2015年度学術交流支援資金(海外の大学等との共同学術活動支援)活動報告書

研究課題:イスラーム世界との共生を考える

研究代表者氏名:奥田 敦

所属:総合政策学部教授

 

 

概要

 

《分裂してはならない》とクルアーンに教えられているにもかかわらず、幾重にも活断層によって仕切られてしまっている観のあるイスラーム社会とその周辺について、シリア内戦による国内外の難民問題、ハラールビジネスをめぐる問題、あるいは日本におけるムスリムコミュニティの問題を取り上げ、いかにしたら人間同士としてのつながりを取り戻し、保持し、発展させることによって良好な関係構築ができるのかを、イスラームの教えそれ自体に立ち返りながら、信仰及びその実践の果たす役割に着目し、考察する。イスラームを取り戻し、イスラーム学を再興する試みの一部といってもよい。

 

 

主たる研究活動

 

T.ハラール・ビジネスに関する調査研究

U.シリア問題をめぐる調査研究

V.全国ムスリムコミュニティミーティングの開催

W.アラブ人学生歓迎プログラムとアラブ世界訪問プログラム

X.アッサラームウェブのリリースとアッサラーム・アクション

 

 

研究活動の成果

 

T.ハラール・ビジネスに関する調査研究

 神奈川県の大学発政策提案制度による「ムスリム接遇人材育成プログラムの開発と実施:共生的モデルの構築とともに」(平成26年度採択・最優秀提案、SFC研究所イスラーム研究・ラボ)との連携で、神奈川県内の飲食・観光・畜産業を中心に調査研究、飲食・観光業については、今後のムスリム対応へ向けて課題抽出を行い、解決への相談・助言を行った。また、県内関係業者らを対象とした「ムスリム観光客おもてなしセミナー」を9月と2月の2回にわたって開催した。

 

n  主な調査先(課題抽出と相談・助言も行った)

Ø  小田急電鉄本社(723日)箱根そば、箱根湯寮のムスリム対応、駅内の礼拝スペースなどについて意見交換。箱根そばについては、回転率の高い食販にハラール対応は無理との結論。箱根湯寮についてハラール対応の可能性を見ていくことに。

Ø  だるま料理店(83日)小田原城前の老舗日本料理店。唐破風入母屋造りの本館は、登録有形文化財指定。ムスリム専用メニューの考案を視野に。2月には、実際にムスリムメニューを試食。

Ø  小田原早川漁村(83日)早川漁港に隣接した複合飲食店施設。あぶりや、海舟、しらす市場。課題:あぶり屋の網焼きの網。メニューの中のみりん。電話・ファックスによるムスリム予約シートの作成要望。

Ø  箱根湯寮(1126日)箱根湯本、小田急系列の日帰り温浴施設。個室の露天風呂18室は関東圏最大規模。課題:ムスリム観光客の個室利用の際の予想される問題点。付設レストランメニューのムスリム対応。

Ø  神奈川県芦ノ湖キャンプ場(20162月)食材持ち込み自由のためすでにイスラーム教徒の利用実績あり。焼き網や鉄板に混入問題あり。ムスリム専用BBQ用具の貸出プロジェクトの実施をイスラーム・ラボと準備中

Ø  小野ファーム(20162月)すでにドバイへの輸出実績を積上げる都市型の牛農家。枝肉の評価では、松坂牛、神戸牛を超える。肥育牛の98%が4等級以上(全国平均は70%程度)。将来的な安定性確保できるのなら、ハラール牛としての出荷が最高の利益率。屠畜方法から生じるシミ問題が、国内流通用ハラール屠畜を妨げる要因。育てた牛に対する深い愛情を確認。

Ø  そのほか札幌東徳洲会病院、札幌市役所においても調査を行った(222日)。

 

n  ムスリム観光客おもてなしセミナー

Ø  1回ムスリム観光客おもてなしセミナー(917日@ワークピア横浜)

²  プログラム

1.      13:3013:40 開会式

Ø  共同開催者挨拶(神奈川県産業労働局観光部 国際観光課長 脇雅昭)

Ø  開会の言葉およびプログラム全体の説明(プロジェクト代表者 奥田敦)

 

2.      13:4014:10おもてなし基礎講座@「30分でわかるイスラーム」(講師:奥田敦)

Ø  イスラームの概要、ハラールとはなにか

 

3.      14:1014:30おもてなし基礎講座A「ハラールビジネスの現状」(講師:戸田圭祐)

Ø  ハラール認証について、ハラールビジネスの現状について

4.      14:4014:55おもてなしコミュニケーション講座「アッサラーム・アライクム」

(講師:奥田敦、植村さおり)

Ø  「アッサラーム・アライクム」とは

Ø  おもてなし表現紹介(英語、アラビヤ語を中心に)

5.      14:5515:25おもてなし実践講座@「県内のおもてなし事例紹介」(講師:植村さおり、小牧奈津子)

Ø  神奈川県課題抽出について

Ø  プロジェクト紹介と協力要請について

6.      15:2515:55おもてなし実践講座A「ムスリム観光客を受け入れる」(講師:奥田敦)

Ø  明日から実践できるおもてなしについて同業者のグループディスカッション

Ø  グループで話し合った内容の発表、講評

7.      16:0516:30修了試験

Ø  講座の内容に関する理解度チェック、アンケート実施

8.      16:3016:45閉会式

Ø  受講証授与

Ø  総括「ムスリム観光客接遇人材育成の意義」(プロジェクト代表者 奥田敦)

 

Ø  2回ムスリム観光客おもてなし研修会(216日@小田原市民会館)

²  プログラム

1.      開会式  13:3013:40

共同開催者挨拶(神奈川県産業労働局 国際観光課)

開会の言葉およびプログラム全体の説明(プロジェクト代表者 奥田敦)

2.      おもてなし基礎講座@  13:4014:10

30分でわかるイスラームの基礎」(講師:奥田敦)

Ø  イスラームの概要、ハラールとはなにか

3.      おもてなし基礎講座A  14:1014:30

「ハラールビジネスの現状」(講師:戸田圭祐)

Ø  ハラール認証について、ハラールビジネスの現状について

4.      おもてなしコミュニケーション講座  14:4014:55

「アッサラーム・アライクム」(講師:奥田敦、植村さおり)

Ø  「アッサラーム・アライクム」とは

Ø  おもてなし表現紹介(英語、アラビヤ語を中心に)

5.      神奈川県国際課ミニ講座  14:5515:00

「日本在住外国人ムスリムからのお願い」(講師:ネーマ・オスマン)  

6.      おもてなし実践講座@  15:0015:30

「おもてなしのポイントと対応例のご紹介」(講師:植村さおり)

Ø  神奈川県課題抽出について

Ø  プロジェクト紹介と協力要請について

7.      おもてなし実践講座A  15:3016:00

「ムスリム観光客を受け入れる」(講師:奥田敦)

Ø  明日から実践できるおもてなしについて同業者のグループディスカッション

Ø  グループで話し合った内容の発表、講評

8.      修了試験  16:1016:35

講座の内容に関する理解度チェック、アンケート実施

9.      閉会式  16:3516:50

受講証授与

総括「ムスリム観光客接遇人材育成の意義」(プロジェクト代表者 奥田敦)

 

n  関連の研究発表

Ø  奥田敦「ハラールとハラーム」同友クラブ理事会講演、同友クラブ、2015710日  

Ø  奥田敦「イスラームとどう向き合うか〜神さまのお話からハラールなおもてなしまで〜」神奈川経済同友会例会、横浜ロイヤルパークホテル70階レインボー、201568

Ø  奥田敦「イスラームを根柢から理解する〜IS・ハラールビジネスに惑わされない12のアラビヤ語〜」第1248回(2015年度第2回)経済同友会会員セミナー、日本工業倶楽部2階大会堂、201546

 

 

U.シリア問題をめぐる調査研究

 

混迷の度が深まるばかりのシリア情勢である。とくにSFCと関係の深いアレッポ大学の位置するアレッポ周辺は、いまだに激戦が続いている。そうして情勢の不安定さ、不透明さ、そして厳しさから、研究メンバーのアフマドマンスール博士の夏休みの一時帰国は取りやめになった。期間中、非公式の会合を持つと同時に、いくつかの研究発表を行った。

後述する第14回アラブ人学生歓迎プログラムで招聘したアレッポ大学医学部在学中のアフマド・ラーミー君が、アレッポへの強い愛でアレッポの再建に力になれればとSFCでの日々を送っていたことも、シリア問題に関係する特筆すべき事項である。

また、グローバルジハードの名で呼ばれているテロ行為は、本来のジハードを完全に踏み外したものである。専門家でさえ誤解しているこの点を明らかにするため、本来のジハードをこそ十全に実施されるべきとの考えの発表も行った。

 

n  関連の研究発表等

Ø  奥田敦「ジハードについて」九州大学イスラムウィーク、九州大学、2015510

Ø  奥田敦「イスラーム過激派の行動原理〜もっと深い理解を〜」佐倉市国際文化大学、佐倉市中央公民館、2015523

Ø  奥田敦「日本人ムスリムとともにジハードについて考える」日本ムスリム協会イスラームキャンプ、大地沢青少年センター、2015530

Ø  奥田敦「ジハードについて〜近時のシリア情勢にふれつつ〜」イスラムビジネス法研究会、西村あさひ弁護士事務所、201562

Ø  奥田敦、アルマンスール・アフマド、植村さおり「パネルディスカッション:シリアに平和を〜学術交流にできること〜」Ω21SFC2015710

Ø  奥田敦「イスラームとテロリズム〜ジハードについて〜」早稲田奉仕園講演会、早稲田奉仕園、2015727

Ø  アルマンスール・アフマド「アレッポの現在を語る」地域戦略研究(イスラーム圏)(大学院科目、担当奥田敦)第6回、ι21SFC20151111日。

 

 

V.全国ムスリムコミュニティミーティングの開催

 

 神奈川県の大学発政策提案制度による「ムスリム接遇人材育成プログラムの開発と実施:共生的モデルの構築とともに」(平成26年度採択・最優秀提案、SFC研究所イスラーム研究・ラボ)との連携で、88日には、全国ムスリムコミュニティミーティングを開催した。

 

n  プログラム

 

日 時           201588()13:3018:30

会 場           慶應義塾大学三田キャンパス421教室(南校舎2)



1部 13:30 − 15:30


13:30       開会

13:35       基調講演(慶應義塾大学総合政策学部教授 奥田 敦)

14:05       登壇者による報告

「ムスリムコミュニティが抱える「共生」上の課題について」 15:30      休憩(アスル礼拝)



215:50 17:30


15:50       ディスカッション

・ハラール食品とムスリム観光客への「おもてなし」

・ムスリム2世、3世に対する教育

・地域社会との付き合い方                など

17:30       休憩



3部 17:45 18:30


17:45       今後の方向性についての議論のまとめ

18:20       閉会の挨拶

18:30       閉会


登壇者:

・アキール・シディキ (宗教法人日本イスラーム文化センター会長)

・クレシ アブドルワハブ(宗教法人名古屋モスク代表理事)

・七種 和孝 (福岡モスク、ハラールフードsaidshop店主)

・サラ クレシ好美 (宗教法人名古屋モスク渉外担当理事)

・下山 茂 (東京ジャーミィ)

・中村 翁團 (福岡モスク)

・前野 直樹 (行徳ヒラーマスジド代表代理/イスラミック サークル オブ ジャパン日本人部代表)

 

・奥田 敦 (慶應義塾大学総合政策学部教授、同SFC研究所イスラーム研究・ラボ代表

 

 

W.アラブ人学生歓迎プログラムとアラブ世界訪問プログラム

 

n  アラブ人学生歓迎プログラム

111日から1115日にSFCにて湘南藤沢学会などからの助成によって開催された。招聘者は、シリアから一名(ラーミー君)とモロッコから2名(サルマーさん、アミナさん)。

今年の招聘者は、実行委員の人数の関係もあり、例年に比べ3名と少なかったが、その分、非常に中身の濃い、そしてハイレベルのASPになった。

ASPの活動は、日本語レポート作成と日本語スキット映像の2本柱からなる。レポートの中で、アミナさんは、チームワークのあり方の比較を行い、ラーミーさんは、延命治療に日本人の宗教観・死生観を訪ねつつ、自らの信仰のあり方にも向き合い、サルマーさんは、社会という船の乗組員としての私たちの自覚を促してくれました。テーマの設定もさることながら、それぞれが自分の問題としても作成したレポートであった。最終発表会では、それぞれの発表が詳細な調査結果とともに披露され、休講日の開催であったにもかかわらず、100名を超える学生たちが出席した。最終発表会では、ちょうど一時帰国中だった、フェズの林ひさ子先生はじめ、フェズの前任者小川ひとみ先生、その前任者長谷川富貴子先生、ラバトの坂東正子先生、かつてムハンマディーヤで訪問プロジェクトの際お世話になった平田紀子先生に登壇していただき、モロッコにおける日本語教育の現状と課題についてミニシンポジウムも開いた。

 スキット作成では、モロッコからの先輩留学生(サルマーさん)が、SFC入学を目指す後輩の高校生(アミナさん)に、1か月前に大学院生としてSFCにやってきたシリア人留学生(ラーミーさん)も絡んで、SFCを紹介するという、作品を撮影した。アラブ世界のみならず広く世界の日本語学習者、日本関心層にSFCの魅力を伝える内容になっている。

そのほかの活動として、 OBの菊池創太先生の勤める神奈川県立中央農業高校訪問(江原校長先生)では、これまでの野菜部と和太鼓部に加え、交流活動に参加する多数の学生たち、そして新しい先生方も加わり、さらにパワーアップした交流を行った。

さらに、着付け体験での藤田先生の熱いご指導や、茶道体験での奥田研茶道経験者による温かいお点前などの様々な行事といい、おにぎり・おにぎらず・炊き込みご飯など、生活班が心を込めて用意してくれた昼食メニューといい、雨に降られ、富士山は見えないし、5合目にも上がれなかったにもかかわらず、終始笑いの絶えなかった富士旅行といい、招聘者でなくても欲しくなるようなお土産班渾身のアルバムといい、ウェブ形式で招聘者・実行委員の熱い気持ちを伝えてくれた昨年までの形式を一新したメールマガジンといい、今年度の新しい試みには枚挙にいとまがない。全体をよくまとめてくれた総務班や、スケジュールと記録の管理を着実に行ってくれたシフト・ウェブ班の活動なども含め、本当に、実行委員が一所懸命に活動した。

また今年度ASPは、慶應義塾大学のスーパー・グローバル大学事業の一つに採択され、3人の招聘者たちは、期間中、慶應義塾大学の正式な留学生として滞在していたことも今回の特記事項である。神奈川県の大学発政策提案制度からも「ムスリム接遇人材育成プログラムの開発と実施〜共生モデルの構築とともに〜」の一つの柱として位置づけられている。

 プログラム全体について、サルマーさんには、「悪いところを一生懸命探そうとしたけれど、何も見つかりませんでした」、アミナさんには、「来年もまたASPに参加したい」、ラーミーさんには、「導きであり、(中略)大きな一歩だと思います」との感想もいただけた今年のASP。本当に例年にも増して招聘者と実行委員に恵まれた。 

 

n  アラブ世界訪問プログラム

 今回のアラブ世界訪問プログラムは、820日から927日の日程でモロッコを訪問した。モロッコ各地で、日本語教室を訪ね、教員、学生の皆さんと交流活動を行った。日本からの参加者は、奥田と院生2名、学部生3名。

Ø  マラケシュ(822日):カーディー・アイヤード大学の日本語教室は、1昨年に立ち上がったばかり。立ち上げに尽力されたアラブ圏の日本語教育では第一人者といってよい小林裕美先生と11名の学生たちが迎えてくれる。日本人学生一人ずつにグループを作ってマラケシュの旧市街を散策した。その後レストランでサンドイッチを食べながら交流を深めた。

Ø  アガーディール(822日):LIAL日本語教室。ターバルーティ美佳先生、2013ASP招聘者ファティマ・ブルカムさんはじめ20名あまりの関係者と日本語学習者が迎えてくれた。港沿いのレストランでの夕食会のほか、地元の祭りでにぎわうアガーディールの街を現地の学生たちとともに散策した。

Ø  メルズーガ823日):サハラ砂漠の淵に位置するオアシス。日中は焦げ付くような暑さでも夜になれば肌寒い。満天の星空と砂漠の日の出を満喫する。

Ø  フェズ:シディ・ムハンマド・ブン・アブドゥッラー大学日本語教室。林ひさ子先生、ASP2014招聘者イスマーイール・ナイト・ウアリー君と約35名の学生たちが迎えてくれる。フェズには、ASP2011の招聘者イドリース君の経営する日本語学校もあり、今やモロッコ最大の日本語学習者の規模を誇るといってもよい。まずは、大学の大会議室で交流会、日本側からは奥田のスピーチのほか、アラブ人学生歓迎プログラムの紹介、茶道を披露する。モロッコ側からは、フェズの紹介、民族衣装の試着体験が準備されていた。大学の後は、市役所を訪問し歓迎受ける。広報責任者からフェズの説明を伺う。その後、イドリース氏の学校へお邪魔し、学生たちとともに昼食、さらに旧市街へ向かって、案内なしには回ることのできない複雑な旧市街を散策した。

Ø  ムハンマディーヤ:ASP2008の招聘者で、現在はSFC政策・メディア研究科修士課程2年のボーアマル・ハサンさんに連れられてご自宅を訪問。モロッコの大農業地帯を地元の家庭料理とともに堪能する。

Ø  ラバト:ムハンマド5世大学日本語教室の坂東正子先生と日本語教育の助手を務めるASP2011の招聘者アシュラフ・アッドゥーさんと9名の学生たちが出迎えてくれた。ラバト郊外にある、世界最大の羅針盤を展示するBelghazi博物館をグループに分かれて見学。

Ø  カサブランカ:ムハンマド5世モスクをラバトの学生たちとともに見学。数か月後にASP2015で来日することになるサルマー・タービーさんの流暢な日本語による解説を聞く。ASP2012で招聘したウサーマ・ファトヒー君(現在はJICAと一緒に仕事をしているという)、ASP2014で招聘したシャイマー・アラミー・メッルーニーさん(彼女は、社長秘書として勤めている富士フィルムのカサブランカオフィスから休みを取って駆け付けてきてくれた)も合流し、旧交を温めた。

 

 モロッコでは、どこへ行っても過去のASP招聘者たちが、仲間たちとともに温かく迎えてくれる。日本語の先生方も非常に熱心で、先生方のお人柄が、言葉だけでなく立ち居振る舞いにまで影響し、素晴らしい日本語学習者たちが育っている。毎回感じることではあるが、今回の訪問では今まで以上にそのことを実感した。

 今回の訪問で出会った多くの学生たちの中から、ラバトのサルマーさん、そしてフェズのアミナ・ナイト・ウアリーさんが非常に優秀な成績で、ASP2015に招聘された。前述のASP2015の最終発表会の際のミニシンポジウムでも明らかになったが、モロッコの日本語教育界では、モロッコ人の日本語教師の育成が急務となっている。サルマーさん、アミナさん、そして現在SFCの大学院で学んでいるハサンさんに大きな期待が寄せられた。

 なお、2016年は、モロッコと日本の国交60周年にあたる。ASPを通じて、10年ほどの付き合いになるが、慶應義塾大学SFCとして交流活動を行い、これまで成果の発表などの機会も持てればと考えている。

 

 

X.アッサラームウェブのリリースとアッサラーム・アクション

 

「アッサラーム・アライクム(あなたがたの上に平安あれ)」と言ってみよう。それは平和を意味するアラビヤ語。学校にいても、職場にいても、外にいても、家にいても、小さな町や村にいても、大都市にいても、まして戦禍の中にいても、この挨拶を笑顔で交わし合い、平和を願う気持ちをつなげていこう。その言葉は、国も言葉も人種も年齢も住んでいるところも超えて、遠くの誰かを笑顔にするかもしれない。今の自分をちょっとだけ変えて「アッサラーム」からはじめてみよう。アッサラーム・アクションそれは世界の平和を実現するためのアクションです。」

 

空港総合研究所との共同研究によって、このメッセージとともに始まるWEB頁を立ち上げ、すでに様々な情報をアップロードした。このウェブそしてそこで提唱されるアッサラーム・アクションは、方法論としてのイスラームを用いながら、人間同士としてのつながりを基調としたガバナンス的な共生社会の構築を目指し、情報を発信し、また同時にそうした考えや運動の受け皿になることも目指したプラットフォームである。

 

n  関連研究発表など

Ø  奥田敦「『信仰のまっすぐな道』(スィラート・ムスタクィーム)、東京ジャーミイ・イフタール講話、東京ジャーミイ、2015712

Ø  奥田敦「イスラーム世界から学ぶ」相模原白門会、相模原市産業会館、2015627

Ø  奥田敦「イスラームとグローバルガバナンス〜クルアーンから見たISとハラールビジネス〜」SFCフォーラム第121回定例昼食会、慶應丸の内シティキャンパス、2015528

Ø  奥田敦「イスラームとは何か〜根本思想からライフスタイルまで〜」ムスリムインバウンド入門セミナー、電通本社ビル14階I会議室 電通本社、2015514

 

以上