2013年度 学術交流支援資金報告書 

外国語電子教材作成支援

研究課題名:中国語インテンシブ1 , ベーシック1

研究代表者氏名 島田美和

所属/職名 総合政策 /専任講師

 

 

1.教材作成の背景と目的

 

現在、SFC中国語研究室はインテンシブ1〜3クラス、ベーシック1〜3クラスのオリジナル教材内容をウェブ上で公開し、授業と連動させ学生に授業内容の予習と復習の場を提供している。しかし現状では、学生からの自発的学習を促すWeb教材コンテンツは欠けている。

そこで、本教材開発はベーシッククラス学習者やインテンシブ1学習者など、特に中国語初級学習者の発音聞き取り練習に重点を置き、その自律的学習能力の育成を図ることを目的として行った。

インテンシブクラスは、週に4コマ中国語による授業が行われる。そのため、インテンシブクラスを受講する学生は、中国語学習の習慣が身に付く学習環境に置かれている。他方、ベーシックコースの学生は、週に2回、日本語による授業を受講する。そのため、彼らの中国語学習へのモチベーションをいかに持続させるかということは、大きな課題となっている。また、このことは、ベーシッククラスを受講した学生が、その後ベーシッククラスの上位のクラス(例えばベーシック1から2以上へ)、もしくは中国語学習へより関心を持ち、インテンシブクラスへ進級するなど、中国語学習を継続し中国語能力の向上を図る上でも重要な課題といえよう。

このように、現在のSFCにおける中国語学習環境では、学生が授業内や試験のためにウェブ教材を利用するだけでなく、授業時間外で中国語初級学習者の学習意欲を醸成するような自律学習システムの構築が必要である。加えて、日本人の中国語学習者の特徴は、その文化的背景から、容易に漢字を理解できる反面、日本語とは異なる中国語の声調や発音の習得に苦労しやすい点にある。本教材は、中国語初習者向けに中国語の発音の基礎を習得するだけでなく、より中国語に慣れ親しんでもらうために開発を行った。

 

2.システムの作成過程と概要

 

【準備段階】

中国語研究室では、従来の良質なWeb教材コンテンツを残しつつも、2012年度に新しい中国語HPを立ち上げた。また、2014年度のカリキュラムの変更による多様な学習者の受け入れを想定し、2013年度は今回作成した新規Web教材コンテンツの利用を見越してのHPのシステム運用の基盤整備を行った。

 

 

【システム概要】

本システムは、選択式クイズ形式でより簡単に楽しく中国語の声調と発音のリスニング能力を育成するものである。主な対象者は中国語学習初級者を想定する。操作はマウスのみを使用する。

 

【ウェブ教材名】「発音聞き取り学習システム」

 

所在: SFC中国語研究室HP内の下記の場所 【発音聞き取り】

http://china-lab.sfc.keio.ac.jp/quiztop/  発音聞き取りTOP

http://china-lab.sfc.keio.ac.jp/quizmanual/ 回答方法

http://china-lab.sfc.keio.ac.jp/quiz/ 発音聞き取り学習システム

 

【使用言語】

ActionScript2.0

 

【使用ソフト】

Adobe Flash Professional CS6

 

【仕様素材】

@中国語の設問(クイズ11種類分)

A発音音声ファイル(MP3ファイル)

B中国に関する写真(クイズ背景に仕様し、中国で撮影を行った写真)

 

【システム制作過程】

制作過程は以下の通りである。

@  問題内容の作成、音源の録音、背景写真の撮影

A  クイズシステムの構築

B  試作品の講評、テスト(インテンシブ1とベーシック1の学生計5人から試作品と完成品を2回試用してもらう)

C  Bを元にした手直し、追加の繰り返し 

D  最終調整

 

 

 

 

 

【システム内容と学習効果】

・設問形式について

 

 

 

 

 

 

 


(図1)

・流れてくる音声(問題→各選択肢の順番)を聞き、同じ音声を選択する

・1度目は各選択肢の聞き直しは出来ず、問題のみ聞き直す事ができる

(図2)

・不正解の場合、各選択肢の音声ボタンが出現し、改めて回答することができ 

 る ⇒各選択肢の声調・発音は1度しか流されないので、各問題の初めに必ず各問題に出される4つの選択肢の声調・発音を記憶せねばならず、リスニング能力の習得・定着に役立つ

 

 

 

 

 

 

 


(図3)

 

 

(図3)

・正解の場合、選択肢の答えと改めて正しい音を聞き直せるように正解音声のボタンが表示される

重複学習効果(正解してもそのまま終了させず、正解以外の選択肢の声調・発音の訓練をする機会を設け、確認や復習など総合的な声調・発音の習得を可能としている。)

 

 

(図4)

・選択肢の単語に意味がある問題には解説ページを設け、それぞれのピンインと正しい漢字、日本語の意味が表示される。また、各選択肢の番号を押す事によってその単語の音声が再生されるようになっている

本教材は、発音聞き取り能力の向上を目的としているが、選択肢の中に発音が似ているが一生使用しないであろう単語や文学的表現を意味する語彙の発音は取り上げなかった。むしろ、あえて発音は多少異なってもより実生活で有用な語彙や今後学習上習得しなければならない語彙を取り上げ、今後の継続的中国語学習に備えた。

 

【システムの状態遷移図】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

注意点:クイズファイルはswfファイルで書き出されている為、クイズを実行するパソコンには最新のFlash Playerhttp://get.adobe.com/jp/flashplayer/から無料でインストール可能)をインストールする必要がある。なお、システムをおくホームページには注意済み。

 

・問題内容について

 設問に出される内容は、すべてSFC中国語インテンシブ・ベーシック1の内容に準拠し、またその他の未習の語彙は、インテンシブ1以降のレベルもしくは中国語HSK(中国政府公認の中国語資格試験)問題から取り上げた。

 

・画像について

 設問の背景には、最新の中国の状況を理解するために、昨年中国で撮影したばかりの写真を適用した。中国語初習者に対して、中国語だけでなく、変化の目まぐるしい最新の中国の状況を、語学学習とともに理解、定着させるためである。この写真についても、今後随時更新していく予定である。

3. 今後のSFCにおける中国語学習者への効果

 本教材開発により、e-Leaning教育システムによるアウトプット学習開発の効果が期待される。

a) 発音の自主的産出の促進

クイズ形式を通して、問題学習者が自分で音声表記の発音を考え、授業で学習した内容(中国語の発音)の自主的産出も促進される。

b) 学習の自己修正

クイズ形式では、選択した音声が正解ではない場合、最初からやり直すことができるので、初期学習段階における学習者の自己修正につながる。

c) 学習効果の向上

インプットとアウトプットの発音学習を相乗的に作用することで、声調、母音、複母音、子音、鼻音、単語の有効的な学習を実現できる。また、紙媒体の学習にはない聴覚情報を、e-Learningで補うことができ、学習効果の高い中国語教育を実現でき、中国語でのコミュニケーション能力の育成の実現に繋がる。

d) SFCにおける中国語学習の促進

SFCの中国語教育では、従来授業におけるアウトプットのためのコンテンツは非常に充実していた。しかし、今回の教材開発により、授業外におけるアウトプットのためのコンテンツを補充することができ、学生へのより包括的な学習環境の提供が可能となった。具体的には、今後ベーシック1のカリキュラムの中に本教材を導入し、学生の中国語学習における発音能力の向上と定着への教材の一つとして運用を行う予定である。これにより、SFC中国語教育において中心的であったインテンシブコースとベーシックコースの学習環境の溝を埋めることができ、より多くの学生に中国語教育の普及と中国語能力の定着を図ることができると考えている。

 

なお、本研究課題の遂行にあたっては、中国語e-Learningシステム構築とコンテンツ作成については2013年度訪問講師の黄琬婷氏、音声録音ではSFC中国語研究室講師の蘇明氏と馬燕氏、コンテンツ作成と確認には費燕氏、そしてシステム作成については2013年度環境情報学部2年の青木優子さん、ほか中国語研究室のSAや学生さんから多大なご協力をいただいた。この場を借り感謝の意を表したい。