(1)人々の選好や価値観の変化
(2)米国のスーパーファンド法・ISO14000シリーズの新条項
(3)国内「新総合土地政策推進要綱」
基本的に地価は、他の財と同様その土地が作る収益を資本還元して決まるべきものだが、一般的には土地市場を介して形成されるものであり、その土地や周辺地域で展開される社会・経済活動やマクロ経済フレームが反映された結果として形成される。しかしながら、人々の選好や価値観は時代とともに刻々と変化しており、従来の土地評価と乖離しつつある。
また、米国のスーパーファンド法に影響を受け、世界的にも2001年にISO14000シリーズの一項目に「土地評価額に土壌・地下水汚染状況を含む」条項を制定する見通しが発表された。これにより、土地の質的価値が土地売買や担保価値に反映されることが期待できる。
国内では、1997年に政府は、土地取引の活性化と有効利用を推進する「新総合土地政策推進要綱」を発表した。これは、土地政策の基本的な方向を「地価の抑制」から「土地の有功利用促進」へと転換する新しい動きである。これらの定期借地権や不動産の証券化等により、土地の所有から利用への移行が私たちの身近な問題となった今、利用者の価値観に対応した合理的で新しい土地評価の方法について検討する必要がある。同時に、適正な地価を明示するのではなく、個人の選考を明確にして様々な土地評価の結果を提供するシステムの開発が求められており、それは人々の多様な価値尺度の形成を支援するための情報を提供する必要がある。
意義:
本研究で開発する地理情報システム(GIS)による土地評価システムでは、従来のようなマクロレベルの土地評価に留まらず、取引対象となる個別の土地単位での情報を提供することが可能となる。また、数値の羅列ではなく、位置情報と属性情報をビジュアルに表現するため、空間格差の把握がより容易となる。
このように、様々な空間情報を把握しながら地価という土地総合評価を予測し、土地取引や都市計画の合意形成を進めていくためには、現実世界を視覚的にモデル化して表現するGISが有効であり、本システムは今後様々な空間情報をシームレスに統合して議論展開をしていくための受け皿として十分な機能を備えている。
目的:
本研究では、土地の資産価値としての変動を従来の分析のようなマクロレベルではなく、都市圏レベルさらには地区レベルにおいて特定可能なモデルの構築を行う。モデルの最下層にあたる地区レベルにおいては、従来の評価軸である利便性や集積度をベースに、情報非公開であった大気汚染、緑被地、騒音等の周辺環境情報及び地盤等の災害リスク等を考慮に加え、多様な視点から新しい価値観に基づく合理的な土地評価を検討する。
これにより、Internet GISをツールとして個人レベルの選好に対応した土地評価シミュレーションを通じて幅広く情報を提供することを目的とする。