〜 2000年度 森泰吉郎記念研究振興基金 「国際共同研究・フィールドワーク研究費」 報告書 〜

概念階層と概念記述の相互学習による漸増学習について


申請区分国際共同研究・フィールドワーク研究費
研究代表者
所属 政策・メディア研究科
職名教授
氏名古川康一
研究分野人工知能
研究課題 概念階層と概念記述の相互学習による漸増学習について
研究組織
氏名古川康一
所属 政策・メディア研究科,教授
研究分担総括
氏名Stephen Muggleton
所属 Computer Science Dapartment,
The University of York, Professor
研究分担 帰納論理プログラミング,システムの設計
氏名Mike Bain
所属 The School of Computer Science & Engineering,
The University of South Wales, Research Fellow
研究分担システムの技能獲得への応用
氏名尾崎知伸
所属政策・メディア研究科,博士課程
研究分担システムの設計,実装,応用
氏名植野研
所属政策・メディア研究科,博士課程
研究分担システムの技能獲得への応用
氏名小林郁夫
所属政策・メディア研究科,博士課程
研究分担システムの概念獲得への応用


研究の目的

本研究では,機械学習を継続的,自己拡張的にすることを目的としている. そのために,個々の概念の他に,概念階層を同時に学習し,それを後の学習の 制御情報とすることを目指す.そして,その結果を概念学習, モータースキル学習に役立てる方法を探る. この仕組みによって,学習器自身の学習(メタ学習) を実現することを目的とする.

研究成果

本研究では,学習を加速するために,個々の概念の他に,概念階層知識を 同時に学習する方式を検討した.

そこでの主要な問題は,新たに得られた概念が既存の概念との間に, 上位あるいは下位の階層関係を有するか否かの判定である. 上位の階層関係を明らかにするためには,たとえば,犬も猫もウサギも すべて哺乳類であるので,犬の概念学習中にそれを明らかにすることは できない.上位概念の獲得には,将来さらに多くの事例が与えられるの を待つことによって,初めて可能になる.一方,下位概念への位置づけに ついては,われわれは,その判定を両概念の類似性によって行う方式を 開発した.類似性の判定基準は各ドメインによって異なる.言語獲得の ドメインでは,言葉の定義を構成する属性の集合を考え,それらの間に 成り立つ階層関係を利用して,付随する概念の階層関係を定める, という方法である.その方式によるシステムのプロトタイプを実装し, Machine Intelligence 17の国際ワークショップで発表した.

今学習しようとしている概念の大まかな分類が分かると,ここでの 概念階層知識を用いて,考慮すべき背景知識を絞り込み,学習のための 探索空間をあらかじめ小さくすることが可能となる.この機構は, 関連性のある背景知識のみに焦点を当てる効果をもたらす.また,この機構は, 学習システムのメタ知識の獲得機構とも考えられる.学習システムは, 通常は設計段階の機能をそのまま持たせるものがほとんどであるが, 学習システム自身が宣言的な知識を参照できるようにし,また,その宣言的な 知識を学習によって膨らませていくことができれば,学習システム自身が その機能を拡張していくことに相当する.概念階層知識は,そのような メタ知識と捉えることが可能である.

また研究成果の詳細及び 関連研究調査に関しては 添付の資料を参照のこと. 海外活動に関しては,添付の海外活動報告 (尾崎植野 )を,それぞれ参照のこと.

今後の課題

ある程度の知識と経験を得た学習者は,新たな刺激に対して解釈の可能性を いくつかに絞り込む能力を持つようになると考えられる.このとき,その疑問を 教師に対して行なうことを可能にすることを考えることができる. 学習者にこのような能動性を与えることによって,学習の効率は向上し, 結果への信頼性はかなり高い水準に達するものと思われる.

ここで提案された学習機能は,成長を続ける人間の学習機能を模擬している. そのため,幼児の言語獲得や,楽器演奏,スポーツなどでの技能獲得の モデル化に大きく貢献するものと期待される.また,機械学習システムと してみても,ここで提案する機能は,学習システムの機能自身を学習する 仕組みを有するので,各種の応用に対して,それらの効率化に多大に貢献する ものと期待できる.

発表論文