さらにはヒューマンインタフェースなどの分野では,ヒトの運動を計測することが大前提であり,そのための技法を学ぶ科目として本授業は実習形式で運用している。これまでもSFCメディアセンターには,研究・教育用にモーションキャプチュア装置も導入されているが,これを用いた体系的な授業もなかったために,こうした最先端設備を用いた授業を構築するチャンスにも恵まれたといえる.これまではこうしたヒトの運動計測を学生自身が験者・被験者となり実践することがなかったために,ときには験者、ときには被験者という立場での授業資料が必要とされている.運動計測には,モーションキャプチュアだけではなく,映像解析法,センサ計測法,生理学データ計測(筋電・心電図や血中乳酸など),官能検査法,など幅広く多岐にわたる計測技法が存在し,これらを知っておかなければならない.さられに得られたデータの統計的検定,時系列解析などの数学的な処理が待ち構えているため,本授業はデータ取得だけではなく,ナリッジスキルサイエンスで学んだ知識を実際の計測データを使って検証する場ともなる.
これまでの3年間で以下の内容での授業資料(テキストおよび実習教材)を作成した。
●(生理学)基礎解剖学と身体計測法
●(生理学)心拍数と血中乳酸値計測
● (生理学)表面筋電図計測
●
(バイオメカニクス)写真撮影・重心計測実習
●(バイオメカニクス)高速度カメラ実習
●(バイオメカニクス)三次元映像解析実習
●(バイオメカニクス)モーションキャプチュア実習
●(バイオメカニクス)フォースプレート計測実習
●(バイオメカニクス)加速度センサ計測実習
●(バイオメカニクス)GPS運動計測実習
●(バイオメカニクス)ひずみゲージによる握力計製作実習
本年度は、上記にくわえて近年急速に広まりつつある、マイクロコンピュータと無線ICを使った運動計測装置の製作実習を新たにくわえ、履修者自らがオープンソースのソフトウェアとオープンハードのハードウェアを使って自分専用の運動計測装置を作成する実習内容のための教材作りを目指す。
本研究の目的は,
新規科目「身体運動解析」の新しい電子教材として安価な市販電子部品を使って学生自らが作る無線計測システムの開発と運動計測を題材とした応用事例を作成することである。
(ア)
市販品電子パーツで作る、教材用無線センサデバイスの開発
(イ)
運動計測用ツールと解析ソフトウェアがインストールされた、学生用Linux
USBディスクの製作
(ア)現在、仰木研究室で取り組んでいる無線運動計測を一般市販品で、且つ安価な電子部品によって構成し、これを授業内で各履修者が限られた時間内で計測までたどり着けるようなものとして教材作りを進める。
具体的には、Atemel社製のAVRマイコンである、ArduinoとZigBeeモジュールアンテナを組み合わせることで、無線計測部分を構築し、運動計測用センサとしては、加速度センサやジャイロセンサなどの慣性センサ、およびひずみゲージなどの力覚センサを入力情報とするものを開発する。
履修者がこれを授業内に達成できるように、
●
ハードウェアとソフトウェアのインストール手順
● センサデータの取得法
● センサデータの表現法
● センサデータの蓄積法
についての電子教材を製作した。
(1)授業資料(PowerPoint形式
or PDF形式)
http://web.sfc.keio.ac.jp/~ohgi/Research/2010/DenshiKyozai/DenshiKyozai2010_ohgi.pptx
http://web.sfc.keio.ac.jp/~ohgi/Research/2010/DenshiKyozai/DenshiKyozai2010_ohgi.pdf
(2)ソースコード
http://web.sfc.keio.ac.jp/~ohgi/Research/2010/DenshiKyozai/Arduino_program.html
http://web.sfc.keio.ac.jp/~ohgi/Research/2010/DenshiKyozai/processing_Source_code.html
(3)計測データの実例
http://web.sfc.keio.ac.jp/~ohgi/Research/2010/DenshiKyozai/test.csv
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上記Webページに、Web閲覧用ページへのリンクと、コンテンツすべてのダウンロード版へのリンクが掲載されている。
(イ)については,Linuxのディストリビューションである,UbuntuをUSBフラッシュメモリにインストールし,開発環境/解析ソフトウェア/オフィスツールなどを整えたフラッシュメモリ型の実習用メモリを準備した(必要学生に配布したうえで,コピーしたもので実習する事を想定)