2015年度 外国語電子教材作成支援 報告書
プロジェクトNO. 研究課題名 代表者 所属
3-13 スペイン語ベーシック1・2、インテンシブ1〜4、スキル 山本 純一 環境情報学部
0. はじめに
本研究は、SFC外国語教育の一拠点スペイン語研究室が、日々進化する電子媒体の学習環境に対応し、SFCの語学教育の理念に基づいた「Webを活用した学習者主体のスペイン語LMS(Learning Management System)の構築」を目標に行ったものである。
以下に示すように、SFCのスペイン語プログラムは、2014年度から履修コースが変わっている。
図1 2015年度現在 スペイン語履修モデル
1995年、インテンシブ開講当初のコースの目的は、スペイン語での「発信型」、つまり「スペイン語で意見を表明できる」コミュニケーション能力の育成だった。その後、二回に及ぶ大きなカリキュラムの改定の結果、本年度は現状のコースに対応すべく、HPの改定、Webへ新教材の追加、既存教材のバージョンアップとバックアップを図った。
1. 教材開発の背景と目的
1.1. 背景
スペイン語研究室は、2015年度秋学期から順次、新スタッフへの移行を予定していた。そのために必須の引き継ぎ作業が大きくまとめると、以下の2点あった。
1.1.1. サーバーのバックアップ
2014年度に実施されたSFC、ITCのサーバーの置き換えに伴い、スペイン語コース全般の電子教材に不具合が生じていた。その結果、現状の電子教材の調整が必須であった。具体的には、ムードルで作成されている現スペイン語のWEB教材が、ITCのサーバーのバージョンアップと、ムードルのバージョンアップと、両者の改定がからみ、現在、履修者を混乱させる様々な問題が起きていた。その解決が今年度の最優先事項であった。
地域研究・語学の専門教員のみの研究室では、電子教材に関わるIT技術、それを外部に依頼する資金の有無は、研究室の存亡に関わる。20年にわたり、スペイン語の履修生であり、IT技術のあるスタッフの養成とその関係維持をかろうじて図ってきたが、来期から、専任・準専任の両者が交代することになった。今年度は20年間の電子教材開発の歴史をまとめる重要な年であり、さらに、電子教材の不具合を解決し、運用が順調に継続できることを確認することが、一番重要な目的となった。そのためには、卒業生など外部のウエブの専門家の助言を受けて、今後のスペイン語授業内で、問題なく電子教材の運用ができ、また、引継ぎがスムーズに行くこと、さらに、改善やバックアップをする必要があった。
1.1.2. アカデミックライテイング教材の作成
2014年度から導入している新シラバスに基づき、電子教材の見直しと改訂、新規作成をはかった。新シラバスが施行されて、一年が経った現状を分析し、授業を支える教材を電子化し今後の方向性を探った。具体的には、これまでなかった新たな電子教材の追加である。ベーシック1からスキルまで一貫したシラバスに基づき、スペイン語アカデミックライテイングのための入門用の作文教材の作成ならびに電子化を行った。
1.1.3. アカデミックライテイング教材で学び、スペイン語で書いた卒業制作の提示
ベーシック1から、スキルAまでSFCで学び、アカデミックライテイングの作文教材を参照し、卒業制作をスペイン語で書き上げた学生の卒業制作を一例として掲載した。
2016年度以降、SFCで、初めてスペイン語を学び始める学生にとって、最終目標として、自分の卒業制作を、スペイン語で書き表すことができる、という具体的な目標設定と、それが達成できたモデルとして、参照してほしいという研究室スタッフとしての願いをこめて、2015年度の卒業制作の一例を掲載する。
1.2. 目的
インテンシブ開講当初のコースの目的は、スペイン語の「発信型」、つまり「スペイン語で意見を表明できる」コミュニケーション能力の育成だった。その後、二回に及ぶ大きなカリキュラムの改定を行い、14年度から、入学年度一年での集中的なスペイン語学習へと転換、新カリキュラムのもと、各コースに対応すべく、様々な教材改定や修正が必要になってきている。
現在のSFCのスペイン語学習の最終目的は、大学レベルで求められる知識や各自の専門について、スペイン語で読めること、書けること、また、聞いて理解でき、話すことができる。すなわち、アカデミックレベルでのインプットとアウトプットができることである。日常会話や趣味についてのテーマは、語学学校の教材が十分に準備されている。SFCで学び、研究を極めていく中で、スペイン語で自分の専門について、受信発信できる。それが最終目的である。
一方で、2016年度は、スペイン語研究室のスタッフの大幅な刷新が予定されている。そのために、14年度から実施されてきたコースを振り返り、シラバスを見直し、全コースの教材の整理・刷新・新規追加作業の必要に迫られていた。具体的には、2015年度から、スキルを二段階にわけ、スキルBを履修し、その後のスキルAを最終レベルのクラスとして位置づける形で、学習モデルを刷新した。 それに伴い、新たな電子教材の作成に取り組んだ。
2.2. 本プロジェクトで作成した教材
2.2.1. スペイン語アカデミックライテイング入門(アカデミックライテイングシリーズの入門)
前述した目的のために、インテンシブ4・スキルABという一貫したシラバスのもとに、スペイン語でかかれた資料・文献・論文・レポート・ニュースなどを扱いながら、段階的に、アカデミックライテイングができるという目標に向かう第一ステップの入門クラスを作成した。これまでの会話中心のクラスからの方向転換である。
論理的な文章を書くためには、数字を扱う表現は、不可欠である。数字をあげて、データを示すという基礎的な論述展開をするために、スペイン語で、どのように数量表現をするのかを学ぶことが目的である。
数量表現を学ぶためには、1)構文を学ぶ、2)語彙を覚える、3)書いて添削を受ける
受講者には、このプロセスを繰り返し、最終的に、グラフや表をもとに、数字を使って解説をするというスキルを得ることが望まれている。これを、インテンシブ4の授業に取り込んだ。
これに続く授業であるスキルA ,BとトータルでSFC独自の教材を作成した。「解答ノート」教科書の課題作文の模範解答を自分で、作成する。以上の教材を新規作成し、電子化を目指した。
2.2.2. 上述したアカデミックライテイングで学び、スキルAで自分の専門について、スペイン語で論述した卒業制作
前述したアカデミックライテイングで学びスキルAで論文指導を受けた受講生のスペイン語版卒業制作は以下の通り。
2.2.3. 電子教材の改訂版と、バックアップを行った。以下の通り。
3 研究成果物
スペイン語研究室HP : http://estudio.sfc.keio.ac.jp/ こちらから以下にアクセス可能。
1)アカデミックライテイング入門: http://estudio.sfc.keio.ac.jp/el/
2)アカデミックライテイング入門からスキルAを受講し、スペイン語で卒業制作を書いた例:
松澤 志寿 『第2外国語学習が与えるコミュニケーション・スタイルへの影響 -スペイン人日本語学習者を対象とした「遠慮」・「察し」に関する調査-』2015年度秋学期 卒業制作(2016年2月末現在では未公開)
3)スペイン語研究室の電子教材のバックアップの作成:
http://160.16.217.7/blog/
http://160.16.217.7/el/
4 最後に
スペイン語の専攻学科はないSFCで、ゼロからスペイン語を学び始めた学生が、スペイン語を履修し続けた結果、4年後、自分の専門を、スペイン語で、書き表すことができる。そういうプログラムを、さまざまに模索しながら、提供しようしていること。これを、2016年度の次世代の全スペイン語研究室スタッフ(専任教員、準専任教員、非常勤教員、TA、SA)と、スペイン語履修生が、理解してほしいと強く願う。20年にわたり、シラバスを改定し、それに基づき、教材開発を続け、現在の電子教材を蓄積してきた2015年度の第一世代SFCスペイン語研究室のスタッフ全員からのメッセージとして、次世代に受け止めてもらいたいと強く願う。特に、SFCの言語教育の理念があってこそ、自由度の高い授業設計が許されているのであり、理念なき自由度にならないことを、切に願っている。
文責 寺田裕子(総合政策学部 訪問講師(招聘)) hterada@sfc.keio.ac.jp