2000年度森泰吉郎記念研究振興基金報告書

研究課題名:No.11 音楽による自然言語と人工言語の交流
      国際共同研究・フィールドワーク研究

代表者氏名:岩竹 徹
報告者氏名:中島 洋子
所属:サイバーサウンド・プロジェクト

“本研究の目的”

 これまで、本プロジェクトに於いて、コンピュータを中心とするテクノロジーを用いた音楽表現スタイルが沢山研究されてきている。今回は、これらの研究を総括し、新世紀への新しい表現方法を模索するためのものであった。
 なお、今回は先進者と後進者との交流も大きな目的の一つであった。その為、コンサートだけではなく、インスタレーション作品の制作者との対話やワークショップの講師との対話の時間を十分に考慮した。

“全イヴェントの日程”

<コンサート日程>
2000年10月30日 代官山ヒルサイドテラス・アネックスA
2000年11月3日  慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスθ館


<インスタレーション展示日程>
2000年10月31日〜11月4日 慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス内


<ワークショップ>
2000年11月4日 慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスθ館


“コンサートについて”

 これまで、音楽などの音による表現はサイバーサウンド・プロジェクトの活動に於いて常に重要な位置を占めてきた。その為、私達の研究成果発表や積極的な交流を図る場として、コンサートは欠くことの出来ない要素である。なぜならば、音楽表現を提示する場所として、コンサートという形式は最も基本的で、しかも重要なものであると考えるからである。
 また、今回はコンサートゲストとしてSENSORBAND、ワークショップの講師としてAtau Tanaka氏とMark Menzies氏を迎え、作曲家を目指す私達にそれぞれの視点からアドヴァイスを頂いた。


2000年度コンサートレポート

“The bridge between natural language and artificial language”

開催日:2000年10月30日18:00開演
会場:代官山ヒルサイドテラス アネックスA

作品出品者及びパフォーマー
1部
中島 洋子(慶應義塾大学大学院)
Tar(常盤 拓司、三谷 憲一)(共に慶應義塾大学大学院)
Miyuki Ito(コロンビア大学大学院)
Christopher Bailly (コロンビア大学大学院)
Nathaniel Tull Phillips(慶應義塾大学客員教授)

2部
Sensorband(Zbigniew Karkowski、Atau Tanaka、Edwin van der Heide)(作曲家・パフォーマー)
Manuel Rocha Iturbide(作曲家)
Jane Dowe、Atau、Edwinによるコラボレーション(作曲家)

 本コンサートは、慶應義塾大学大学院サイバーサウンド・プロジェクトの活動の1つとして行われた。学外で行うコンサートも他大学の学生との合同コンサートも初めての試みであった。

 コンサートでは、本プロジェクトが電子音楽作品の制作に力を入れていることの影響により、コンピュータを用いた作品が出品された。上演された作品は、ミュージック・コンクレートの作品が3、ライヴ・エレクトロニック・ミュージックの作品が4、テープ音楽の作品が1、であった。

 このコンサートへの出品者は、本学の学生作品は2、コロンビア大学の学生作品が2、と学生の出品は多くなかったが、各学生の音楽に対する考え方とコンサートに対するアプローチ方法が異なり、「感覚」の新しい切り口を発見することが出来たと共に、“電子音楽”という言葉の捉え方や英語(electronic music)との意味の「ずれ」を知ることが出来た。これらのことを通して、異文化にふれることが出来たことも事実である。
 また、特に2部のコンサートでは、聴衆に対して、質の良い作品を楽しんで頂くと共に、テープ作品とライブ作品の特徴や準備の大切さなどを示すことが出来た。何人かの先進者の演奏を聴く事が出来たことは、これからの作品制作活動に、影響を及ぼすと考えられる。特に、学生にとっては構造の作り方、音響システムの構築方法、演奏中に起きたトラブルへの対処法など、学ぶものが多かった。
 しかし、それは本プロジェクトに所属する学生は必ずしも音楽の特別な教育を受けている学生ばかりではないことを聴衆に提示することになった。構造があいまいであったり、ライヴ作品で1箇所間違うとそれ以降の演奏を放棄したり、音のバランスが適切でないなどの点が、特別な教育を受けていない学生の作品に目立った。だが、逆にそれによって、プロジェクトのこれからの教育方針を示す結果になった。
 今回のコンサートでは、学生の作品が半数を占めたにもかかわらず、来客数は予想していた50名を越えていた。さらに、その多くは関係者と予想していたが、以外にも関係者以外の方が多かったことに、驚いている。これは、本コンサートが、注目されていたことを示す事と捉えることが出来る。



“インスタレーション作品について”

 今回は、サウンド・インスタレーション作品が3作品展示された。 これらの作品制作と展示は、慶應義塾大学環境情報学部安村教授及び、大学院政策・メディア研究科マルチモーダルインタラクション・プロジェクトの協賛により、行われた。

作品名及び作品制作者
Sky Fish:竹之内 博史(慶應義塾大学大学院マリチモーダルインタラクション・プロジェクト)
嘆きの壁:塚田 浩二(慶應義塾大学大学院マルチモーダルインタラクション・プロジェクト)
Auditorelation:藤村 憲之、宇井 のどか(共に慶應義塾大学SFC研究所訪問研究員)

“ワークショップについて”

 Mark Menzies氏とAtau Tanaka氏が、各々の活動に対する、音楽美学や技術部分についてお話された。