1999年度 森泰吉郎記念研究振興基金 研究助成金報告書
「研究育成費 修士課程・博士課程」

研究課題名

「人工網膜カメラを用いたハイパーコラム構造の生成に関する研究」

研究代表者氏名

政策・メディア研究科・博士課程1年
茶志川孝和

研究組織
氏   名 所属・職名・学年等

茶志川孝和 政策・メディア研究科 博士1年
岡宗一 政策・メディア研究科 博士2年
吉池紀子 政策・メディア研究科 修士2年


1.目的:

 視覚パターン認識における振動同期仮説に基づき,脳内皮質のハイパーコラム構造を情報生成の基本単位とする認識モデル研究の助走的なものとして,ハイパーコラム構造を撮像画像から生成することを目的とする.なお,来年度には本研究成果を足がかかりに独自の認識モデルの研究を行う予定である.長期計画としては,本研究の成果をロボット(MINDSTORM LEGO社)のセンサーの一つとして応用し,さまざまな視覚認識モデルの実験を行なう予定である.

2.背景:

 生物システムと人工システムの違いはその柔軟性に見出すことができる。下等生物から高等動物まで、生物システムは、不確定な環境のなかでも柔軟な活動を可能にしている。生物システムがもつこの柔軟性は要素自身の持つ自律性と要素の関係生成の多様性に由来すると考えられる.そして,その多様性を決定付けているものは,要素が集まって出来る構造であり,また,それこそが生物システムの様々な行動を決定付ける設計図(プログラム)であると我々は考える. 要素の関係生成の多様性の一つとして,生物システムにおいて統合的な振る舞いを発現する様々な例で観察され、統合の基本原理だと考えられている"引き込み現象"が挙げられる."引き込み現象"とは非線形振動子が相互作用して一定の位相関係を安定化したリズムを刻む現象である.この引き込み現象に基づく視覚認識モデルとして,脳の中で神経の活動のリズムが同期したり非同期になったりすることで,様々なものを認識しているのではないかという仮説(振動同期仮説)が注目された.この仮説は1980年代末にドイツのグループのネコ視覚野の電気生理実験で刺激依存的活動が40ヘルツ近辺の周期的活動であること、そしてまとまった対象物は一かたまりの集団の同期活動で表現されることを実験結果が示唆したことに基づいてる.一方,神経回路の振動発現はその構成要素であるコラムに由来すると考えられる.そのコラムは脳内皮質に特長量の選択性のコラム集団であるハイパーコラム構造としてみいだすことが可能である. 現在振動同期仮説に基づく数多くの認識モデルが報告されているが,非常に単純な図形から生成される,ハイパーコラム構造を対象としている研究が多く,実際の画像からハイパーコラム構造を生成し評価するといった例はほとんどない,この原因として,画像から短時間である特長を抽出し,それを選択したコラム集団を生成することが難しいことが挙げられる.そこで,我々は人工網膜カメラを用いて独自に設計したハイパーコラムを生成し,振動同期仮説に基づく数多くの認識モデルの実用性を高めることを試みる.

3.方法と実験:

4.まとめと今後の展望

5.参考文献:

6.参考(パルス伝達型ニューラルネットワーク)


慶應義塾大学SFC研究所