はじめに
戸田好美:「霊長類Alu散在性反復配列挿入部位の配列特徴に関する解析」
斎藤輪太郎:「古細菌の翻訳開始領域のコンピュータ解析」
鷲尾尊規:「転写終結機構解析」
岡田拓:「免疫グロブリン遺伝子の発現頻度とベンドサイトとの関係」
長田木綿子:「Analysis
of base-pairing potentials between 16sRNA and 5' UTR for translation
initiation in various prokaryotes」
後藤マミ:「バクテリアゲノムにおけるCpGジヌクレオチドの頻度低下に関する領域別・コドンポジション別解析」
鵜野レイナ:「大腸菌組換え促進配列(χ配列)プロジェクト」
坂井寛章:「バクテリアゲノムにおけるコドン使用の偏りと翻訳機構との関係」
福田陽子:「オーバーラッピング・ジーンプロジェクト」 終わりに
- はじめに
- 生命の設計図であるDNAの塩基配列をコンピュータによって解析することにより、これまでの生命科学にはない「生命情報科学」の分野を確立することを目的に研究を行ってきている。
現在二十数種のバクテリアゲノムの全塩基配列が読み込まれ、データベースに蓄積されている。このことにより、解析の対象が非常に広がり、より多様な研究を行うことが可能となった。実際99年度は、多くの学会に参加して研究成果を発表するなど、実り多き1年となった。ヒトの全DNA塩基配列を決定しようという「ヒトゲノム計画」の完了を2003年にひかえ、「ゲノム生物学」はこれから益々重要な位置を占める学問となるであろう。今後そうした中で、我々も積極的に「ゲノム生物学」に貢献していきたいと考えている。昨年度は以下の9つのサブプロジェクトを設定し研究を行った。その概要と実績を示す。
- 霊長類Alu散在性反復配列挿入部位の配列特徴に関する解析
- 昨年度に引き続き、霊長類ゲノムに特有のAlu散在性反復配列挿入部位の配列特徴を解析。ホストゲノムに挿入する際に標的となる配列パターンの有力候補が存在することを、配列の網羅的解析により示した。これについては、JMEに論文掲載が決定している。また、その配列がAlu配列挿入の標的となる所以について、他の生物種の散在性反復配列についても調べることにより、示すことを試みた。
実績 掲載論文:
- Toda Y, Saito R, Tomita M, "Characteristic sequence pattern in the 5- to
20 bp upstream region of primate Alu elements." Journal of Molecular
Evolution 2000 50:(未定) in press.
- 戸田好美,1999."霊長類ALU配列5'外側のALU挿入に関する規則的配列パターン" 生命と情報 5:78-87.
- 古細菌の翻訳開始領域のコンピュータ解析
- 古細菌の翻訳開始のメカニズムはまだ完全には理解されていない。我々のこれまでの研究で真核生物のゲノムの開始コドンの前の領域は開始コドンの後に比べてATGが少ないことが示されている。これは真核生物の場合、リボソームが
mRNA上を移動しながら開始コドンを探すためだと思われる。つまり、開始コドン前にATGという塩基配列のパターンがあると、リボソームは誤ってそこから翻訳を開始してしまう可能性が高くなるので、これらのATGは淘汰されてきたと思われる。一方、真正細菌ではリボソームが直接Shine-Dalgarn
o(SD)配列に結合するため、開始コドン周辺のATGの頻度の分布が開始コドンを中心に左右対称だった(Saito and Tomita, 1999)。
さて、開始コドン周辺におけるATGの出現頻度の分布を4つの古細菌で調べたところ、M.ja
nnaschiiとP.horikoshiiで真核生物に類似する分布が観測された。これはこの2種の生物ではリボソームが翻訳開始時にmRNA上を移動する可能性があることを示唆している。一方でこれまでの我々の研究で古細菌にはSD配列と思われる配列が古細菌の翻訳開始領域にあるのを観測している(Osada
et al.)。 これらの結果を統合して考えると、古細菌では翻訳開始時にリボソームがmRNA 上を移動してSD配列に結合している可能性がある。
実績 学会ポスター発表:
- 「古細菌の翻訳開始メカニズムが真核生物と真正細菌の機構を併せ持つ可能性:ゲノムのコンピュータ解析による予測」
斎藤輪太郎、冨田勝;第22回日本分子生物学学会年会 1p-0091.
掲載論文:
- Saito,R. and Tomita, M.(1999) Computer analyses of complete genomes
suggest that some archaebacteria employ both eukaryotic and eubacterial
mechanisms in translation initiation. Gene 238:79-83
- 斎藤輪太郎,1999."rRNAオペロンの発現制御領域のコンピュータ解析" 生命と情報 5:30-41.
- 転写終結機構解析
- 枯草菌の転写終結のリードスルーを起こすと思われる箇所とそうでない箇所との比較を行った結果、いくつかのリードスルーの箇所には次の遺伝子の転写開始制御の配列が存在することが分かった。この転写開始制御の配列はロー因子非依存性ターミネーターを含み、大腸菌で言うアテニュエーターに相当する機能を持っている。枯草菌ではこれらの制御配列は
S-Box,
T-Boxと呼ばれており、大腸菌と同様にアミノ酸合成系の遺伝子の制御に多く見つかっている。また、リードスルーするターミネーターでは次の遺伝子内や次の遺伝子の直前に存在するものもあり、これらが翻訳機構との関係でリードスルーを起こす可能性が示唆された。今後は転写終結配列自体の詳細の比較を行ったが明確な違いをみることはできなかった。ノーザンデータ自体をもう一度見直し、リードスルーの状態と配列の特徴との関係をみる必要性がある。
実績 学会ポスター発表:
- The 10th International Conference on Bacilli. June 27th - July 1st,
1999, Baveno, Italy
- 枯草菌研究会, 焼津1999年8月26 - 28日
- 日本分子生物学会, 福岡1999年12月7 - 10日
- 3rd Annual Conference on Computational Genomics, Nov 18 - 21, 1999
Baltimore, U.S.A
掲載論文:
- 鷲尾尊規,1999."古草菌におけるロー因子非依存性ターミネーターの配列解析" 生命と情報 5:89-101.
- 免疫グロブリン遺伝子の発現頻度とベンドサイトとの関係
- 免疫グロブリン遺伝子はH鎖とL鎖の2種のタンパクが2つずつ集合してできた4量体であり、L鎖についてはκとλの2つのタイプが存在する。本研究では、ヒトの免疫グロブリンV遺伝子セグメントの少数が優先的に発現する原因を調べるために、Vλ遺伝子セグメント周辺におけるDNAのベンドサイトを推測した。
ヒトの免疫グロブリンλ軽鎖遺伝子領域には36(もしくは
30)の機能可能なV遺伝子セグメントが存在し、VJジョイニングというDNAの再編性によってそのなかのひとつが選択される。だが、その発現量は一様ではなく、特定の限られたV遺伝子セグメントに偏る傾向がある。Vλ遺伝子セグメントの発現に優先性が生ずる原因を明らかにするためにDNAのベンドサイトを推測したのは以下の理由からである。
DNAのベンドサイトはタンパクのDNAへの結合及びヌクレオソームの安定性に影響を及ぼし、タンパクの結合とヌクレオソームの安定性は遺伝子の転写やVJジョイニングに関わる。よって、Vλ遺伝子セグメント周辺のDNAベンディングの位置によっては発現頻度に変化があるものと思われる。免疫グロブリン遺伝子はH鎖とL鎖の2種のタンパクが2つずつ集合してできた4量体であり、L鎖についてはκとλの2つのタイプが存在する。本研究では、ヒトの免疫グロブリンV遺伝子セグメントの少数が優先的に発現する原因を調べるために、Vλ遺伝子セグメント周辺におけるDNAのベンドサイトを推測した。
ヒトの免疫グロブリンλ軽鎖遺伝子領域には36(もしくは
30)の機能可能なV遺伝子セグメントが存在し、VJジョイニングというDNAの再編性によってそのなかのひとつが選択される。だが、その発現量は一様ではなく、特定の限られたV遺伝子セグメントに偏る傾向がある。Vλ遺伝子セグメントの発現に優先性が生ずる原因を明らかにするためにDNAのベンドサイトを推測したのは以下の理由からである。
DNAのベンドサイトはタンパクのDNAへの結合及びヌクレオソームの安定性に影響を及ぼし、タンパクの結合とヌクレオソームの安定性は遺伝子の転写やVJジョイニングに関わる。よって、Vλ遺伝子セグメント周辺のDNAベンディングの位置によっては発現頻度に変化があるものと思われる。
RSS及びその周辺、プロモータ領域周辺、イントロンについてベンドサイトを推測した。R
SSについてはVJジョイニングで重要な役割を演ずるので、配列の比較も行なった。その結果、比較的発現する遺伝子が属しているファミリーII
のV遺伝子セグメント周辺にヌクレオソームと関係のありそうなベンドサイトの周期性があり、もっとも発現頻度の高いV1-4はその傾向が顕著である。だが、他のファミリーの比較的発現しているλ遺伝子セグメントにはそのような傾向は見られなかった。
実績
掲載論文:
- 岡田拓,1999."抗体遺伝子のコーディングエンドとRSSとの関係" 生命と情報 5:166-174.
- Analysis of base-pairing potentials between
16sRNA and 5' UTR for translation initiation in various
prokaryotes
- 原核生物の翻訳は、遺伝子上流のSD配列にリボソーム小サブユニット中の16SrRNA3'
末端が結合し、相補鎖が形成されることをシグナルとして開始される、という説が一般的に受容されている。本研究は、この2配列の結合の強弱を解析するため、Turnerの提示する熱力学的パラメータに依り、自由エネルギーを算出し、定量化した。
大腸菌において、平均の自由エネルギー値は、急激に低い値となるポジション(-15周辺のポジション)が見られた。これは、このポジションにおいて2RNA
鎖の結合力が強いことを示す。この結果は、実験により示された、16SrRN3'
末端とSD配列が相補鎖を形成し、それが翻訳開始のシグナルとして機能する、という説と一致している。SD配列のコンセンサスが強いといわれるB.subtilis
では、大腸菌より数塩基上流のポジションで、大腸菌よりより深いドロップがみられた。また、大腸菌に近いH.influenzaeや、H.pylori,
A.aeolicusにおいても、どうように急に低い値となるポジションが存在した。
しかし、M.genitalium、M.pneumoniaeをはじめとする数種では、この値の低下は非常に小さいものであった。
また、原核生物ではない古細菌でも、同様のポジションで急激な値の低下が見られることが分かった。
対して、コントロールの酵母では、それらの場所における値の低下は見られなかった。
以上の結果から、次の2点ことが示唆される。まず、同じ原核生物でも、種によって、このシグナル(SD16SrRNA 3'
末端のインタラクションによる翻訳開始のシグナリング)に対する依存度が異なるのではないか。また、他の点から真核生物に近いと言われる古細菌において、翻訳開始でこのシグナルが利用されている可能性が強いことを示唆する。
また、大腸菌において、上の結果が従来からの説と合致する結果を示すことから、この相補鎖アルゴリズムは、このシグナルの有無、強弱を推定するのに役立つと考えられる。
実績 掲載論文:
- 長田木綿子,1999."Shine-Dalgarno配列と16SrRNA3'末端の相補鎖の自由エネルギー解析" 生命と情報 5:12-28.
- Y Osada, R Saito and M Tomita (1999), Analysis of base-pairing
potentials between 16S rRNA and 5' UTR for translation initiation in various
prokaryotes, Bioinformatics, Vol.15, (In Press)
- バクテリアゲノムにおけるCpGジヌクレオチドの頻度低下に関する領域別・コドンポジション別解析
- 塩基配列中のdinucleotideの頻度傾向は同じ組織間において類似しており、「genomic
signature」と呼ばれるパターンを構成している。このような偏りの中で、CpGの頻度低下は一般に脊椎動物や植物といった高等生物の特徴であることで知られており、その原因としては主にCpGのシトシン塩基の
5'末端におけるメチル化によるTpG/CpAへの変異が挙げられている。無脊椎動物であるマラリア原虫においても脊椎動物同様の低CpG傾向がみられ、シトシン塩基のメチル化であると考えられている。脊椎動物のミトコンドリアにおいてもCpGの低下は見られるが、ミトコンドリア自身にはメチラーゼ活性がなくホストである脊椎動物のメチラーゼ活性はミトコンドリアには及ばない上に、それらのミトコンドリアゲノムにおいてTpG/CpAの頻度上昇が見られないことから、メチレーションが原因であるとは考えられていない。また30kb以下のゲノムサイズであるウイルスでも同様にCpG低下傾向が観測されており、その要因として、dinucleotide
stacking energies の低下で起こる複製の容易化による優位性、メチレーション、その他の進化的プロセス
などが考えられている。これらのヒトやウイルスのゲノムでは、アルギニンのコドン使用において CG N (four codon
complements)を避けるという選択圧がかかっていることから、CpG低下とコドンバイアスとの関係も指摘されている。 バクテリアのコンプリートゲノム19種について遺伝子コード領域・RNAコード領域・非コード領域に分けてCpG頻度を解析したところ、CpG
suppressionが起きている種においては、遺伝子コード領域・非コード領域ではCpGは顕著に
reducedであり、RNAコード領域のみ通常のCpG頻度を保持していた。 そこで遺伝子コード領域について更なる見解を得る為、M. genitalium
とM. pneumonia eの頻度傾向の相異に着目し、塩基置換パターンの分析によりCpGが具体的位置においてどのように変異しているのかを考察したところ、
3つのコドンポジションによって変異傾向、変異率に大きな違いがあることが判明した。 CpGの保存率はcodon positions
\{1,2\}で52.5%である一方、codon positions {2,3}では8.3\%、codon positions {3,4(1)}では6.9
%と、大きな開きがあった。その要因としては、アルギニン、セリン、プロリン、スレオニン、アラニンの各アミノ酸においてCpGを含むコドンが避けてられているというバイアスの反映が挙げられる。 このような偏りのある一方で、遺伝子コード領域・非コード領域において同程度のCpG低下が見られる点から、CpGを減少させる圧力はコード・非コード領域問わずゲノム全体にかかり、RNAコード領域に限ってはその影響をほぼ受けることなく、遺伝子コード領域においてはこの圧力によりCpGを用いたコドンを避けるという選択が生まれたのではないかということが推測されるに至った。
実績 学会ポスター発表:
- "バクテリアゲノムにおけるCpGジヌクレオチドの頻度低下に関する領域別・コドンポジション別解析" 後藤マミ, 鷲尾尊規, 冨田 勝;
日本分子生物学会年会、1999年12月、福岡
掲載論文:
- 後藤マミ, 1999. "バクテリアゲノムにおけるCpGジヌクレオチドの頻度低下に関する解析" 生命と情報
5:130-138.
- 大腸菌組換え促進配列(χ配列)プロジェクト
- 大腸菌χ配列(5'GCTGGTGG
3')の75%はリーディング鎖に存在し、この偏りはDNA複製時に関連したχ配列の生物学的役割だと考えられてきた。しかし、コンピュータによる網羅的解析により、他のG-richオリゴ配列も同様にリーディング鎖に偏りを示すことがわかった。このχの方向性の偏りは、複製開始点と複製終結点でその方向性が逆転する現象が見られ、これらはGCskewのシフトポイントとほぼ同位置である。また枯草菌でおなじような解析を行った結果、枯草菌のχ配列も他のG-richオリゴ配列と同じような傾向を示し、GC
skewのシフトポイントも同位置である。一方GCskewのシフトポイントがはっきりしないインフルエンザ菌では、χ配列、G-richオリゴ配列と共に明確なシフトポイントが見られない。これらの結果はχの方向性はゲノム中のグアニンのストランドバイアス(GCskew)に影響されたためであり、χの複製に関連した役割のために、進化の過程でこのようなχの方向性を作り出したわけではないことが示唆される。
実績 学会ポスター発表:
- "Relationship Between Chi sequences and Replication." Uno R, Nakayama Y,
Arakawa K, Tomita M; 3R,1999年11月 神戸
- "大腸菌χ配列の遺伝子分布に関するコンピューター解析" 鵜野レイナ、中山洋一、四津谷健志、最上丈仁、荒川和晴、森浩禎、冨田勝;
日本分子生物学学会、1999年12月、福岡
- "Computational Analysis of Chi sequences" Uno R, Nakayama Y, Mogami T,
Yotsutani K, Arakawa K, Tomita M; GIW99,1999年12月、東京
掲載論文:
- 鵜野レイナ, 1999."大腸菌χ配列における特徴と他種ゲノムとの比較解析" 生命と情報 5:54-66.
- バクテリアゲノムにおけるコドン使用の偏りと翻訳機構との関係
- 1980年代に、
E.coliにおいて、同義語コドンの使用が細胞内のtRNA分子量に依存して大きく偏り、その偏りが発現量の高い遺伝子において特に顕著であることが分かった。Sharp,
P. M.らは、各遺伝子のコドン使用の偏りを数値化する手段として、ribosomal protein
遺伝子など、一般的に発現量が高いと言われている遺伝子のコドン頻度を基準とする'CAI (Codon Adaptation
Index)'という指標を提唱した。そして、発現量の高い遺伝子と低い遺伝子においてコドン使用の偏りの違いについて、顕著な相違が見られることが分かり、コドン使用のパターンが、翻訳効率に関わっているということが示唆された。
一般的に、遺伝子発現を制御するポイントとして、大きく転写段階での制御と翻訳段階での制御が挙げられ、転写量が最終的なタンパク質存在量に最も大きく影響するということが示されている。そのため、翻訳段階での制御がタンパク質存在量にどの程度影響を与えるのかということについては議論の余地が残されている。現在までに、翻訳段階においてタンパク質の生産量に影響を与える要因としてはコドン使用の偏りの他に明らかにされていない。今回、翻訳段階における遺伝子発現量の制御機構を明らかにすることを目的に、コドン使用の偏りと、開始コドンの選択、SD配列の保存性の関係について解析を行った。
その結果、CAI値が高い遺伝子の方が開始コドンとしてAUGを使う頻度が高く、 SD配列もより保存されているということが分かった。
今回の解析結果から、コドンの偏りと同様に開始コドンの選択、SD配列の保存度 もまた、遺伝子発現量の制御に関わっているのではないかということが示唆さ
れた。
実績 学会ポスター発表:
- "Fop values, Start codons, SD sequence conservation, and their
correlation to gene expression level"Sakai H., Imamura C., Ohno H., Washio
T., and Tomita M.;Third Annual Conference On Computational
Genomics,1999年11月,Baltimore
- "Fop値、開始コドン、SD配列保存性と遺伝子発現量との関係"坂井寛章、今村千秋、大野浩、鷲尾尊規、冨田勝;第22回日本分子生物学会年会、1999年12月、福岡
- "Fop values, Start codons, SD sequence conservation, and their
correlation to gene expression level"Sakai H., Imamura C., Ohno H., Washio
T., and Tomita M.;GIW'99,1999年12月、東京
- オーバーラッピング・ジーンプロジェクト
- バクテリアゲノムでは、2つの隣り合う遺伝子がコード領域を一部共有するケースがしばしば見られる。このオーバー
ラッピング・ジーンの、進化における意義や、発現機構の 法則等は分かっていない。この解析では、ゲノム進化とオ
ーバーラッピング・ジーンの関連を明らかにすることを目 指し、以下の観点からバクテリアを近縁な2種で比較した。
- E. coliとH. influenzaeゲノムにおける網羅的比較・解析
- ゲノムの変動とオーバーラッピング・ジーンとの関連
E. coli と H. influenzae のオーバーラッピング・ジーンにつ いて個々の遺伝子の塩基配列を比較することにより、オーバ
ーラッピング・ジーン生成過程ののモデルを考察した。また その相対的位置を明らかにするすることにより、ゲノム全体
の変化との比較が可能となった。これによって得られた結果 から、比較した2種に共通するオーバーラッピングジーンが
ゲノム全体の変動を反映しているということが示唆された。
実績 学会ポスター発表:
- "COMPARATIVE STUDY OF OVERLAPPING GENES IN BACTERIAL GENOMES" Fukuda Y,
Washio T, Nakayama Y, Tomita M; 3R synposium、1999年11月、神戸
掲載論文:
- Fukuda Y, Washio T, Tomita M, "Comparative study of overlapping genes in
the genomes of Mycoplasma genitalium and Mycoplasma pneumoniae." Nucleic
Acids Research 1999;27(8):1847-1853.
- 福田陽子, 1999. "Mycoplasmaゲノムにおけるオーバーラッピング・ジーンの比較・解析”生命と情報 5:115-128.
- おわりに
- 現在以下の3つの論文を国際学術誌に投稿中もしくは投稿準備中である。
- Goto M., Washio T., Tomita M.;"On low frequency of CpG dinucleotides in
bacterial genomes"
- Uno R., Nakayama Y., Arakawa K., Tomita M.; "The orientation bias of Chi
sequences is a general tendency of G-rich oligomers"
さらに以下の国際学会での発表も控えている。
- RECOMB2000
April8-11,2000,Tokyo Big Sight
学部生の育成と共に数多くの結果が既に出てきており、今後数年のうちに更なる成果が期待される。国内外で冨田研究室の「遺伝子情報解析プロジェクト」は大きな割合を担いつつあり、今後も積極的に研究活動を続けていきたいと考えている。
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