科目「デジタルファブリケーション」では、「ものづくり工房」およびメディアセンター内の「FabSpace」を使用して、3Dプリンタ、レーザーカッター、デジタル刺しゅうミシン、3Dスキャナ等を用いてものづくりの実習を行う。しかしながら、これらの環境では、次の2点がかねてより問題として指摘されており、授業の進行に支障をきたしていた。
ひとつは、英語でのFabSpace使用解説がなかったことである。もうひとつは、ソフトウェアが機器ごとにばらばらで、統一感がまったくなかったことである。
そのため、外国語の教材整備として以下のことを行った。
まず、英語でのFabSpace使用ガイダンスを制作し、下記に公開した。この映像は、研究室に所属するJianyo
Li君が、GIGA生の目から見て分かりにくい部分を整理し、作成した映像である。
もうひとつは、ものづくり工房にある機材(レーザーカッター、Shopbot)、およびFabSpaceにある機材(3Dプリンタ、デジタル刺しゅうミシン、ペーパーカッター)
のすべてをひとつのインターフェイスから操作できる汎用CAMの開発である。われわれが開発したFab Modules on
HTML5は、ソフトウェアをダウンロードしてインストールしなくても、ウェブブラウザを立ち上げるだけで稼働する。そのため、WindowsとMacの差さえも問題でなくなる。
Fab Modules on HTML5はこちら
これらの環境を用意することで、授業は非常にスムーズに進行するようになった。さらに、GIGA生も頻繁にFabSpaceを利用するようになり、他の科目でも「ものづくり工房」「FabSpace」の留学生利用率が高まったことが派生的な成果である。
しかしながら反省点としては、ものづくり工房の「デジタル刺繍ミシン」をカバーすることができなかった点である。「デジタル刺しゅうミシン」はそもそも
USBで制御することができず、ファイルフォーマットも特殊で仕様が公開されていない。次のステップとしては、G-Codeで制御できる「デジタル刺しゅうミシン」を研究室で自作で開発していくことがあげられる。
なお、この科目は、MITで開講されている
「How To Make Almost
Anything」や全世界のFabLabで開講されている
「Fab
Academy」を、より入門編に落とし込み、必ずしもデザインやエンジニアリングだけを専門としないSFC生にも広くデジタルファブリケーションを活用してもらおうという趣旨がある。しかし一部の教材は
「How To Make Almost Anything」や
「Fab
Academy」と共有することで、世界的に見て共通や、普遍的な知識として教授したいと考えている。
こういった大学の垣根を越えた授業リソースの共有のため、海外へ訪問し直接授業の様子や演習の風景を見学することも行った。
なお、筧康明准教授が「オープンデザイン実践」での活用のために開発しているFabble (
http://fabble.cc/)は、本授業でも利用させてもらっており、また水野大二郎講師と共同で開講している「オープンデザイン」でも授業の進行に利用され、ものづくり系の授業では共通のプラットフォームとして広がりつつある。日本語・英語の両方での投稿が増えてきており、GIGA生向けの「ものづくり」環境が整ってきていることを感じている。