2011年度 学術交流支援資金 研究成果報告書
■研究課題名:グローバル環境システム
「低炭素社会構築に向けた教育推進に関する日中共同研究」
■研究代表者:政策・メディア研究科 教授 小林光
■研究課題
中国における低炭素社会構築に係る教育を推進するため、本学大学院「低炭素社会デザインコース」におけるカリキュラム開発等の成果を踏まえ、北京師範大学及びアモイ大学と共同で、本分野に係る基本的な中国語教材の開発を行うとともに、効果的な人材育成、普及啓発のあり方について研究を行う。
■研究背景
持続可能なアジアに向け、今後ますます重要性を増してくる「低炭素社会」の構築に活躍する環境人材リーダーを育成するため、本学大学院政策・メディア研究科では、2009年度に「低炭素社会デザインコース」を設置し、「低炭素社会設計論」等講義科目3科目、「低炭素社会デザイン演習1」等演習科目2科目及び低炭素社会デザインインターンシップの開発を行ってきた。2011年度からは「環境イノベータコース」に移行し、更なるカリキュラムの改善・拡充を行っているところである。
中国は、世界最大の二酸化炭素排出国であり、同国における二酸化炭素削減の取組みが今後の低炭素社会構築において大きな影響を及ぼすことになるが、この問題に関する教育分野における取組みは緒についた段階であり、教材等の開発について、低炭素社会構築に特化した人材育成コースを有する本学に協力を求めてきている。
■活動報告
(1)低炭素社会構築に関する中国語教材の開発
2011年5月に、日本において行った、中国で低炭素社会構築に関する教材開発を担っている北京師範大学の叶謙教授及びアモイ大学の段紅霞准教授と本件に関する協力に関する打ち合わせを踏まえ、今回開発する中国語教材については、本学大学院政策・メディア研究科「低炭素社会デザインコース」で開発した授業「低炭素社会設計論」の内容をまとめた「低炭素社会をデザインする」(浜中裕徳編、慶應義塾大学出版会)を参考に最新情報を踏まえ、また中国の事例等を追加し、中国語で作成することとした。
2011年7月18日に北京、10月18日に南京、11月20日に北京、11月31日に南アフリカ・ダーバンで叶教授、段准教授と教材の構成・内容等についての打合せを行い、2012年1月19日に上海において、原稿の最終調整を行った。
なお、開発した中国語教材は、2012年4月に刊行する予定である。
(2)中国における低炭素社会構築に関する人材育成及び普及啓発施策の調査
中国における低炭素社会構築に関する人材育成及び普及啓発状況について文献等により調査した。
中国では、2007年6月に公布された「中国気候変動対策国家方案」の中で、気候変動分野の教育・普及啓発に関する取組を強化することが明記されて以降、気候変動分野の人材育成・普及啓発政策が重点的に進められている。2010年頃から北京森林大学等複数の大学で「低炭素」をテーマとするカリキュラムが登録されたり、地方政府・企業向けの研修会が開催されている。また、小中学生・一般向けの普及啓発に関するプロジェクトが開始されている。
(3)低炭素社会構築に関するワークショップへの参加・人材育成に関する意見交換
2011年10月に南京、11月に北京において開催された低炭素社会構築に関するワークショップに参加し、我が国における低炭素社会構築に向けた取組成果及び課題等について紹介し、日中両国における効果的な人材育成及び普及啓発のあり方について意見交換を行った。
○Training Workshop on Asian Development Pathways in the context of transitions towards a “Green Economy”
・日時:2011年10月17日〜21日
・場所:Suti Tianyun Lake Sports Resort (中国・南京市)
・主催:International Human Dimensions Programme on Global Environmental Change (IHDP) and its National Committee in China(CNC-IHDP)
・発表:“Low-Carbon Societies Theories and Practices”(発表者:浜中裕徳)
○低炭素社会構築における日中人材育成・普及啓発方策に関するワークショップ
・日時:2011年11月20日
・場所:北京師範大学国際学術交流中心(中国・北京市)
・主催:北京師範大学
・発表:「Basics of Eco-business: Mutually supportive relationship between the Environment and the Economy」(発表者:小林光)
また、2011年12月1日に、COP17開催中の南アフリカ・ダーバンにおいて、叶教授、段准教授、本学環境イノベータコースの厳教授とともに「気候変動に向けての日中大学教育協力」について意見交換を行った。IHDPや日中韓協力などの枠組みの下でまずプロジェクトベースでの協力を開始してフィージビリティをテストすること、国際アドバイザリーグループを設置し、検討結果を日中韓3カ国政府に提言し、公式のプログラムを開始することなど、今後の協力の方向性について共有し、引き続き検討を進めることとした。
(別添1)中国の低炭素社会構築に関する人材育成・普及啓発状況
(別添2)“Low-Carbon Societies Theories and Practices”
(別添3)“Basics of Eco-business: Mutually supportive relationship between the Environment and the Economy”