研究概要

 

慶應義塾大学とルンド大学とは包括協定を締結しているが、理工学部のダブルディグリープログラム実施以外では、本協定を積極的に活用してこなかった。学術交流支援資金の支援を受けて、SFC大学院設置科目である「環境フィールドワーク」に、ルンド大学の教員と学生を招聘し、履修する学生に単位交換を行いたい。ルンド大学と慶應義塾大学との間で新しい国際的な学術提携方法を模索し、そのモデルケースを提示することを目標とする。今回の申請では、招聘するルンド大学の学生2名の旅費を支援していただいた。ルンド大学からも助成金を補助していただき、ルンド大学の教員の旅費と学生の旅費の一部負担をお願いした。

表1 研究組織


研究組織

氏   名

所属・職名・学年等

研究分担課題

一ノ瀬友博

環境情報学部・教授

プロジェクト全体のとりまとめ

土光智子

環境情報学部・非常勤講師

「環境フィールドワーク」授業担当講師

陳文波

政策・メディア研究科・博士課程・3年

授業補佐、現地との調整補佐

カジ・オメアー

政策・メディア研究科・修士課程・2年

授業補佐、現地との調整補佐

原悠樹

政策・メディア研究科・博士課程・3年

授業補佐、現地との調整補佐

 

1.背景

1-1.新生「環境フィールドワーク」科目

SFCの大学院政策・メディア研究科における設置科目に「環境フィールドワーク」(秋学期)がある。本授業では、環境に関わる自然科学的・社会科学的フィールドワークを実地で演習し、多角的な視点から地域の課題にアプローチできる能力と技術を習得することを目指す。本科目は、申請者である一ノ瀬が担当してきたが、2011年からEI(環境イノベータ)設置科目となり、英語による授業に切り替わった。同時に、EIプログラムから授業を支援するためのフィールド観測機器やフィールド調査実施地点までの国内交通費や宿泊費を支給していただけることになり、授業内容も大幅に見直し、新たに非常勤講師として土光君を迎え、慶應義塾大学と提携のある山梨県富士吉田市を拠点として、合宿形式の集中講座としてフィールド実習を行うユニークな教育プログラムを創案し実施してきた

2011年度は山梨県富士吉田市にて合宿形式で「自然再生エネルギー」をテーマとして9月19日~21日に開講した。履修者は8名であり、内訳は学部生1名、修士課程5名、博士課程2名であった。留学生は、シンガポールと中国からひとりずつ参加した。バイオマスエネルギー、小水力発電、太陽光発電という3つの自然再生エネルギーに関するチームを編成した。現地でのフィールド調査に関するコーディネートは、富士吉田市市役所企画財政課の水越欣一氏の全面的な協力を得た。合宿最終日である9月21日に、フィールド調査結果の報告を学生グループごとに発表した。一ノ瀬の東京大学在学当時の研究室同窓生である池内仁氏が、山梨県環境科学研究所に環境計画学研究室に勤務しておられ、この報告会にご出席していただけることになり、多くの貴重な意見をいただいた。また、年度末の2012年2月14日には、富士吉田市市役所の開催する富士吉田市市役所幹部会を対象とした、SFCと富士吉田市との共同プロジェクトの年次成果報告会に招待され、本授業の成果報告をプレゼンテーションした。この成果報告会にて、バイオマスエネルギーチームの発表に、現地の最大規模の森林組合である富士吉田市外ニヶ村恩賜県有財産保護組合(以降、恩賜林組合)の担当者が興味を示した。

2012年度においては、引き続き山梨県富士吉田市を合宿開催地とし、テーマを「野生動物と植物のモニタリング」と変更し、9月15日~18日に集中講義を実施した。なお、申請者はウィーンに研究留学が決まっていたため、土光君に科目の運営を委託した。履修者は5名であり、内訳は学部生1名、修士課程4名であり、留学生はアメリカから一人であった。夏季休暇中に、まず、SFCにて、テレメトリ―技術(VHFセンサーの電波を用いた動物の追跡技術)、リモートセンシングによる衛生画像分類手法の植生分類への応用方法、および、カメラトラップ技術(自動撮影装置による動物の撮影技術とその解析方法)などを教授した。その後、富士吉田市にてSFCで学習した技術を運用しフィールド調査を行う授業計画とした。学生グループは、動物モニタリングチームとバイオマス調査チームの二つを編成した。恩賜林組合の担当職員らと山梨県環境科学研究所・環境計画学研究室の室長である杉田幹夫氏の協力を得て、富士吉田市内の恩賜林組合敷地の森林にてフィールド調査を行い、バイオマス賦存量を測定するため、毎木調査を行った。また、カメラトラップも15台設置し、2か月間弱の哺乳類相のモニタリングを実施した。また、合宿中には、山梨県環境科学研究所・動物生態学研究室の吉田洋氏のご協力を得て、ニホンジカのライトセンサス調査を特別講義していただくことができた。この方法では、シカを車から直接観察することができるので、学生は大変興奮し、何匹カウントできるか互いに競い合い、非常に人気があった。9月18日に、フィールド調査結果に基づく中間報告会を実施し、2013年3月11日に恩賜林組合に招待され、環境フィールドワークの授業成果に関して単独で学生グループによる成果報告会を行った

1-2.ルンド大学との関わり

ルンド大学(Lund University)は、スウェーデンのスコーネ県に位置するルンド市の国立大学である。創立は1666年であり、300年以上の歴史を持ち、現在のスウェーデン領土内の大学としては2番目に古い。ルンド大学は、スウェーデンでもっとも評判の良い大学であり、北欧圏でもトップ5にランクイン(2009年ではTimes Higher Education World University Rankingsにて北欧圏2位)し、ヨーロッパにおける主要な大学の1つである。学術研究分野において質・量ともに優れた大学が加盟する事ができるヨーロッパ研究大学連盟に所属している。

研究グループのメンバーである土光君は、2012年4月に、欧州連合Erasmus Mundus Program(エラスムス・ムンダス プログラム)から旅費、海外保険、滞在費の助成を受け、ヨーロッパに客員研究員として招聘された。エラスムス・ムンダス プログラムとは、理学修士プログラム「環境モデリングと環境管理への空間情報科学」を支援するプログラムの一部であり、土光君が修士号を取得したオランダ・トウェンテ大学ITCのA. K. Skidmore教授からの推薦を受けて助成が決定した。この滞在期間中に、ルンド大学に2週間ほど訪問し、ルンド大学の教授陣および研究者と交流を深めた。ルンド大学でのカウンターパートは、物理地質学およびエコシステム解析学科(the department of Physical Geography and Ecosystem Analysis)に属するGISセンターと、GISセンター長であるAssoc. Prof. Petter Pilesjö氏(http://www.giscentrum.lu.se/english/contact.htm)である。Petter Pilesjö氏は、「環境フィールドワーク」の授業内容が、英語という言語で短期間に集中して講座が完結することに着目し、高い興味を示された。土光君の客員研究員としての滞在期間中に、活発な議論が交わされ、夏季講座特別講座として、慶應義塾大学とルンド大学との間で学生の履修者交換ができないか、2013年度の開講をターゲットとして、両大学で可能性を検討していくことになった。

■2.学術交流の目的

慶應義塾大学は、ルンド大学と包括協定を締結しており、この枠組みを使用することで、大学教員および学生の交換が可能である。大学同士のMOUには、1)学生交換協定校(student exchange, S)、2) 学術交流協定校(faculty exchange, F)、3) 包括協定締結校(comprehensive collaboration, C)、4)その他(Others, O)の4種類があり、3つ目の包括協定締結校は、MOU内で最上位に位置する。既に、慶應義塾大学の理工学部・理工学研究科では、ルンド大学工学部(Lund University、 Faculty of Engineering LTH)と修士課程のダブルディグリープログラムを実施している実績がある。しかし、残念ながら、SFCも含めて慶應義塾大学内の他の学部では、ルンド大学との包括的提携を有効に活用してきた実績はない

よって、本プロポーザルでは、【「環境フィールドワーク」への授業参加を通じたルンド大学との共同学術活動の試み】をテーマとし、教育プログラムを通じた慶應義塾大学とルンド大学間での新しい提携方法を模索し、そのモデルケースを提示していくことを目標とした。

■3.共同学術活動の内容

今年度(2013年度)は、萌芽的学術交流として、既に富士吉田市(富士吉田市市役所)、山梨県(山梨県環境科学研究所)、恩賜林組合との強い信頼関係が生成され、教育実績もある「環境フィールドワーク」科目を通じて、スウェーデンのルンド大学から大学院生を受け入れ、授業の単位交換を目指したSFCの2013年度学術交流支援資金の制度およびルンド大学の助成金を活用させていただき、日本の富士吉田市で開催する「環境フィールドワーク」の授業(合宿形式、夏季休暇を利用した短期集中講座)に、ルンド大学の教員2名と学生2名を招聘する旅費を補助していただいた

2013年度の「環境フィールドワーク」は、昨年度と同様、山梨県富士吉田市を合宿開催地とし、テーマを「野生動物と植物のモニタリング」とし、9月15日~18日に集中講義を実施した。具体的な日程は、一ノ瀬と土光君がルンド大学との教員と相談して決定した。ルンド大学の物理地質学およびエコシステム解析学科では、リモートセンシングやGISの優れた実学的な教材が多数開発されており、それらの事前知識を持った学生を履修させることが可能であった。合宿開講までの準備期間においては、ロジスティック面のコーディネートが主な準備内容となった。コーディネートは土光君が担当し、本科目を履修した経験のある陳文波君(2011年履修、2012年TA)、カジ・オメアー君(2012年履修)、原悠樹君がTAとしてサポートにあたった。ルンド大学の教員として、前述した物理地質学およびエコシステム解析学科GISセンター長であるPetter Pilesjö氏と、同GISセンターの教育部長のUlrik Mårtensson氏を招聘した。ルンド大学に滞在中、土光君はUlrik Mårtensson氏のリモートセンシングによる植生分類のフィールドワーク授業に参加させてもらい、斬新な教育手法に多くの刺激を受けている。ルンド大学の学生は、ルンド大学物理地質学およびエコシステム解析学科・博士課程のJing Tang氏と同博士課程のFinn Hedefalk氏を招いた。

■4.学術交流の内容
4-1.合宿概要
日程:2013年9月15日~18日
場所:富士吉田市立青少年センター赤い屋根
授業責任者:土光智子
テーマ:野生動物と植物のモニタリング
履修者:慶應義塾大学から5名、ルンド大学から2名
使用言語:英語
グループワーク:①植生チームと②動物チーム
プログラム:フィールド調査(15日、17日)、国際合同ワークショップ(16日)、特別講義「シカのライトセンサス調査」(吉田洋氏)(17日)、グループ発表(18日)

4-2.授業参加者

慶應義塾大学 大学院政策・メディア研究科

国籍

プログラム

修士/博士

Zhang

Shenyan

中国

環境デザインとガバナンス(環境イノベータ)

修士

Qin

Qiming

中国

環境デザインとガバナンス(環境イノベータ)

修士

Lin

Yun-Chu

台湾

環境デザインとガバナンス(環境イノベータ)

修士

Ristanti

Eky

インドネシア

環境デザインとガバナンス(環境イノベータ)

修士

Li

Yang

中国

環境デザインとガバナンス(環境イノベータ)

修士

 

ルンド大学物理地質学およびエコシステム解析学科

国籍

修士/博士

Tang

Jing

中国

博士

Hedefalk

Finn

スウェーデン

博士

 

慶應義塾大学TA(Teaching Assistants)

国籍

修士/博士

文波

中国

博士

Qazi

Omair

アメリカ

修士

悠樹

日本

博士

 

慶應義塾大学およびルンド大学の教員

国籍

所属

土光

智子

日本

慶應義塾大学 大学院政策・メディア研究科 非常勤講師

Pilesjö

Petter

スウェーデン

ルンド大学物理地質学およびエコシステム解析学科 GISセンター長

Mårtensson

Ulrik

スウェーデン

ルンド大学物理地質学およびエコシステム解析学科 教育部長

 

4-3.合同ワークショップ

慶應義塾大学・ルンド大学における国際合同ワークショップ「環境フィールドワーク」
2013年9月16日
富士吉田市立青少年センター赤い屋根

座長: 土光智子

参加者
Zhang Shenyan (student, Keio University)
Qin Qiming (student, Keio University)
Lin Yun-Chu (student, Keio University)
Ristanti Eky (student, Keio University)
Li Yang (student, Keio University)
Tang Jing(student, Lund University)
Hedefalk Finn (student, Lund University)
Chen Wenbo (Teaching Assistant, Keio University)
Qazi Omair (Teaching Assistant, Keio University)
Hara Yuki (Teaching Assistant, Keio University)
Doko Tomoko (lecturer, Keio University)
Pilesjö Petter (lecturer, Lund University)
Mårtensson Ulrik (lecturer, Lund University)

プログラム

  1. Introduction of this class, Tomoko Doko, 8:10-8:25
  2. Self-introduction of participants, all participants, 8:25-8:40
  3. Department of Physical Geography and Ecosystem Sciences, GIS Center, Swedish education system, and our education programmes in Lund University, Pilesjö Petter & Mårtensson Ulrik, 8:40-9:40
  4. Introduction of GIS, Pilesjö Petter & Mårtensson Ulrik, 9:40-11:10

昼食

  1. Ph.D. thesis introduction of Tang Jing, 13:30-13:45
  2. Ph.D. thesis introduction of Hedefalk Finn, 13:45-14:00
  3. Summing up session, Pilesjö Petter & Mårtensson Ulrik, 14:00-14:30
  4. Introduction of GIS and Remote Sensing, Pilesjö Petter & Mårtensson Ulrik, 14:30-15:00
  5. Applications of GIS and Remote Sensing in environmental science, Pilesjö Petter & Mårtensson Ulrik, 15:00-16:00

 

4-4.合宿スケジュール

 

動物チーム

植生チーム

15日Am

9:30 SFC出発
11:30 青少年センター到着

9:30 SFC出発
11:30 青少年センター到着

15日Pm

■富士吉田市役所 公用車2台~3台(学生・教員13名が乗れる台数)出していただく 【午後のみ】
12:00~13:00 昼食
13:00~17:00 カメラ4台設置:412林班(#8,10,12,14)
*15日 17:00にレンタカー受取へ行く(土光、原)
19:00~20:00 夕食@レストラン
20:00~ グループワーク

■富士吉田市役所 公用車2台~3台(学生・教員13名が乗れる台数)出していただく 【午後のみ】
12:00~13:00 昼食
13:00~17:00 植生調査:駕籠坂上5611-1-405へ8(#1)
*15日 17:00にレンタカー受取へ行く(土光、原)
19:00~20:00 夕食@レストラン
20:00~ グループワーク

16日Am

*16日 台風18号本州上陸のため、フィールド調査へ行けず、合同ワークショップを16日に実施
8:00~11:10 慶應・ルンド大学合同ワークショップ
11:30~12:30 昼食 吉田うどん
12:30~13:30 富士浅間神社のお参り

*16日 台風18号本州上陸のため、フィールド調査へ行けず、合同ワークショップを16日に実施
8:00~11:10 慶應・ルンド大学合同ワークショップ
11:30~12:30 昼食 吉田うどん
12:30~13:30 富士浅間神社のお参り

16日Pm

13:30~16:00 慶應・ルンド大学合同ワークショップ
16:00~19:00 グループワーク
19:00~20:00 夕食@レストラン
20:00~ グループワーク

13:30~16:00 慶應・ルンド大学合同ワークショップ
16:00~19:00 グループワーク
19:00~20:00 夕食@レストラン
20:00~ グループワーク

17日Am

9:00~12:00 カメラ4台設置:412林班(#9, 11, 13, 15)
12:00~13:00昼食@中の茶屋

9:00~12:00植生調査:侭下5604-1-409は46・は34(#2, #3)
12:00~13:00 昼食@レストランかコンビニなど

17日Pm

13:00~17:00 カメラ7台設置:409林班(#2, 4, 7, 6, 5, 3, 1)
17:00~18:00 夕食@レストラン
18:45   山梨県環境科学研究所 第3駐車場 集合
18:45~20:50山梨県環境科学研究所 動物生態学研究室 吉田洋研究員によるライトセンサスによるシカの直接観察 
20:50~ グループワーク

13:00~17:00 植生調査:侭下5604-1-409は33・は32(#4, #5)、梨ケ原1212(#6)
17:00~18:00 夕食@レストラン
18:45   山梨県環境科学研究所 第3駐車場 集合
18:45~20:50山梨県環境科学研究所 動物生態学研究室 吉田洋研究員によるライトセンサスによるシカの直接観察 
20:50~ グループワーク

18日Am

9:00~11:00 グループワーク
11:00~11:30 植生チーム 発表・質疑応答
11:30~12:00 動物チーム 発表・質疑応答
12:00~12:15 全体の質疑応答

9:00~11:00 グループワーク
11:00~11:30 植生チーム 発表・質疑応答
11:30~12:00 動物チーム 発表・質疑応答
12:00~12:15 全体の質疑応答

18日Pm

12:30~14:00 ふじやまビール打ち上げ
14:00~16:00 自由時間
*18日 17:00までにレンタカー返却へ行く(土光、富士吉田市職員)
17:00 北富士観光バス 帰路 出発

12:30~14:00 ふじやまビール打ち上げ
14:00~16:00 自由時間
*18日 17:00までにレンタカー返却へ行く(土光、富士吉田市職員)
17:00 北富士観光バス 帰路 出発

■5.学術交流で得られた成果

2013年度の学術交流では、慶應義塾大学SFCの教員とルンド大学GISセンターとの授業を通じた意見交換や信頼関係の醸成を図った。また、ルンド大学学生の授業参加により、SFC履修学生への強い刺激を与えられることができた。SFC履修学生に対してのルンド大学学生受入のメリットには、①履修者数の増加によりグループとメンバーの数が増加し、一人当たりの負担が軽減する、②今まで日本人だけのグループもあったが、ルンド大学学生投入により強制的に全てのグループが英語での議論をせざるを得ないので英語の語学力増強につながる、③世界最高水準の教育レベルのルンド大学の学生と自分を比較することで自分を高める強い励みになる、④SFCとルンド大学の教育プログラム・履修制度の意見交換により幅広い見識を持つことができる、等が挙げられる。

Petter Pilesjö氏と、Ulrik Mårtensson氏の両氏は、ルンド大学工学部から“Best Teacher Award”を受賞しており、高い水準の教育に対して類稀なる情熱を燃やしておられ、また、海外大学との新たなパートナーシップに戦略的かつ積極的に活動しておられる。両氏を招聘することによって、慶應義塾大学SFCの教育プログラムを実際に経験していただくことができた。合同開催した国際ワークショップでは、ルンド大学との教育の違い、専門分野、今後の提携に関しても活発な議論を行うことができた。特に、GIS・リモートセンシングについての非常に明快で簡潔な講義を国際ワークショップで実施していただき、慶應義塾大学の学生に大きな刺激と高い学習効果を与えた。全体のプログラムの実施を通じて、構築してきた信頼関係のさらなる深化が進んだと感じた。

■6.今後の展望

将来的には、慶應義塾大学SFC側からもルンド大学の授業に学生を派遣し、単位交換ができるようなシステム構築に繋げていきたい。この取組を継続的に続けることによって、理工学部間だけでなく、SFC発信型のルンド大学との学術交流のモデルケースとして先駆け的な学術交流となることが期待される。SFCからルンド大学に学生を派遣することで、異なる文化圏での生活を経験でき、国際化・グローバル化が進む社会の成り立ちに理解を深めることが期待される。特にGIS/リモートセンシング関係の授業は多様で高度な技術を習得可能である。ルンド市は、北欧における中世の古都であり、日本でいえば京都のような場所である。ルンド大学での短期留学経験は、人生において忘れがたい貴重な経験となるであろう。