2010年度 学術交流支援資金(電子教材作成支援)

 

ITと学習環境 報告書

 

安村通晃(環境情報学部)

倉林修一(環境情報学部)

藁谷郁美(総合政策学部)

國枝孝弘(総合政策学部)

 

 

I インタラクションデザイン部門報告書

 

                         安村通晃

 

1. はじめに

 2010年度インタラクションデザインラボ(安村研)では、(1) まなび展の開催、(2) ORF2010での展示とセッション実施、および、(3) 三宅なおみ教授の特別講演、の3つを実施した。以下、それぞれ順に説明する。

 

2. まなび展の開催

 インタラクションデザインラボ(安村研)では、2004年度の家展から始まり、電車展、カフェ展、おしゃれ展、時間展、ワークプレイス展と毎年1回独自の展示会を開催してきた。2010年度は、「まなび展」を東京自由が丘ギャラリー・カーサタナにて916日(木)〜18(土)の3日間開催した[1]。これは従来型の学校教育の留まることなく、新しい時代に向けての、能動的で協調的な学びを探求する試みであり、その中でインタラクションデザインの方法論がどこまで使えるかを模索するものである。3日間で、毎日1回のトークセッションを実施し、17作品を展示した。3日間で合計200名を超える参加者があった。

 

2.1 トークセッション

トークセッションには次の3名を招待し、安村と対談した。

(1) 9/16: 美馬のゆり(はこだて未来大学教授、元科学未来館副館長)

 「科学館の展示を通したまなびの実践から」

(2) 9/17: 久保田雅人(NHK教育テレビ「作ってあそぼ」のワクワクさん)

 「ワクワクさんが語る工作の楽しさ」

(3) 9/18: 吉田和美(チームビルディングジャパン シニアファシリテーター)

 「チームビルディングにおける学びの実践」

特に、このうちワクワクさんこと久保田雅人さんは、画用紙とセロテープなどのを使って簡単な紙工作を観客みんなと一緒に作りながら楽しませてくれ、工作への興味を巧みに引き出すその演技に全員が感動していた。

 

2.2 展示作品

まなび展で展示した作品は、次の16件である:(1) Aki's 黒板、(2) Book's Marking(3) Eravox(4) JIMOTY(5) Shu-tube(6) voitwi [(5], [7])(7) Your Face Now!(8) 音の輪、(9) クイズ国物語り、(10) つみきんぐりっしゅ、(11) なんでも天秤、(12) ぴかっトート、(13) まねびール、(14) めもサーチ、 (15) 予感テーブル、(16) 楽書き。

ここでは、特に注目を集めた、なんでも天秤、Aki's黒板、Book's Marking、および予感テーブルについて簡単に説明する。まず、なんでも天秤は、世の中のいろいろなものの大きさ、重さなどをその場で比較してくれる「天秤」である。次に、Aki's黒板[6]は、タッチパネル式のディスプレイにチョークに見立てた木片で文字を書くとあたかも本物のチョークで書くような感触が得られるもので、手元に持つスマートフォンで、文字の色などもすぐに変更できるもの。Book's Marking[10]は、本にちなんだ場所にコメントを書くと本と場所のリンクがその場でできるものである。最後に、予感テーブル([8], [9])は、Twitter上にあるイベント情報を抽出して、本物のテーブルにあるコップが揺れることにより大物の講演などのイベントが事前に分かると言うようなものである。いずれの作品も学生達の斬新なアイデアがほとばしり出た良作品ばかりである。

 

3. ORFにおける展示とトーク

1122日〜23日、東京六本木アカデミーヒルズで行なわれた慶應SFC ORF (Open Research Forum) には、インタラクションデザインラボ(安村研)はブース展示を行なうとともに、22日(月)12:30-13:30、ワークショップ企画プロデューサーの中野民夫さんをお招きし、安村と「違いを豊かさに!〜ワークショップにおけるインタラクションと学び」と題するトークセッションを開催した[2]1時間という時間がほんとに短く感じられるほどで、盛り上がりのうちにトークは終了した。「未来を教えるインタラクション」というテーマを掲げた展示ブースには、合計13作品を展示した。(1) Aki黒板Edu(2) Book's Marking(3) commenticker(4) Flowering Pot(5) from my body(6) HelloArrow(7) rirekipad [4] (8) voitwi(9) クリップ検索帳、(10) 自我ブリーダー、(11) ぴかっとートLite(12) モノポインタ、(13) 予感テーブルの13件である。このうち6件が、「まなび展」の作品と同一かその改良版であり、残りの7件は、ORFで初登場のものである。

 

4. 三宅なおみ教授の特別講義

12月14日に、東大教育学部教授の三宅なおみ先生にSFCに来て頂き、「協調的な学習の理論と実践〜ITを使って日本の教育をどうしたいか」というタイトルで特別講演をしていただいた (ITと学習環境」の授業の一部)。講義では、OECDが実施するPISA(学習到達度調査)の問題の妥当性から始まり、三宅先生達のグループが実践されているジグソー法(社会的構成による概念変化モデル)を用いた体験的協調学習の事例紹介[3]まで、幅広い内容での新しい学習方法論の紹介があった。

 

5. おわりに

今年度のインタラクションデザインラボでは、幅広く「学び」に関して見つめ直すと同時に、いくつかの具体的な作品づくりを通して、学びにインタラクションデザインがどのように貢献できるかの実験的試みをいくつか実施した。

 

参考文献

[1] インタラクションデザインラボ、まなび展:http://ylab.sfc.keio.ac.jp/manabi-ten/

[2] インタラクションデザインラボ、ORF2010http://ylab.sfc.keio.ac.jp/projects/2010/orf/

[3] 三宅なほみ、大学発教育支援コンソーシアム推進機構: http://coref.u-tokyo.ac.jp/

[4] 山本 伶、安村通晃、 Rirekipad: 閲覧時の状況を付加したWeb履歴サービスの提案と実装、 情報処理学会インタラクション2011 デモ発表、(Mar. 2011).

[5] 上野大樹、安村通晃、 VioTwi: スマートフォンのジェスチャー操作を用いた音声Twitterシステムの提案と実装、 情報処理学会インタラクション2011 デモ、(Mar. 2011).

[6] 秋山博紀、安村通晃、 AKI黒板Edu: 使用感とインタラクティブ性に重点をおいた電子黒板、 情報処理学会インタラクション2011 デモ、(Mar. 2011).

[7] 上野大樹、安村通晃、 VoiTwi: スマートフォンを用いた音声Twitterシステムの試作と研究、 電気情報通信学会 WIT研究会、(Jan. 2011).

[8] 藤沢和哉、元良龍太郎、安村通晃、 予感テーブル;マイクロブログのイベント情報を利用した著名人との出会い支援システム 52回プログラミングシンポジウム、(Jan. 2011).

[9] 元良龍太郎、藤沢和哉、安村通晃、予感テーブル: 著名人との出会い支援システム、 ソフトウェア科学会WISS2010 デモ,(Dec. 2010)

[10] 吉原 建、安村通晃、Book's Marking: 場所をきっかけに本と出会うためのシステム、 ソフトウェア科学会WISS2010 デモ,(Dec. 2010)

 

II動画像・音楽マルチメディアデータを対象とした検索・可視化・個人化システムの研究

 

倉林修一

 

研究成果の概要

2010年度において,倉林研究室(IMEL: Interactive Multimedia Enverimental Laboratory)では,動画像・音楽マルチメディアデータを対象とした検索・可視化・個人化システムの研究として,動画像検索エンジン,音楽検索エンジン,e-Books検索エンジン,スマートフォン専用のサーチエンジンへのクエリ入力支援機構を開発してきた.特筆すべき活動として,米国カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD) Shlomo Dubnov准教授,米国ワシントン大学ボセル校Munehiro Fukuda准教授,スロベニア・リュブリャナ大学Ana Šaša博士,マルチメディア感性検索・自動配信システムの共同研究を行い,国際的研究ネットワークの構築,および,感性メディア分析・検索・配信の実利用環境を実現した.

 

2010年度の活動報告

受賞

動画像・音楽マルチメディアデータを対象とした検索・可視化・個人化システムの研究に関する具体的なソフトウェア実装として,動画像・音楽データ対象アクティブ・感性マルチメディア配信を実現するシステム・ソフトウェアMediaMatrixを構築し(図1),データベース分野における著名な国際学会であるDASFAA 2010The 15th International Conference on Database Systems for Advanced Applications)において、Best Demo Awardを受賞し,国際的に高い評価を得た.本システムは,これまで,感性的な視点からの情報獲得が困難であったストーリー性を有する時系列メディアデータを対象として,自動的な情報獲得を実現し,今後大量に蓄積される時系列メディアデータを対象として,個人の感性的嗜好に合致する対象の選択的自動配信環境を実現する,新しいメディア情報獲得・集約の可能性を広げるシステムとして位置付けることができる.

                 [Best Demo Award] Shuichi Kurabayashi and Yasushi Kiyoki: "MediaMatrix: A Video Stream Retrieval System with Mechanisms for Mining Contexts of Query Examples," In Proceedings of the 15th International Conference on Database Systems for Advanced Applications (DASFAA2010), pp.452-455, Tsukuba, Japan, April 1-4, 2010.

 

実現システム

ネットワーク上の時系列メディアデータを収集し,時間軸に沿った印象の変化を検出し,迅速なデータベース検索および分析機能群を起動し,自動情報配信を行うアクティブDB機能を構築した.本システムは,次の3機能を特徴としている: 機能1.既存の情報資源群を変更することなく広域的なアクティブDBシステム環境へ連結する機能,機能2.既存のマルチメディアデータベースを対象としてクエリ生成演算子を適用し,マルチメディアデータを組み合わせて,自らの検索意図を的確に反映した時系列メディア・クエリを生成する機能,機能3.時系列的な感性的内容を自動的に分析し、アクティブDBにおける検索機能、情報配信機能を駆動する機能.さらに,コンテンツ印象変化の可視化技術の開発として,大量の動画を対象とした感性分析・可視化機構の設計,実装を行った.本システムは,動画像における時間軸に沿った色彩印象の推移を反映したメタデータ生成のために,動画像を任意秒数ごとの静止画像として抽出し,それら静止画像群を対象として,映像中の色彩情報を用いて感性特徴量を分析する機能を実現した.この感性特徴量分析機能では,印象を分析する時間的区間を表す単位時間の粒度を設定し,動画像における局所的な印象の変化(図2),および,大局的な印象の変化(図3)を,任意の粒度を用いて抽出することができ,動画像における感性的特徴点を抽出することが出来る.さらに,ネットワーク上で複数の利用者が,自らの感性定義に応じて,メディアデータを分析・検索するためのWebサービスを公開し,慶應義塾大学SFCにおいて運用している(http://imelab.sfc.keio.ac.jp/MediaMatrixShare/).本システムは,利用者毎に異なる色彩印象定義ファイル(色彩と印象語の関連性を定義するテーブルファイル)を格納し,利用者個人の感性に応じたメタデータ生成をオン・ザ・フライで行い,検索する.本システムを用いて、数百件の動画像データベース(各20分、全400万フレーム)を対象とした感性的嗜好に合致する対象の選択的自動配信環境を実装し、有効性の評価を行った.

 

1MediaMatrix:ネットワーク上で複数の利用者が,自らの感性定義に応じて,メディアデータを分析・検索するためのWebサービスを構築

 

2. 動画像ストリーム全体において支配的な印象特徴量の時系列変化を可視化

 

3. 動画像ストリームの特定箇所において局所的に強い相関を示す印象特徴量の時系列変化を可視化

 

4. 学習環境授業における協調学習支援システム実習実習におけるメイン画面

 

5. 学習環境授業における協調学習支援システム実習:mointainに関連付けられた画像の表示

 

6. 学習環境授業における協調学習支援システム実習実習:riverに関連付けられた画像の表示

 

 

教材開発

学習環境授業における協調学習支援システム実習実習を実施した.本実習において,学習者は,独自に定義したデータベースを用いて,他ユーザが収集したメディアデータ(画像・音楽)を,学国語学習に利用することが出来る.具体的には, Cross-Cultural単語帳を作成するために、ある文化圏の単語(word)と、画像URLを関連付けるための,サーバサイド・アプリケーションの構築方法の実習を行った.サンプル協調学習環境の動作例を図4,図5,図6に示す.

 

主要な学術的成果

         1.       Shuichi Kurabayashi, Shlomo Dubnov and Yasushi Kiyoki: "JoinSee: A Real-Time and Collaborative Hyper-Media System for Participatory Performances in the Opera of Meaning," Information Modelling and Knowledge Bases Vol. XXI, IOS Press, pp.258-262, 2010.

         2.       Ana Šaša, Marjan Krisper, Yasushi Kiyoki, Shuichi Kurabayashi, and Xing Chen, "A personalized recommender system model using a colour-impression-based image retrieval and ranking method," In Proceedings of the Sixth International Conference on Internet and Web Applications and Services (ICIW 2011), St. Maarten, Netherlands, March 20-25, 2011.

         3.       Haruka Fukai, Aya Ichinose, Shuichi Kurabayashi, and Yasushi Kiyoki, "A Media-Mashup Engine with Interactive Cross-Media Association and Personalization Mechanisms,” In Proceedings of the IASTED International Symposium on Software Engineering and Applications, pp.396-403, November 8-10, Marina del Rey, California, USA, 2010.

         4.       Munehiro Fukuda, Shuichi Kurabayashi, Jeremy K. Hall, and Yasushi Kiyoki, "Morphing Parallelization Strategy to Support On-the-Fly Video Analysis," In Proceedings of the 2010 International Conference on Parallel and Distributed Processing Techniques and Applications - PDPTA 2010, pp.541-547, Las Vegas, USA, July 12 - 15, 2010.

         5.       Jeremy Hall, Shuichi Kurabayashi, and Yasushi Kiyoki: "Multimedia Data Analysis on a Massively Distributed Parallelization Network of Anonymous Web Clients," The 2010 IEEE International Symposium on Mining and Web (MAW10), pp.615-620, Perth, Australia, April 20-23, 2010.

         6.       [Best Demo Award] Shuichi Kurabayashi and Yasushi Kiyoki: "MediaMatrix: A Video Stream Retrieval System with Mechanisms for Mining Contexts of Query Examples," In Proceedings of the 15th International Conference on Database Systems for Advanced Applications (DASFAA2010), pp.452-455, Tsukuba, Japan, April 1-4, 2010.

         7.       小池 悠佳, 倉林 修一: "エディトリアル・デザインに関するテンプレートを用いたクエリ入力支援機能を有するe-Books検索エンジン," 3回データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム(DEIM2010), 2011227日〜31, 静岡県.

    8.         島岡 , 倉林 修一: "タブレット端末を対象とした複合検索語ナビゲーション機能を有するタイピング・フリー検索機構," 3回データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム(DEIM2010), 2011227日〜31, 静岡県.

 

III 言語学習デザインプロジェクト(LDP)― ドイツ語学習環境構築 −

 

         藁谷郁美

 

 2010年度の「ITと学習環境」プロジェクトでは、ドイツ語学習環境構築に向けた活動として、1)自律学習システム全体のデザイン再考、2)個別教材作品の開発および更新、3)音声学および応用言語学それぞれの専門分野からのゲストレクチャー、4)言語学習教材開発のための情報技術スキル導入コースの実施、5)ORFでの成果報告活動を挙げることができる。

 

1)自律学習システム全体のデザイン再考

これまで、ドイツ語学習者を対象とした教材全体への入り口を、iGoogle形式に類似させた方法で作成してきた。高く評価されていた点は、学習者が自分の学習スタイルに沿った独自の画面デザインを構築できる、という独自性にあった。しかしながらその半面、学習者(利用者)に向けて提示された学習教材コンテンツへの入り口と、開発者(プロジェクトメンバー)に向けて提示された活動内容コンテンツへの入り口が同時に提示されいたことで、異なる視点が持ち込まれた構造となっていた。この点を解消するため、前者と後者のページを完全に切り分け、同時に有機的なつながりを提示できる形を模索した:http://dmode.sfc.keio.ac.jp/。今後、運用を続けていくことで、評価をとる必要があろう。

 

2)個別教材作品の開発および更新

上記(1)の再考に伴い、従来の作品内容を更新した。特に「d-map」についてはドイツ語圏海外研修参加者だけでなく、ドイツ語圏フィールドワーク参加者へも枠を広げ、同時にSFCで受け入れているドイツからの日本滞在フィールドワークの成果もここに集約させた。この作業によって、ドイツ語学習のいわゆる「教材」提供だけでなく、学習者がおこなう高いレベルでの研究活動を可視化した学習者ロールモデルの提示が可能となった。さらに「発音導入コース」については、ドイツ・ハレ大学の音声学専門家による監修のもと、集録されている語彙群が再考され、同時に音声データの再入力作業が行われている。この作業は現在もなお進行中である。

 

3)音声学および応用言語学それぞれの専門分野からのゲストレクチャー

上記(2)の音声教材開発にも参加したヒルシュフェルト(Prof. Ursula Hirschfeld教授をゲストに迎えて大学院科目「ITと学習環境」での講演および実践提示をおこなった。また、同科目では応用言語学専門家である太田達也氏(南山大学外国語学部准教授)による自律学習理論の講義、さらには「LDP研究会プロジェクト」においては実践提示をおこなっていただいた。

 

4)言語学習教材開発のための情報技術スキル導入コースの実施

研究会プロジェクトで活動する学生を対象に、言語学習教材開発のための情報技術スキル導入コースを定期的に開催した。講師は松原弘典氏(前 “Yahoo“サーバー管理担当者、現アクス“技術最高責任者、2010年度よりSFC研究所所員)である。同氏はSFC卒業生であり、在籍中は本プロジェクトメンバーであったため、言語学習教材のための情報スキルの重要性を認識しており、特にフラッシュ等の作成トレーニング、データーベース基礎、サーバー管理技術等についてサブゼミの形で進めてきた。今後も続けていく予定である。

 

5)ORFでの成果報告活動

2010年度の活動全体については、SFCオープンリサーチフォーラム2010(ORF)で成果発表をおこなった。11月22日(月)から23日(火)にかけて六本木アカデミーヒルズ40でおこなわれたこのフォーラムで、本プロジェクト(LDP)は(1)ブース・ポスター発表および(2)セッション・パネルディスカッション開催を企画し、多くの来場者を得た。

 

 

IV フランス語互恵的学習環境の構築 

 

    國枝孝弘

 

 フランス語部門では、「学生による学生のための教材制作」をモットーにして、学習者である学生本人が学習のための教材を制作してきた。

 

1)学習教材のポータルサイト化

 これまで学生によるフランス語学習教材は数多く作られてきたが、それぞれが独立したHPを持ち、教材間のリンク、および統合化がなされてこなかった。そのために、フランス語の学習環境が具体的に把握できず、アクセスの不便さが、それらの教材を用いて学習する意欲を削いできた面がある。

 そのために教材を集約できるブログページを作成した。ここでは制作した学生ごとにページをもち、かつその下層では、教材名が表示されるために、このふたつのタグから、教材を選べるようになっている。

 こうしたサイトの存在によって、学習者は、自ら教材を探しにいくのではなく、目の前の多種多様な教材の中から、自らのレベル・興味にあわせて選択をすることが可能になった。

 

2)個別教材作品の開発および更新

 上記の1)には、次の作品が収められている。

・スキットで文法を好きになろう!-学生本人がある文法項目に特化したスキットを書き、みずから演じ、会話仕立てで文法の理解をはかる教材。

・ネイティブスピーカーの速度に慣れるための学習教材-時事的な内容のフランス語をノーマルスピードで聞き、設問に答える教材。

・フランス語で聞いて、フランス語で答える!-授業中に先生が使うフランス語の指示を録画して、それに字幕をつけて、配信した教材。それによって教室内でのフランス語によるアクティヴィティを活発にすることを目的としている。

・ティーンエイジャーのフランス語 - 日本語でもそうだが、フランス語にも高校生たちが使う「若者言葉」がある。それを中心にして言語レベルにあわせた口頭表現、文章表現を学ぶことを意図した教材

 

3)番組制作に携わるゲストレクチャー

 学期中にはNHK『フランス語会話』のディレクターをお招きして、番組として教材を作るさいの意図、技術などについて討論した。25分という放送時間の構成(初級・中級)、スキットの作り方、ロケによるauthentiqueな教材の重要性などについて言及した。

 

4)学会発表

 これらの成果は第24回獨協大学フランス語教授会(2010125日)において発表を行った。