担当教員:: 慶應義塾大学 環境情報学部 准教授 筧 康明


本研究の背景と目的::

本講義デザイン戦略(インタラクション)では、インタラクションデザインの分野の先端的動向の学習および、具体的なテーマを設定したデザイン実践を目的とする。インタラクションデザインの分野において、より多くのデザイナーやエンジニアの参加を促すために、つくり方の共有や、コラボレーションを通した制作、利用者からの積極的なフィードバックの仕組みづくりの重要性が高まってきている。本講義では、このような背景に伴い、オープンソースの考え方・仕組みおよびオープンソースに基づいて、インタラクションデザインの実践を行う。オープンソースシステムの概念の普及や開拓を先導するMozilla Japanの協力を得ながら講義を展開する。

本講義では、インタラクティブメディアに関する先端事例を紹介しながら、具体的なテーマとして、物理世界とデジタル世界を結びつけるインタフェースとウェブのあり方に関して考えることを目的とする。電子工作によるセンサやアクチュエータとウェブを連動させるツールArduino.jsを用いて、受講者はアイディアをプロトタイピングする。さらに、オープンソースの考え方に基づいて、受講者間でそのノウハウを共有する。


Arduinoと連動するフィジカルウェブブラウザの開発::

教材の概要::

本教材では、arduino.jsの使い方およびその作例をまとめた。なお、教材はhttp://arduinojs-en.tumblr.com/に公開している。

arduino.js とは、JavaScript によって Arduino を制御することができる Firefox の Add-on 用ライブラリである。このライブラリを取り入れることでAdd-on から制御することが可能となる。また、ウェブページ用 Add-on arduino.js for webpages をインストールすればウェブページからの制御も可能となる。

本教材では、このarudino.jsの使い方をまとめた。使い方の具体的な項目は以下の通りである。

  • Arduino の準備
  • アドオンの操作方法
  • ウェブページからの操作方法
  • APIの説明
  • 実装
  • ソースコード
    講義およびワークショップでの実践::
     
     2012年度のデザイン戦略(インタラクション)では、上記のフィジカルウェブブラウザ制作ツールを用いて、「日常生活の○○を拡張するウェブブラウザ」というテーマで制作・実践を行った。

     今回制作した教材では、この講義の中で作られた作品を、作例として紹介している。なお、この公開は受講者の意思のもとクリエイティブコモンズライセンスに基づいている。具体的な内容は教材を確認されたい。

  • Browsing environment fitting the body posture of users(使用者の体勢に合わせたブラウジング環境)
  • Shared browsing from the view of pets(ペット視点シェアブラウジング)
  • Web browsing by disassembling information(バラしたくないものをバラすウェブブラウジング)
  • Passive Web browsing by sighing(ため息による受動的ウェブブラウジング)
  • A balancing device showing weights via the Web(ウェブから重さ表現抽出を可能とする天秤型デバイス)
    コンピュータが遍く配置され、人々の生活スタイルの多様性も広がる中で、画面の中のGUIやマウス・キーボードに頼らない、より実世界を指向したウェブブラウジングのあり方の提案やそのデザインは今後よりその重要性を増すテーマだと考えられる。Arduino.jsを一つの道具として、アイディアを具現化して共有するというインタラクションデザインの流れを体験させる教材として、今後も活用していきたい。