2012年度 学術交流支援資金「外国語電子教材作成支援」報告書


科目名:複雑系の数理(GIGA)
担当:井庭 崇

本プロジェクトでは、今年度秋学期にGIGA科目として英語で開講された「複雑系の数理」(Complex Systems Theory)の授業で使用する教材を英語で作成・整備した。この授業では、複雑系の概念を学ぶとともに、その実践的展開の方法ともいうべきパターン・ランゲージについての教材を制作した。そんなかで、先端的な講演映像を読み解く演習や、自らが「アイデアの伝え方」を意識しながらプレゼンテーションを行う最終発表会などの支援も行った。

本プロジェクトの成果は、大きく分けると、1.カオス概念を理解するためのシミュレーション演習英語教材、2.Presentation Patterns英語版、3.Collaboration Patterns英語版である。

1.カオス概念を理解するためのシミュレーション演習英語教材
多様で複雑なカタチを生成できるソフトウェア「ChaoticWalker」(井庭崇 制作)を、履修者のPCで動かし、カオスのもつ多様な生成力について学ぶ演習を行った。「無限」を生み出すカオスは、そのままでは不規則でかたちは生成できないのだが、それに数値の桁数を区切るという「有限性」の枠をはめることで、カタチが立ち現れる。そのような非常に興味深い現象を考察するためのツールである。このソフトウェアのサイト(http://www.chaoticwalk.org/)のDownloadページから、このソフトウェアの実行ファイル(jarファイル)のダウンロードができ、使用方法等についてもMethodページに情報が書いてある。

2.Presentation Patterns英語版
プレゼンテーション・パターンは,「創造的プレゼンテーション」の秘訣を言語化したものである。創造的プレゼンテーションとは,単なる伝達ではなく,聴き手の新しい発想や発見を誘発するプレゼンテーションのことである。自分が持っている知識やアイデアによって未来に変化をもたらしたいと考えているとき,それらを単に伝えようとするだけでは,聴き手の心を動かしたり,行動を促したりすることは難しい。「理解する」ことは必ずしも「信じる」ことではなく,「信じる」ことなしに自発的に行動に移すことはないのである。そこで,プレゼンテーションを,「伝達」の場ではなく「創造」の場であると捉え直し,聞き手の想像をかき立て新しい発想や発見を促す「創造的なプレゼンテーション」となるようにプレゼンテーションをデザインするのである。そのための秘訣をまとめたものが,プレゼンテーション・パターンである。本プロジェクトでは、このプレゼンテーション・パターンの英語版を作成し、これを用いて、「アイデアの伝え方」を講演映像から読み解き、グループダイアログを行うという演習を行った。なお、授業では印刷資料として配布したが、現在、この成果は一般公開のためのWebサイトの準備を進めている。

3.Collaboration Patterns英語版
コラボレーション・パターンは,「創造的コラボレーション」の秘訣を言語化したものである。創造的コラボレーションとは,成果だけでなく,それを生み出すための「方法」もつくり,自分たちも成長するようなコラボレーションのことである。単に「複数人で何かをつくる」というだけで本当によいものを生み出すことは難しい。複数人で分業すると,部分を足しあわせたような成果になってしまいがちで,そのような分業ではモチベーションを維持することも難しくなる。そこで,メンバーが互いに高め合いながら成長し,個人には還元できないチームレベルの創発的な勢いを生み出し,それに乗りながら,世界を変えるような成果を生み出す。そのようなコラボレーションのデザインにおける視点や方法をまとめたものが,コラボレーション・パターンである。このコラボレーション・パターンの英語版を作成し、授業で取り上げた。なお、授業では印刷資料として配布したが、現在、この成果は一般公開のためのWebサイトの準備を進めている。

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