2014年度 学術交流支援資金「海外の大学等との共同学術活動支援」報告書


大学院プロジェクト:インターリアリティ
担当:井庭 崇(総合政策学部)

本共同学術活動では、これからの社会を「人々が自分たちで自分たちのモノや仕組みを創造する」という「創造社会」(Creative Society)であると考え、それに向かうための新しい研究・開発の交流のプラットフォームを構築する。より、具体的には、オープンなコラボレーションによる創造・イノベーションの理論構築、方法論の開発、ツール開発のための国際的ネットワークづくりを行い、2015年3月に国際会議を慶應義塾大学にて開催する。

本共同学術活動では、これからの社会を「人々が自分たちで自分たちのモノや仕組みを創造する」という「創造社会」(Creative Society)であると考えている。創造社会では、誰もが様々な分野・領域で「つくる」ことをごく当たり前に行うようになり、「つくる」ということが、生活・人生の豊かさや幸せを象徴するようになると考えられる。かつてインターネットの登場によって始まった「情報社会」では、生活が変わり、組織が変わり、社会が変わった。同様に、「創造社会」の到来でも、生活・組織・社会のあり方が大きく変わることになるだろう。創造社会は,人々が自分たちで自分たちの認識・モノ・仕組み,そして未来を創造する社会である。創造社会は、企業等の組織だけでなく、一般の個人が「創造」を担う点に特徴がある。

かつてP.F.ドラッカーは、「知識社会」の到来を指摘したが、そこでの主眼は企業・組織と労働者をめぐる社会的変化であった(Drucker, 1993)。創造社会においても、知識社会と同様に「イノベーション」が重要であることは変わらないが、創造(つくること)が企業・組織の内に留まらず、また労働と切り離して捉えるという点で、よりラディカルである。そう考えると、「創造社会」、ひいてはそこに至までの「社会の創造化」は、企業・組織の現象ではなく、社会の現象として捉えるべきである。そのような観点で考えるとき、公文俊平の「情報社会」の議論が参考になる(公文, 2012; 井庭ほか, 2011)。オープンソース・ソフトウェア開発やWikipediaの編集などでは、従来の組織とは異なるかたちでコミュニティが形成されている。情報技術の発展により、人々は活動のなかで自由につながり組織化されていくのである。

同様に、「創造社会」では、これまで企業・組織で行われてきた創造行為が広く一般に解放されることを意味する。「創造社会」においては、人々の創造活動の過程で社会的なネットワーキングがなされ、コミュニティが形成される。つまり、「組織によって創造がなされる」ことから「創造の過程でコミュニティが形成される」ことへのシフトが生じるのである。そこで、その変化とはどのようなものなのか、そして、それらの変化は何をもたらすのかを考える研究、また、それを促進させる方法やツールの開発は、これからの未来に向かうための重要な準備となる。このような背景から、本共同学術活動では、学際的もしくは超領域的な研究・開発を行いながら、海外との連携を深めた。

本共同学術活動の一環として、2015年3月に国際学会 Collaborative Innovation Networks Conferenceを慶應義塾大学において開催する。この学会は、オープンなコラボレーションによる創造・イノベーションの理論構築や、方法・ツールの研究・開発に関するカンファレンスであり、Peter Gloor氏などとともに立ち上げた学会である。第1回と第2回がアメリカ、第3回がスイス、第4回がチリで開催された国際学会であり、私がConference Chairを務める。

本活動の成果は、以下の通りである。


【講演】

【ワークショップ実施】

【インタビュー】

【共同執筆論文】

【カンファレンス開催】