<分散管理型DBMSの必要性について> データベースについての私のアイデアをまとめておきます。 まず、企業などで実際にデータベースを導入する際には、企業内の情報 リソースにどんなものがあるか、その情報の階層性や流れはどのように なっているのかということを分析することから、設計をしてゆくのだと 思います。 たとえばこれまでの日本の会社組織においては、情報は、ヒエラルキー的な 会社の組織構成に沿っての流通されるものでした。今後求められるであろう 企業の姿は、ネットワーク型の組織構成をとり、社内外での情報共有・ 情報流通の自由度の高いものであるのでしょう。 こうした企業の実態に則して、データベースシステムはデザインされるべき だと考えます。 このとき注意しなければならないのは、実際の企業の活動の中では、 社員一人一人のレベルにおいて、情報の収集・生成(打ち込み)、 関係づけ、編集、発信を行うことから、業務が運営されている点です。 社内データベースは、 こうした社員一人一人が業務を行なう上での情報面での支援ツールというよりも、 業務の実態そのものを行なう環境、「場」となってゆくはずです。 それでは、既存のデータベースシステムは、このような「場」として 相応しいものでしょうか? 現時点では否、です。 現在のデータベースシステムは、階層的なヒエラルキーによる管理パラダ イムに縛られており、データベースに関する権限が管理者に一極集中します。 このため、データベース管理者に対する能力的要求や負担は高いレベルの ものとなり、データベース管理者を育成するコストや人件費は高価なものに なります。 あるいは、企業経営における職務上の責任・権限の主体(役員、管理職等) と、情報管理における職務上の責任・権限の主体(データベース管理者)が かけはなれていることから、互いに意見がすれ違い、実態に則さないデータ ベースの運用が行なわれたり、企業の業務の実体的部分にデータベースが 利用されずに留まってしまう危険があります。 現在のデータベースシステムの上では、データ構造は最初に一度作られると、 なかなか変更のできない静的なものになりがちです。そのため、 データベースを最初にデザインする管理者の責任は多大なものとなります。 逆にエンドユーザの視点からすると、日常の業務は、決められたフォームに データを打ち込むだけのものになります。 つまり、現在のデータベースシステムでは、システムの改革・構造の再編を 行うためのコストが非常に高いものとなります。これは、時代の要請に反し たものです。このコストをいかにすれば引き下げてゆけるのかを、考えなく てはいけないのではないでしょうか。 私は、「エンドユーザ」「アプリケーションプログラマ」「データベース 管理者」という3者、「設計」「実装」「利用」の機能を明確に分けて しまうような、現在のデータベースシステムの構造を問題視しています。 ここで、データベースの管理権限の分散、管理権限の階層化、 グループ単位への管理権限の委譲の機能を備えさせること、 レコード(インスタンス)単位の権限の設定だけではなく、 テーブル(クラス)単位の権限の設定を行なえるものとし、 一般ユーザー権限でもある条件の上では、 データ構造そのものを動的に拡張させてゆくことができるような、 多人数による分散協調的なデータベース構築・記述のパラダイムが 必要とされていることを、実装によって示したいと考えています。 具体的には、オブジェクトにアクセスする権限の可否を、 単一のパスワードによるセキュリティやロックなどによる、 低レベルの実装をそのままユーザーに利用させるのではなく、 合意形成、意志決定ルールなどに基づいて、 他のオブジェクトの属性などを取得して権限の可否を決定する 高レベルの実装を行なうための、一般的なインターフェイスを デザインし、リソース管理ルールの選択は、関係コミュニティのメンバーの 合意・承認によって行なわれる管理システムを構想しています。 まずは、既存のデータベースシステムの既存のセキュリティ機構の上で アプリケーションレベルで実装を行ない、次いで、 オリジナルのオブジェクト指向データベースシステムを実装し、 その中での基礎的な機能の一部として実装する、 というようなイメージを描いています。 また私は、以上のような分散管理型データベースシステムを扱う上では、 インターフェイスとしては、同期的・非同期的な情報伝達を統合した、 リアルタイム・マルチユーザーのコミュニケーション環境が 必要になると考えています。 データベース本体の作成と並行して、 マルチユーザーVR環境、テレ・プレゼンスの部分と、 その中での情報ブラウザ・グループウェアの作成を行なう予定です。 これはすなわち、このVR環境を、 「分散管理型データベースシステムのインターフェイス」 として実装しようというものです。