言語の図的表現化機能をもつ対話型進化システムの研究

政策・メディア研究科 博士課程 1年

伊藤英二


対話型進化システム

対話型進化システム(もしくは、一般的には対話型進化的計算)は、人間の評価系をシステムの一部に組み込み、その評価を基に遺伝的アルゴリズム(GA)、遺伝的プログラミング(GP)、などでシステムを最適化させる技術である。対話型進化システムをベースにして作られた創作支援システムが既存のものと異なるのは、うまく表現できないイメージを多くの組み合わせの中から繰り返し選択させることで、操作者のイメージにあったものへと漸次的に収束させることができる点である。また、人間が簡単には気づかないような組み合わせを、まったくのランダムではなく、操作者の感性に合わせて提示することが可能であり、創作支援システムとして有望視されている(画像や音声の検索システムや合成システムへの応用が多い)。

本研究では対話型進化システムに言語の図的表現化機能を持たせることを検討し、ネットワーク環境で実験を行った。当初、表現の質やパターンにフォーカスを当てていたが、徐々にネットワーク上でのコラボレーションの奥の深さに、研究の方行が変わりつつある。現在はデータベースのアクセスの方法に新たなアイディアを見出し研究を進めている段階である。


Creative Flower 2

図1. Creative Flower 2

Creative Flower 2 は、旧バージョンよりも表現が豊かになり、機能が増え、使いやすさが向上した。Select1〜3をクリックするとプルダウンメニューが開き言葉(特に感性語)を選択することができる。この状態で「NEW」ボッタンを押すとそれをフィルターにし、花のデザインを簡易的に生成することができる。select1は色、select2は形に意味(感性レベルで)が近いものを収録した。Select3は「開放的な」といった抽象的なものや「ヒマワリ」といった具体的なものを集めた。例えば、 select1 は、燃える,熱い,暑い,ホカホカ,温和,寒々した,寒い,冷たい,涼しい,柔らかい,硬い,ふわふわ,鮮やか,爽やか,軽やか,興奮する,活動的,刺激的な,危険な,派手な,ケバケバ,アンニュイ,ドキドキ,,,,等、select2-3を合わせて90語。この90語は当初、ターゲットにした800〜900語から絞り込んだものである。 操作者は旧バージョンでの基本的な操作で生成したデザインを3つの感性語のフィルターで登録することができる。ソフトウェアはその人の感性パターンを学習する。

図2. ホカホカ + 丸い + 開放的な

図3. 熱い + 大きい

図4. ヒマワリ

研究の成果と今後の予定

Creative Flowerは、The 2nd International Conference on Cognitive Scienceで発表した。 Creative Flower2は第17回日本認知科学会全国大会で発表予定(申請中)。また、2にいたるまでは は1999年11月からホームページを始めたCreative System 研究会(リクルートの「あちゃら」で多少紹介された)の会員に実験および、チェックをしてもらった。当初は予定通り3次元化も考えていたが、マシンのスペックが現段階では追いつかないのと、2次元の方がデザインらしく、かつ美的にも優れているため、2次元でのクオリティを上げた。現在は通信機能をパワーアップし、データベース上で他の参加者の感性情報を利用しコラボレーションができる(単に画像データ等のダウンロードではなく)ものを製作している。このバージョンは3月のPRIX ARS ELECTRONICA 2000 に応募予定である。