報告書

2010 年度 学術交流支援資金 (電子教材作成支援)

科目名:デジタルサウンドセオリー氏名:岩竹 徹

所属:慶応義塾大学 環境情報学部 教授


研究課題:
アート/デザイン分野に於いてオリジナルな作品を制作するには、思いついたアイディアを
実現に導くための方法が必要である。
当プロジェクトの課題は、オリジナルなコンテンツ制作を可能にする最も基本的なテクノロジーの
一つであるデジタル信号処理 (DSP) のオンライン教材を開発し、当該科目履修者だけでなく、この
知識を必要とするアート/デザイン系の学生に対して、有効なサポートを提供する事である。


研究概要
デジタルアート/デザイン分野を支えるハードコア・テクノロジーの一つに、デジタル信号処理
(DSP) の理論と応用がある。特に音響デザインやデジタル・ミュージックの分野では、扱う素材の
細部に高いクオリティを与え、独創的な発想でコンテンツの制作やアプリケーションの開発を行う
ためには、DSPの理解は不可欠である。
しかし、DSPでは抽象度の高い数学を使用するため、長い間アート/デザイン系の学生に対しては
ハードルが高く、その事がトラウマとなっていた。
また、この分野でのポピュラーな信号処理ソフトウエアとしてMATLABが、コンテンツ作成用ソフト
としてMax/Msp等があるが、これらは学生が個人で購入するには高価である。
当研究では、これらの問題に対する解決への一助となる事を目指して、以下の電子教材作成を作成した。


電子教材
春学期大学院開講科目 「デジタルサウンドセオリー」 のオンライン教材を作成した。
教材の主要なターゲットは理工系の学生ではなく、必ずしも技術力は高くはないかも知れないが、
しかし豊かな感性を持つアート/デザイン系の学部生および大学院生である。
教材の主な内容は、DSPの平易な解説を行う事、および学生が実際にソフトウエアを使って実行し、
結果の確認が可能な実用性の高い例題を用意した。
本教材では、学生が入手し易いフリーウエアとして、主にPureData (以後、Pd) を使用した。
Pdに関しては、既に多くの優れた解説やドキュメントがあるが、教科書として使用される頻度が
最も多いと思われるオーサー(Miller Puckette) 自身によるテキストとの整合性を考慮し、例題は
オーサーによる 「Theory and Techniques of Electronic Music」 から多くを引用し、これらを
改良したものを使用した。


参考文献等
この分野には、既に数多くの定評のある教科書、参考書、論文、ウエブページ等があり、
当教材を作成するにあたり参考にした主なものは以下の通りなので、当教材を利用する
学生諸君には、これらも積極的に参照する事を勧めたい。

・ウエブ
JOS On - Line Publications, JULIUS O.SMITH III
https : // ccrma.stanford.edu/~jos/pubs.html

The Scientist and Engineer' s Guide to Digital Signal Processing, By Steven W.Smith, Ph.D.
http : // www.dspguide.com/pdfbook.htm

・書籍
Elements of Computer Music, F.Richard Moore, Prentice Hall, 1990
DSP FIRST, James McClellan, Ronald Schaefer, Mark Yoder, PRENTICE HALL, 1998
Real Sound Synthesis, Perry Cook, A K Peters, 2002
The Theory and Technique of Electronic Music, Miller Puckette, World Scientific Publishing, 2007
Designing Sound, Andy Farnell, MIT Press, 2010


教材のアップロード
教材は、この報告書を書いている時点で、ほぼ完成してはいるが、使い勝手その他の点でまだ改良の余地が
あると思われるため、最終的な詰めを行った後で、4月の新学期が始まる前にSFCのサイトにアップロードする
予定である。

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